第11話 転生オーラ

 「……ちゃん。俊介ちゃん。初めまして。私があなたのママよ? 産まれてきてくれてありがとうね?」


 うん、間違いないね。

 まだ目は見えないけどこの暖かい優しい緑色のオーラは俺のママだ。


 うん、ママだな。


 六十を迎えようとしていたおっさんがママかぁ。


 いや、仕方ないよね?


 これが転生だもんね?


 優しいんだよ、本当に。

 僧侶たちに送られる時のオーラも暖かかったよ?

 でもこのオーラは本当に優しい。

 守ってくれてるような……。


 母の愛ってやつなのかな。


 で、俺は俊介ちゃんと。

 今世の俺は俊介ちゃんだと。


 なんかなぁ、ヤクルってなんとかして呼んでもらいたいなぁ。

 俺魂までヤクルだったもんなぁ。

 でも俊介かぁ。


 ヤクルの矢の字もないよな……。



 ってな感じでヤムリ、俺日本に転生したわ。

 記憶を引き継いだ状態でね。


 




 何日か過ごしてみるとまだ病院っていうのが分かる。

 そしてだんだん周りが見えてくると……。


 ママの緑色のオーラはそのままで、看護士さんたちのオーラは人それぞれ。

 男性のみるからに力持ちの人は薄い赤。


 女性でものすごく優しくママと俺に接してくれてる人は薄い緑色。


 めっちゃ賢そうなお医者様は……薄い青だね!


 これもほんの少しだけしか感じれないけどね。

 やっぱり個人の持つオーラ量は少ないんだな。

 ママが圧倒的に一番多いよ。


 うん、俺を除いてね?



 そうなんだよ、俺のオーラちょっとおかしいと思うんだけど。

 


 めちゃくちゃあるんだけど。



 白いのになんか濃い白なんだけど。


 

 この身体、すごくね?


 でも、認識できたまではいいんだけど、移動ってどうやるの?

 死ぬ前は認識さえできなかったからやり方教えてもらってないんだけども……。


 全身にね、感じるよ? オーラ。

 でもさ、集めることはもちろん、ピクリとも動かないんだけど……。


 なんならちょっとしんどいんだよな、この修行。

 全身に力を入れてさ、っていうか赤ちゃんってほんと不自由なのね。

 力入れたら泣いちゃうの。


 オギャーって。


 まぁ、今もね、泣いちゃった。


 「あらあら、俊ちゃん、どうしたの? さっきオッパイは飲んだしねぇ。おしめも汚れてないし……。怖かったのかな? 大丈夫よ? ママがずーっと一緒だからね? 守ってあげるからね?」


 そういうとママの胸の辺りにあった緑色のオーラが、トロッとした感じで動き出して手のひらに集まった。


 「いい子、いい子。怖くない、怖くない。ね? 大丈夫でしょ? ゆっくりおやすみ、可愛い俊ちゃん……。」


 





 ちょっと!


 この人、オーラ移動できちゃってるんですけど!!!


 俺全然できないのに!


 二十年チベットに暮らした俺ができないのに……。


 しかし、なんかやり方がわかったような。

 オーラってふんわりした感じで捉えてたけど、これ液体っぽくない?

 少し粘性のある。


 って思ってたらめちゃくちゃ眠くなったぞ?

 ママの暖かい手で撫で撫でされたら……。


 もう無理……おや……す……み……

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