第17話 やらかし三歳児

 「はじめまして! 俊介くん! 僕は後藤と言います。後藤コーチっていってね! ちなみにウチでは下の名前で呼ぶんだけどいいかな? 嫌じゃないかな?」


 後藤コーチか。

 確か元プロだったコーチだ。

 日本ランキング一桁までいったかいかなかったか。

 

 岡山っていう田舎なのにこんなコーチに教えてもらえるとは!


 「はい! 後藤コーチ! 俊介でお願いします! 君もいりません! 厳しくお願いします!」


 「あらあら、俊ちゃん。張り切っちゃって……。」


 「……ハハハ……。凄く……子供っぽくないお子さんですね、黒木さん……。」


 「ええ、どちらに似たのかしら? 自分の子供ながら凄く子供っぽくないですよね……。」


 あるれぇ?!


 やっちゃったか?!


 でも仕方ないじゃん!

 中身還暦だもん!

 三歳児の喋り方できないよ!


 「いやいや、将来がすでに楽しみですよ! じゃあ、俊介! これからよろしくな! 厳しくいくぞ! っていっても今日は軽く運動神経を見る感じから始めようか。よし! 黒木さんはそちらでご覧になっててくださいね。俊介! あっちのテニスコートに移動するよ! そこで一緒に運動するお友達紹介するからね!」


 「はい! よろしくお願いします!」


 そしてコート内へ。

 そこには十人の小学生たちがいた。

 やはり三才とかいないよな。

 みんな僕からしたら大きいお兄ちゃん、お姉ちゃんだ。


 「みんな! 今日から育成コースに参加する黒木俊介だ! 俊介って呼んでいいみたいだからみんなも可愛がってやれよ!」


 「はい! コーチ! 俊介! 俺はたかしだ! よろしくな!」


 リーダー格のもう中学生くらいの男の子に紹介された。


 「はい! たかしさん! よろしくお願いします!」


 「うん、いい子みたいね。私はキョウコっていうの。よろしくね、俊介。」


 十才くらいかな?

 可愛らしい女の子がお姉さんぶって語りかけてくる。


 「はい! キョウコさん! よろしくお願いします!」


 その後もみんな口々に「よろしく。」とか「頑張れ。」とか名前もそれぞれ教えてくれたんだけど、全然覚えれない。


 まぁタカシさんとキョウコさんだけ覚えておこう。


 男子代表、女子代表みたいだから。


 ふふふ、取捨選択ってやつだよ……って違うか……。

 

 まぁそんなこんなで準備運動。

 ストレッチ中心の軽く汗をかくレベルの準備運動だ。

 

 そこからコートをランニング。


 そのあたりから周りの目が変わり始めた。


 「おい、あいつ三才って言ってなかった?」「言ってたよ、信じられない……。」「お前三才の時あんなに動けたか?」「まさか! 今でもギリギリ着いていけるくらいなのに。」


 あるれぇ?!


 またやっちゃったか?!


 ちょっと運動神経がいいくらいで過ごそうとしてたのに……。


 まあ、よし!

 流石にテニスボールはバコバコ打たないぞ!

 大学生レベルのスイングなんて誰もできないからな!





 って思ってたんだよぉ!

 本当に!!

 やらかすつもりなかったんだよ!!!



 でもさ!

 

 空振りなんて出来ないんだよお!!!


 「……」×みんな……。



 「……。あれ? なんか打てるや! デフェラーの試合しっかり観てたからかな?」


 「いやいやいや! そんなことあるかぁ!」


 後藤コーチ、お疲れ様です。


 

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