第23話
無事空港にたどり着き、飛行機の後は電車を乗り継いで叔父宅へ向かう。十二年ぶりの地元に思った以上に自分が高揚しているのが分かる。一方、雅也さんはほとんど都内に来たことはないということで、空港や電車でキョロキョロとしているのが、何だか可愛くて、頬が綻んでしまう。
「移動ばかりで疲れてませんか?」
「いや、見慣れないものばかりでいい年してお上りさん状態だ。楽しいよ。」
緩んだ表情を見られてほっとする。電車の窓から見える景色の案内に私も熱が入る。ふと、雅也さんの顔が近づくのが見え、そして。
「・・・瑞樹と一緒だから、より楽しいな。」
耳元で囁かれた甘ったるい言葉に、私の顔の熱が引かずに、案内の言葉は止まってしまった。
◇◇◇
「ふぅ、緊張してきました。雅也さんは大丈夫ですか?」
「・・・柄にもなく緊張してる。」
叔父宅の前で、二人して緊張感が高まる。雅也さんのお母さん、悦子さんがとんでもなくフレンドリーで優しいから私は仲良くなれているけれど、普通、婚約相手の家族や親戚に会うときって緊張してしまうものだ。私の方の親戚なのだから、私がしっかりしないと。
「瑞樹、気負うなよ。緊張はしているが、大丈夫だ。」
目を細めて、ぎこちなくだが笑顔を見せる雅也さんには全てバレているみたいだ。繋いだ手に力を込めて、深呼吸をしてからチャイムを押した。
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