第9話




 それからも、私たちの関係はあまり変わりはなかった。変わったことと言えば、手芸教室の後にドライブに行くくらい。今日は、近くのコスモス畑を見てきた。車内のおしゃべりもとっても楽しい。けれど。



(雅也さんは、私のこと好き、なんだよね?勘違いじゃない、って言ってくれたし)



 毛布にくるまりながら、あの時の雅也さんの横顔を思いだし、胸がぎゅっとなる。



(だけど、好き、とか、付き合おう、とか確認はしていないんだよね。付き合ってるって思ってて良いのかな。大丈夫なのかな。)



 私に彼氏がいたのなんて、社畜になる前だから、12年以上前だ。その頃は学生だったし「好きです」「付き合おう」と確認作業があったから分かりやすかった。




「大人の恋愛って、難しすぎる・・・」


 12年間社畜しかしていなかったツケが、こんな所で回ってくるとは・・・。だけど、頑張りたい。うーん、うーん、と唸りながら、ベッドの中で悩み続けた。








「もしもし、今大丈夫ですか?」


「ああ」


 電話越しの声にドキドキしてしまい、うまく呼吸ができない。



「あの、次の手芸教室の時なんですけど、もし、雅也さんが都合が良かったら、少し早めに来れないですか?」


「ん?」


 優しく聞き返す声に、頬が熱くなる。


「わ、私の家で、お、お茶とか、飲んでから行きませんか?」


 言葉が出てこず、声が震えてしまう。雅也さんからの返答がなく、余計に焦ってしまう。



「都合が、良いときで良いです、10分でもいいので・・・駄目ですかね」






「次の時で良い、いつもより30分早く行く」



「は、はい!待ってます!」


 私は、雅也さんの電話口の顔が気になって仕方なかった。

 

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