第5話
村に奇跡が起こり始める。消えた者たちが、続々と帰ってきた。立派な身体に、知識と、郷愁からくる涙。
古木と地蔵、祠はあの日あの時のままだ。
帰ってきた皆が口を揃えて妙なことを言う。
どうしてこんなに枯れ腐っているのか。あの立派に生い茂っていた、懐かしい木が。
新しい家族、嫁、婿まで連れて商人や神主、魚売りまで山間にくる。
やがてどっと、人が押し寄せるように即身仏の元へと集う。
この百年。村には人に名前はあれど、同じ家に住む者や血縁をあらわす習いが無かった。みな親から貰う名で一生を過ごしてきた。消えた者達意外は。
彼らは佐藤。あるいは藤原。あるいは高橋。この村の者はみな。
鈴木となった。ただひとり、百年前から鐘を鳴らして、息を引き取った、古のひとをのぞき。
鈴木の木 明鏡止水 @miuraharuma30
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