第3話
即身仏だ。
なんの信仰もない、供養もろくにない大きなだけの村で。それは乾いた骸。固定された生を全うした骨と皮。少し残った、筋のある頭部の毛髪。
この村に、神社も、寺も、無い。
なぜだったか。なぜなのか。必要がないから。
これのせいじゃ、ないのか。
村からいちねんに、ひとり、ひとが、きえ
誰かが叫んだ。誰だって思う。こんなところで割れた木の下、穴を掘られ、箱の中に据えられ。埋められて。それでどうする。
村長が何か聞かれる。何も知らないという。
でも、ありがたい即身仏、さまでは。人々をよりよい方へと導く。
なろうと思って、なれるものでは。誰かがお坊さんを呼ぼうと言った。
何人かは泣いて、訴えていた。この音、うんと良い音で、私たちのあのひとはどこ?あの子はどこ?わたしたちは、なにを結んでいたの!
人垣の中、一人の男の子が言う。
「おなかが空いたよ」
空は青く、黒い鳥が一羽飛び、男の子は服こそ着ているものの、帯なんて上等なものがないので紐で前を結んでいた。
村人たちは箱の蓋を閉め、全てを掘り出し、村長の家の蔵に置いた。
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