4.たいせつ、だよ

「本当にオレのこと、好き?」


 不安に揺れる彼の瞳。


 分からない。

 なんで?

 なんでそんなこと、思うの?


「好きだって、言ってよ」


 言わなきゃわからないような、そんな軽い気持ちじゃ、ないんだけどな?


「あたしが信じられないなら、もういい」


 カフェでのデート中だったけど。

 席を立ったあたしの手を、彼が掴む。


「違うっ、そうじゃない!」


 振り向いた先の彼の顔は、びっくりするくらいな程に必死の形相。


「そうじゃなくて、ただ…不安なんだ」


 なんで不安になるんだろう?

 …あたしのせい?

 伝わりづらいのかな。

 あたしの気持ち。


 あたしは彼の頭を抱きしめて、耳元で囁いた。


「ありがと、たいせつな人」


 これで、伝わるよね?

 だからあたしは、言わないよ?

 好き、なんて言葉は。

 でもね。

 あなたはとても。


 たいせつ、だよ。

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