第21話



 一週間たっぷり悩んだ後。


「取り敢えず、叔父に相談してみます。」


 一人で悩み抜いて気付いたこと。私にはあまりにも父の情報がない。稀に日本に帰ってきて、会えてもお土産をもらう位で話は弾まなかった。叔父に相談するのも気が進まないけれど、母と祖母のお墓参りに行くのなら挨拶はしに行こうと思っていたのだ。日程調整の電話のついでに、父のことも相談してみようと思い立った。


「こんなに時間掛けてすみません。」


「いや、俺こそ悩ませて悪かった。」


「もし、悪い結果だったら、その、・・・慰めて、ほしいです。」


「ああ」


 優しく笑って、宝物みたいに大切に抱き締めてくれる。この人がいてくれるから、一歩進んでみようと思えた。



◇◇◇


 叔父に、結婚報告のために、母と祖母の墓参りに行くので挨拶に行かせてほしいと連絡すると思いの外、喜んでくれた。楽しみにしてくれている様子にほっと息をつき、ついでに仕事は退職したことや体調のことを報告する。



「大変だったなぁ、瑞樹ちゃん。ああ、仕事辞めたんならあいつにも伝えとかないと。」


「あいつって・・・?」


「兄貴、瑞樹ちゃんのお父さんだよ。」


 叔父によると、叔父から私の就職先を聞いた父は、職場のホームページをよくチェックしていたという。そこには、社員が作成したホームページや広告などが紹介されており、私の作成していたものもあるだろうと見ていたらしい。


「あいつ、本当に馬鹿だよ。そんなことしないで、瑞樹ちゃんに会えばいいって、連絡すればいいって、昔から言ってるのに。合わせる顔が無いとか言ってさ。ごめんな、瑞樹ちゃん。叔父さんがちゃんと説得できたらいいんだけれど。」


「・・・あの、叔父さんにお願いがあるんですけど・・・。」


◇◇◇



「叔父さんが良い反応でよかったな。」


「今までちゃんと親戚付き合いしていなかったのが悔やまれます・・・。」


「瑞樹は、若いうちから一人で色々なことを頑張ってきたんだ。そこまで手が回らなくても仕方ない。」


 一緒に暮らしはじめてから、何だか雅也さんがどんどん甘くなっているような気がする。いいのかな?甘やかされていて。どんどん駄目人間になりそうで怖くもある。


「今からは頑張ります・・・。」


「一緒にやっていこう。それにお父さんが帰国される日が分かったら、いつだって一緒に行くからな。」


 叔父には、父にも結婚のことを伝えてほしいこと、そして次の帰国日に出来れば会いたいことを伝えてもらえないかお願いし、快く了承してくれた。電話を切ってから、父の帰国日がもし農繁期だったらどうしよう、と不安になり、流石にそのタイミングなら一人で行くしかないと腹を括っていたのに何故だが雅也さんに気付かれていた。


「あまり、甘やかさないで下さい・・・。」


「俺がそうしたいんだよ。」


 肩口に顔を埋めると、暖かい声色でそう囁かれ、大事な人がいる喜びをひしひしと感じた。

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