第22話 二人の解脱

 「ヤムリ?! チグル?!」


 『ああ、久しぶりだな、ヤクル。』


 『お久しぶりです、ヤクルさん。』



 え?

 どこにいるの?

 今日本で、岡山で、屋根の上で……。


 ――マジでどこにいるの?


 『我らはな、今は解脱をして輪廻の輪から外れたのだ。涅槃に上がるか? とも言われたがな。お前の手伝いをしながらナディ様の願いを叶えるお手伝いを願い出たのだ。』


 『私もですね。まさか解脱できるとは思ってみませんでしたが……。これもナディ様の思し召しでしょう。ヤクルさん、これからよろしくお願いします。』


 ――解脱?


 じゃあ身体は肉体はないの?


 周りをキョロキョロしてみると、小さい紫色とオレンジ色の光の球が浮いていた。


 「これ? ヤムリとチグル?」


 『そうだ。かつての実態に変えることもできるがな。まぁ日本ではお前しか見えないのだ。この状態でもいいだろう。』


 「いや、マジでまだ混乱してるんだけど……。でも心強いよ、二人がいてくれるのは。これからずーっと一緒だろ?」


 『ふふふ。本当にヤクルさんは頭が柔らかいですね。こんな状態を受け入れてくれる方はそんなにいないですよ?』


 『うむ。しかしヤクルよ。降りなくていいのか? 流石に屋根の上で話し続けるのはどうかと思うのだが……。』


 ヤムリの言葉にハッとした。


 もう夜中とはいえこれはダメだな。


 足にオーラを纏わせてピョンと降りる。

 コッソリ家に入りこれまたコソコソ部屋に。


 ベッドに座りふうっと一息つくと二つの球に語りかける。


 「じゃあ、教えてもらってもいい? 今の状況。」


 『そうだな、何から話そうか。まずお前が転生したことはナディ様を通して知っていた。交信が来てな。』


 『ちょうど十年前でしたから転生して産まれた直後でしょうね。転生の下準備をしたという事でナディ様にお礼を言われました。』


 頭の中に直接響く二人の声。


 ああ、懐かしい。

 厳しくも相手を安心させるヤムリの声。

 優しくつい顔が綻ぶチグルの声。


 二十年間ずっと聴いていた声。


 「そうか……。やっぱり僕はナディ様に転生してもらったんだね。記憶を残しての転生だからビックリしたんだよ。でもなんで転生させてくれたんだろ? 僕に何かやらせたいのかな?」


 『そうだな。そのあたりも聞いてきた。我らが解脱したあたりから話そうか。』

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