第一章 素っ頓狂な友人令嬢のせいで、一肌脱がざるを得ません①
そもそも事の
就任後初めて父が公の場に姿を見せる機会であり、祝い事の場でもある。もちろん私たち
「カードバルク公爵令嬢・ローラ、ハッキリと言おう! お前との
まるで「異論は認めん!」とでも言いたげに、わざわざ短く区切りながら胸を張り告げた彼は、この国の王太子・ルドガー。スラッとした体形に整った顔をしているが、隠しきれていないニヤつきが、彼の顔を意地悪そうに
一方、何の
「これは一体どういう事だ」
「
場内は騒然としている。にも
殿下の事だ、どうせ婚約破棄という貴族令嬢としての
しかし彼も、私と同い年なのだから、もう今年で十六だ。
突然の婚約破棄が、どれだけの混乱を生むのか。せっかく私たちが
一体どういう
はぁ、ともう一度ため息を吐く。
せめて時と場所は選んでほしかった。
王族側もきっと迷惑するだろう。今なんて特に、先日起きた
その上、この王太子の婚約破棄。
そもそも二人の婚約は、陛下が直々に「ルドガーを支えてやってくれ」と先方に
実際に、ローラは
もちろん貴族間の人脈作りにも余念は無く、社交界では
ローラの真価はそういう所にあるのだ。カードバルク公爵家の
もしそんな人を敵に回したら。最悪、国が
というように、今ざっと思いつくだけでも
言い分も、今のままではただのワガママ、権力持ちの横暴だ。
幾ら元々がそういうところのある男でも、曲がりなりにも一国の王太子。まさかそんな見切り発車をしたとはできれば思いたくない、が。
「そもそもお前は俺に対して、常に無礼な態度だった。しかも、本来ならば王太子であるこの俺を支える立場でありながらだ。暴挙という他はない。が、お前の父親は宰相だからな。彼の国への
具体的な
特に相手を下げて自分を上げたこの物言いは、もう本当にただの権力者の横暴でしかない。だというのに、
心底意味が分からない。王太子としては
心中で「せめてそれらしい
「また、そのような
ため息と共に、
声の主は、
しかし私は
──あぁ、静かに
きっと周りの大多数には「
一方彼女を色眼鏡で見ているルドガーには、おそらく小さな子どもを
「『世迷言』だなどとバカにして……無礼だぞっ! 今すぐ
ただの売り言葉に買い言葉だ。浅慮な彼の事だから、それ以上の思惑なんてある筈がない。
が、それが分かるのはごく一部。
周りは
ピンと張りつめた空気の中、動じていないのは彼を理解している私ともう一人、ローラくらいのものだろう。
私と彼女は幼い
まったく、もう子どもではないのだから、そろそろ正しく自分自身を理解すべきよね。『自分は
でもまぁいいわ。今はこの現状をどうするかに主眼を置くべきだし。
この婚約破棄について、私は完全に部外者だ。だって私は、婚約を破棄する側でもなければ破棄される側でもない。どちらかの親類
にも
招いた貴族たちに
成功すれば
つい先程、しばし席を外した両親に場の仕切りを任された。ここは今、私の戦場だ。
幸いにも、取り成す事はそれ程難しい事ではない。
二人の婚約は、国王陛下がお決めになった事。そもそも陛下がいない場で正式な決定ができる筈もないのだから、うまく二人を
場の空気は
外交官を目指している私に、まさかこの場を上手く収められない訳がない。
そう思った時だった。
「えぇぇーっ!? お二人、
あぁ、忘れていた。
分かっていた
まったくもう、見た目はいかにも無害な小動物系なのに。
こうして悪気なく大きな
淡いオレンジのドレスが似合うふんわりとした印象の彼女は、呆れを
せっかくうまく話題を逸らそうと思っていたというのに、
言うまでもない事だけれど、二人が婚約していなければ、そもそも今この場で「婚約
そんな事、この国中の誰もが知っている事の筈なのに、何故そんな事を言い出したのか。
遠巻きにしている人たちの脳内ではおそらく、エレノアに対する
正常な反応だと思う。私だって現在進行形で「は?」となっているし、もし彼女が親友ではなかったら
だからこそマズい。
エレノアはまだ
一度ついてしまったレッテルは、そう簡単に
それに、だ。
ねぇエノ貴女、分かってる? 今にも処刑されそうなのだけど。
流石に口にはできないが、ルドガーが今エレノアに向けている目には、かなり
彼の事だ、どうせ妙な割り込みのせいでせっかくの
ローラへの
ルドガーは、つい
もしできるなら、今のエレノアの発言を
今にも血管が切れそうな顔のルドガーに、甘い気持ちはすぐに捨てた。
言葉に裏表が無いところは、エレノアの長所だと言える。腹の
でもだからこそ、私にとっては
目を
はぁ……。こんなの、もうどうにかしてあげるしかないじゃないの。
一度目を伏せて深く息を吐き、ゆっくりと前を見据える。
今までだって、最後には皆いつも「ちゃんと的を射た事を言っていたのだな」と
物理的な命の方は、レッテルを剥がし終わるまでの間、
命令が無ければ強権が発動される事はないし、どうせルドガーの事だ。『素っ頓狂』が解決して周りの意識が再び『ルドガーとローラの
絶対に、エレノアを公開
貴族としての評判も回復させるし、そもそもの
全てを上手くやった上で、パーティーをつつがなく終わらせる。
とりあえず、その
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