第22話
二週間後、母と祖母のお墓参りの日が来た。せっかくの遠出なので、今日はお墓参りと叔父宅へ訪問して、明日明後日は観光の予定だ。
久しぶりに叔父に会うのは緊張するけれど、雅也さんとの初めての旅行に胸が高鳴った。
「二人とも楽しんできてね。叔父様に宜しくお伝えしてね。」
「はい、行ってきます!」
笑顔の悦子さんに見送られ、私達は空港へ向かった。
◇◇◇
「運転、上手くなったな。」
運転席に座る私を見て、雅也さんが呟いた。空港までは、私の車で向かう。運転にはまだまだ苦手意識があるけれど、練習の成果もあり、色々な場所に行けるようになった。
「雅也さんとの特訓のおかげですね。」
「俺は助手席に乗ってただけだけどな。」
「それでも一人では出来なかったから。」
ふと、付き合う前から雅也さんの軽トラにしょっちゅう乗っていたことを思い出す。あの時間が無ければ、臆病な私のことだ、雅也さんと仲良くなれてなかっただろう。
「私、運転が苦手で良かったです。苦手だったから、雅也さんと付き合えたようなものですからね。」
言うつもりは無かったのに、思ったことが口からぽろりと出ていた。すぐに恥ずかしくなるが車内に逃げ場は無い。
「ようやく分かった。」
「…何でしょうか?」
「あの頃、助手席から瑞樹の視線を痛い程感じていて、なぜこんなに見るのか不思議だった。こんなおじさん見ても楽しくないだろうと思っていた。」
「う…」
「だけど、好きな人の表情は、ずっと見たくなるな。」
あの頃、雅也さんの色んな表情が見たくて、見落としたくなくて、ずっと見つめていたっけ。今、この時は、どんな顔しているのか気になって仕方なかった。
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