第18話 魔王と不死鳥
勇者パーティ全員集合となったノワール達の目の前に魔王軍幹部であるフェニックスがやってくる。
「愚かな人間よ、聖なる我輩の炎により焼失させてやろう」
「フェニックス、死ぬ前に一つだけ質問してもいいか? 」
「よかろう、なんでも聞くが良い」
「お前って喰ったら美味いのか? 」
「なにぃ? 」
「いや、勇者パーティ結成記念にフェニックスの肉でバーベキューしようと思ったのでな。お前が死ぬ前に美味いかどうか確認しようと思って」
「な、舐めやがって! 我輩を誰だと思っている『常勝無敗』の称号を得ているフェニックス様だぞ! 」
フェニックスは鳥特有のけたたましい声をあげて威嚇する。それと同時に放たれた火の粉が近くの木々に付着すると瞬く間に巨大な火柱となる。
「常勝無敗か、確かにその通りだ、お前はジャンケンは凄まじく強かったしな、俺も一度も勝てなかったし。肝心の戦闘能力はイマイチだったが」
「おちょくりやがってええええっ! 魔王軍精鋭の飛行部隊よ、勇者どもを駆逐しろ! 」
「「「キイイイイイイイッ!! 」」」
まずはアークデーモンの軍団が槍を持ってノワール達を取り囲む。アークデーモンは強力な魔力と身体能力を持ち、単体でもA級魔族として上位冒険者パーティが協力しなければ倒せない。しかし、勇者キルライトは不敵な笑みを浮かべていた。
「アークデーモン程度でボク達勇者パーティに勝てるとでも思ってるのかなー? それじゃあボクの実力見せてあげるよ。いけっノワ兄、いあいぎりで全員真っ二つにしろ! 」
「R18G版のポケモンみたいじゃのう」
「こっちは命がかかってるんだからしょうがないじゃん! さあサクッと殺しちゃって! 」
「この程度の雑魚では興奮しない。お前達でなんとかしてくれ」
「命令を聞かないなんて、バッチの数が足りなかったの!? 」
どうやらアークデーモンではノワールの戦闘欲は満たせないらしい。すると今度は第二の戦力であるアビスが提案をする。
「それならこうしまょう。まず私がアタッカーでアークデーモンを攻撃、ヤミが魔法で援護、キルライトは餌役の生贄、というのはどうでしょうか? 」
「どうでしょうか……、じゃあないよね!? そんなことしたらボクどうなるか分かってるよね!? 」
「死ね♡ 」
「疑問系に命令系で返してきた!? ボクに死んで欲しい理由があるの? 」
「そうですねえ、特に死んで欲しい理由はありませんけど、生きて欲しい理由もないんですよねえ」
「じゃあほっといてくれる!? あっ、でもそれじゃあボク死んじゃうのか……」
(勇者がここで死んでくれれば人類滅亡に近づきますからね。キルライトには悪いですけど、ここでいなくなってもらいます)
アビスはキルライトの胸ぐらを掴んでアークデーモン達に見せつける。
「ほらほらあ、これが勇者ですよ。全員応募サービスで勇者殺害の権利をプレゼントします」
「「「キイイイイイイイ!! 」」」
「やだやだやだあ! ノワ兄が無理なら、ヤミちゃん助けて! 」
キルライトが助けを求めるとヤミは大きく欠伸をして答える。
「…………ごめん寝てた」
「絶対起きてるやつじゃんそれ、人によっては1週間くらい寝てるやつ! 」
「残念でしたねえ、こうして勇者は不慮の事故によって死んでしまうわけです」
「これは殺害だよ!? それにこの場にはノワ兄もヤミちゃんもいるから、もしボクを殺したら二人の証言でアビ姉だって裁判で死刑になっちゃうよ! 」
「狂人に立証能力が認められるとでも? 」
「たしかになあ……、無理だよねえ……」
ノワールやヤミは普通の人から見ると、ちょっとだけ狂人なので裁判で証言してもまともに取り合ってもらえないだろう。
キルライトは最後の抵抗とばかり暴れるもののアビスの腕力に敵うはずがない。このままではアークデーモンの攻撃で彼女は死んでしまうだろう。
「離してよアビ姉! マジで死んじゃうよおおっ!? 」
「か弱い抵抗ですねえ、いくら暴れたところで私には勝てないんですから! 」
「うおおおおおっ!! 二人とも喧嘩とか楽しそうなことしてるではないか! 俺も混ぜてくれよおおおおっ!! 」
ノワール、参戦!!
「ノワールのクソがっ! 今いいところなのに邪魔しないでくださいよ! 」
「口ではそう言いつつも身体は正直だな、期待しすぎて口から涎がダラダラと垂れてるぜ? 」
「垂らしているのはノワールでしょうが! こうなったら先に貴方から殺してあげますよ! 」
アビスはキルライトをほっぽり出してノワールと再び激しいバトルを繰り広げ始める。
「「「キイイイイイイイ!! 」」」
喧嘩している今がチャンスだ、二人ともまとめて潰そうとアークデーモン達はノワールとアビスに襲いかかる。
「「「ギャアアアアアアッッ!? 」」」
ノワールとアビスの戦いに巻き込まれたアークデーモン部隊は次々にひき肉となり、勇者パーティ祝勝会用のお肉としてそこかしこに散らばる。
アークデーモン部隊、全滅!!
「あの二人はまずい! 先にあの眼帯チビと勇者から倒すのだ! 」
「グオオオオオオッ! (了解! )」
今度は無数の飛龍がヤミとキルライトを取り囲む。飛龍はアークデーモンもよりも強くS級ランクとして認定されている、これは街一つが協力して討伐に乗り出すレベルだ。
「やれやれ、ワラワラと取り囲んでレイプものの撮影現場かのう。ここは我がなんとかするからキル嬢は先に行くのじゃ! 」
「この四面楚歌の状態でどこに行くのさ? 」
「地獄」
「そこはせめて天国にしてよ!? 」
「グオオオオッ? (どうやら相当なアホのようだな、これは楽ちんかもなあ? ) 」
飛龍達は大きく息を吸い込んで炎のブレスを吐く準備をする。飛龍のブレスは鋼鉄すらドロドロに溶けたアイスみたいにしてしまうのだ。
「あわわわわわっ、ヤミちゃんもうダメだよ。死ぬ時は一緒に死のう、道連れだよ! 」
「我に向かって攻撃するとは、こやつらも随分と生意気になったのじゃな」
慌てながら辞世の句を詠むキルライトとは対照的にヤミは冷たい眼差しで飛龍達を見つつ、小さく口を開けた。
「$}~*+¥]%~€$*}|\_○♨︎」
「グオオオオッ!? (こ、このお言葉は……)」
ヤミの言葉を聞いた瞬間、飛龍達の動きがピクリと止まり、畏れを抱くように瞳を震わせながら彼女のことを見る。
「ヤミちゃん、『$』とか『¥』とか聞きなれない言葉があるのはいったい? 」
「企業秘密じゃ、それよりみてみい」
飛龍達は猫から逃げるネズミのように逃げ去っていく、それをフェニックスは止めようとするが効果がない。
「お前はどうした、あんな小娘相手に怯える必要はないだろう!? 」
「グオオオオッ! (ちょっと妊娠したので産婦人科に行ってきます。バイト代は口座に振り込んでおいてください) 」
「お前達は男だろうが!? 」
「最近は男でも妊娠する時代なんデス、LGBTというやつデス」
「お前達は普通に喋れたのなら最初からそうしろよ……」
こうして飛龍達は仮病を使って家に帰って行ってしまった。
「我にかかればこんなの朝飯前の目覚ましオナニーじゃ」
「汚い言葉をおやつ感覚で使わないで欲しいけど、ヤミちゃんのおかげでボクが飛龍を倒す手間が省けたから助かったよ」
「0を何かで割ることはできないがのう」
「気にしない気にしない、ボクが戦ってたら一瞬で終わったんだけどヤミちゃんに出番をあげたのさ。ボクって優しい〜! 」
キルライトがルンルン気分で鼻歌を歌うとそこに美しい鳥人がやって来る。
「妾はハーピィクイーン、勇者を殺しにきましたわ」
「…………え? 」
【ハーピィクイーン】:Sランク魔族、ハーピィ族の頂点に立ち飛翔能力に優れ、強力な風魔法も行使できる。
VS
【キリングスライム】:Zランク魔族、ザコ、すぐ死ぬ。
「こんなの勝てるわけないよねええっ!? だからボクには無理って言ったじゃん! ヤミちゃんの嘘つき、意地悪、賠償金払え! 」
「このまま不平等条約結ばされそうな勢いで非難してきたのじゃ……」
「じゃあボクはそろそろバラエティ番組の撮影があるからこれで失礼するね。バイバーイ! 」
「逃がしませんわよ、勇者! 」
「追いかけてきてるうう!? どうしてええええっ!? 」
当然といえば当然であるが勇者を追いかけるハーピィクイーン。そしてキルライトはとっさに自分の体を液体にして地面の金網から排水口にとびこんだ。
「やべっ、聖剣を地面の上に置いてきちゃった!? まー、いいか別に」
「勇者が地面に溶けていきましたわ!? 不思議な魔法を使いますのね」
金網から排水口を覗き込むハーピィクイーンに向かって、キルライトは排水口に溜まった汚水を思いっきりぶちまけた。
「いやあああっ!? 目がああっ、しかもひどい匂いですの!? 」
「ざまぁー! この先に攻撃しちゃうよー? 」
クソ汚い戦法で相手を怯ませたキルライトは再び地上に戻り身体を人間形態へ戻した後、聖剣を手にとって斬りかかった。
「スーパーウルトラミラクル勇者スラッシュ!! 」
ガキン!
しかし、ハーピィクイーンの羽毛は硬く聖剣でのダメージは0であった。
「……いい羽毛してますねー。ハーピィクイーン様、肩でも揉みましょうか? 遠くからはるばるお疲れでしょう」
キルライトはハーピィクイーンを倒すことを諦めて媚を売ることにした。
「馬鹿にしていますの? 妾達は敵同士バトルで決着をつけるしかありませんのよ。覚悟してくださいまし」
「へへへ……、そうですよねー」
「それじゃあ、妾と貴女でダンスバトルで勝負ですわ! 」
「……どゆこと? 」
血みどろの殴り合いをするかと思ったキルライトは意表を突かれるが、ハーピィクイーンはいたって真面目な顔である。
「今の勇者はアイドルと聞きましたの。妾達ハーピィ族もダンスや歌には自信がありまして、そこで勝負をしてみたいのですわ! より素晴らしいダンスをした方が勝者として全てを手に入れるのです! 」
「インド映画かな? 」
「さあ早く踊るのです! どちらのダンスが優れているか勝負なのですわ」
「……言っとくけど歌とダンスなら負けないよ! 」
➖➖そして30分後➖➖
(これだけ踊っているにも関わらず、どうして勇者は汗一つかいていないのですの!? )
ダンス勝負を始めて30分、ハーピィクイーンは額から汗が滲み、息が荒くなっている。一方キルライトはニコニコ笑い、持ち歌を歌いながら軽やかにステップを踏んでいた。
「ふんふーん、ボクの恋心はトロトロ溶けて混ざって打ち解けて〜♪ 」
「ど、どうして貴女はピンピンしていますの? 」
「……それはアイドルだからだよ。どんな時も見てくれる人達のために辛い顔を見せずに笑顔で元気を与える、それがボクの仕事なんだ。ほら、周りを見てみなよ、たくさんの人が見てくれてるよ」
その言葉を聞いてハーピィクイーンは慌てて周囲を確認したが、首をかしげる。
「……誰もいませんけど? 」
「いるよ、ボクには見えるんだ」
「ま、まさか脳内補正で観客を生み出し、ステージで踊っているように妄想していらっしゃいますの!? 」
「ボクには聞こえるよ、観客達の歓声と拍手と応援が。それにボクは応えているだけなのさ、それだけで疲れることはないんだよ」
「……これは妾の負けですわ、ハーピィ族の中だけで得意になっていた井の中のヒヨコというわけでしたのね」
負けを認めたハーピィクイーンは踊りを止めるとフラリと体が揺れる。
「しまった、踊りすぎて足がもつれてっ……」
疲れて倒れそうになったハーピィクイーンであったが、それをキルライトがしっかり受け止める。
「大丈夫、怪我とかしてないかな? 」
「どうして敵である妾を助けましたの? 」
「ボクの踊りを認めてくれたファンには優しくするものだからね、ニコリ」
「………………きゅん♡ 」
ハーピィクイーンはその時初めて恋に落ちた。彼女は顔を真っ赤にしながら慌ててバサバサと空に飛び立っていく。
「勇者様、また会う時は、その、いろいろ、よろしくですわよ! 」
「うん、またねー! 」
「おい、ハーピィクイーン! 勇者を前にして敵前逃亡か! 魔族としての誇りを捨ててしまってもいいのか、答えろ! 」
突然の撤退にフェニックスが怒号をあげるとハーピィクイーンは頬に羽を当てながら恥ずかしそうに答える。
「敵同士の禁断の愛、というやつですわ」
「答えになってないぞ!? 」
戸惑うフェニックスを置いてハーピィクイーンはハーピィ族の巣へと帰って行ってしまった。これで残るはフェニックスただ一体だけになる。
「役立たずどもめ、こうなったらやはり我輩が片付けるしかないな」
「フェニックスが出てくるなら俺が相手をしよう」
「ノワ兄!? アビ姉はどうしたの? 」
「少し休憩中だ、しばらくゆっくりさせてやろう」
ノワールが視線をやった先にはアビスが芝生の上で息を切らしながら四つん這いになっていた。ノワールとの勝負で相当疲れたようだ。
「ぜぇ、ぜぇ……、水飲みます……」
「悪口も言えないなんて相当疲れたんだね」
「さてフェニックスは好きなようにかかってこい。俺は逃げも隠れもしないぞ? 」
「その言葉を後悔するでないぞ! 」
フェニックスの口から放たれた劫火はノワールを一瞬で飲み込み、その周囲の地面を泥のように溶かしていく。
「ノワ兄!! 」
「ふぅ、少し暑いな。汗をかいてしまった」
「なにいいいっ!? 」
真っ赤な炎の中では上着をパタパタとさせて顔に空気を当てて涼もうとしているノワールがいた。彼は鉄でさえ簡単に溶ける灼熱でもヘッチャラのようだ。
「どうして我輩の炎を喰らって生きているのだ!? 炎属性の魔族でさえ消し炭になる威力であるのに! 」
「うーん、火力が足りねえからではないだろうか、ということでこれを使え」
ノワールはどこからかドラム缶を取り出してフェニックスに向けて放り投げた。
「ノワ兄はいったい何を渡したの? 」
「勝負を面白くしようと思ったので今ちょっと一走りして手に入れてきた」
「これはガソリンだああああっ!? ファイトオオオッ、一発!! 」
「鳳凰のマークの大正石油だ、キクぞ? 」
「なに相手をパワーアップさせてんのさあ!? 」
「俺は全力の相手と戦いたいんだよ。負けた時に体調が悪かったとか言い訳されるのは興醒めなのでな」
「ゲームのコントローラーのせいで負けたとか言わせない感じかのう」
ガソリン飲んで元気100倍になったフェニックスは雄叫びをあげる。温度はさらに上昇し、身体は数倍に膨れがっていた。
「全身にみなぎる力、我輩はもう負ける気がしない! 」
「うむ、これで身体面は良いな。次は精神面で全力を出してもらおう。フェニックスは大切な人はいるか? 」
「我輩にとって大切な人とは魔王様のみ」
フェニックスの答えに対してノワールは満足そうに頷いた。
「うむ、模範解答だな。じゃあもしフェニックスが負けたら俺が魔王をぶち殺しにいく」
「……お前は自分が何を言っているのかわかっているのか? 」
「わかってるぜ、フェニックスの大切な人を殺してやるって言ってるんだ」
「我輩を侮辱するなよ、このクソガキがあああああっ!! 」
激怒したフェニックスは先ほどよりも何百倍も強い炎をノワールに浴びせると、彼の体は真っ黒焦げになる。
「うむ、良い火力だ。俺の手足が焼け爛れてうまく動かないレベルまでパワーアップしたな」
「まだ生きているとは驚きだが、強がりももう終わりだ! 手足が動かなきゃ何も攻撃ができないだろうが! 」
フェニックスは再び大きく息を吸い込んで灼熱の息を吐こうとした。それを見てノワールは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「いい攻撃だった、これで気持ちよく殺せる」
ザシュッ!!
その瞬間、フェニックスの両羽は付け根から切断され、地面へと落下を始める。
「…………え? 」
あまりの出来事にフェニックスは自分に何が起きたのか分からなかった。フェニックスは身体が地面にぶつかる衝撃を受けて我に帰る。
「がああああああっ!? 我輩の羽がああああっ!? 」
「うむ、斬ったぞ。ここでワンポイントアドバイスだが、自分が攻撃する時もしっかり相手の動きは見た方が良い。そうしないと今のように攻撃を受けてしまう」
ザシュッ!!
すると今度はフェニックスの太ももの付け根から切断される。
「さらに相手にダメージを与えたからといって油断しないことだ。どんな手段を使ってくるかは未知数なのだからな」
「ノワ兄が今腕につけてるのって、ボクの『絶対に切れることがないミサンガ』だ! 」
「なんか格好良い感じに言ってますけど、ただの不良品ですよね? 」
ノワールは炎によって手足は焦がされたものの、燃えないミサンガで剣を腕に巻き付け、それを振ることでフェニックスをスパスパと切断していたのである。
「ひっ、人間にはこんなおぞましいやつがあるのか……、許してくれええっ! 」
「最後の助言だ、諦めない限り前に進むことができる。次はもっと強くなって俺を殺しにきてくれよな、じゃあな」
「グキイイイイイキッ!? 」
最後のとどめにノワールはフェニックスの首を切った。不死鳥といえどもこうなっては何もできず、身体の炎を弱めながら息絶える。
「殺しに来てくて欲しいのにとどめを刺すのは矛盾してない? 」
「それは違うのじゃ、フェニックスの身体をよく見てみるじゃ」
「身体? どこからどう見ても普通の死体だけど」
「トロ火で旨そうな肉焼けそうじゃろ? 」
「食い意地はりすぎでしょ? 」
「冗談じゃ、その心臓当たりをよく見てみい」
キルライトはフェニックスの胸元を注視するとキラキラと虹色に光る手のひらサイズの球体を見つけた。
「わー、高く売れそう! 」
「そこは綺麗とか凄いとかいう感想が最初にくると思いますけどね。その球体はフェニックスの卵です、フェニックスは死んだ時に卵になって、時間がたつと孵化するんです」
「それじゃあ、また魔王軍として敵になってやってくるの? めんどいなー」
「フェニックスは卵から生まれた時にそれまでの記憶を全て忘れて、初めて見た生き物の忠実な僕になります。ですから人間を初めに見せれば人間の味方になりますね」
アビスは卵を手に取って説明しつつも、憎しみを込めた目でじっと睨みつけた。
(こいつが人間の味方をしたせいで何人の魔族が被害も受けてたんですよね。めっちゃムカつくから私がぶちのめしたかったんですけど、ノワールもいい感じにバラバラにしてくれたんで良いとしますか)
「フェニックスは自分が負けて卵になり、記憶を失って強者の僕となるのじゃ。そうなると常に強い側にいることになるので、結果として『常勝無敗』になるのじゃよ」
「美化されまくった武勇伝みたいな感じかー」
「それではフェニックスの肉で勇者パーティ結成記念としてバーベキューしよう。野菜は出禁な」
「栄養バランスに喧嘩売っちゃダメだよ! そーだ、この光景映像撮ったらいい視聴率でそう、ニヒヒ」
キルライトはビデオカメラを三脚で設置してみんなが映るように催促する。
「ほらアビ姉もこっちきて笑顔だよ。そのフェニックスの卵もバーベキューで食べるの? 」
「いえ、教会で預かっておこうと思います」
「そっかー、強力な魔族の卵だしそれがいいかもね。生まれてきたら人間の味方してくれるし」
「はい、そうですね」
(こんな魔族にとって厄介なものを教会に渡すわけないですよ。ハピにお土産として渡し、家のタンスの奥に封印しておきますか)
こうして勇者パーティ全員が集まった記念撮影が行われ、楽しいバーベキューが始まる。結成早々、八魔将軍フェニックスを倒したことは全世界に広まり人間と魔族との戦況に大きな影響を与えることとなる。
そしてノワール達はドロドロした政略、衝突し合う軍事、魔族からの刺客など様々な陰謀に巻き込まれることになるのだが、全てぶち壊すので特に関係ないのである。
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