第3回 公国の政治について!
Q1:奴隷制は良くないと思います。
ベルニコ:そうね。勿体無いと思うわ。
……この回答は変? そうね。説明するわ。この世界には『人権』『道徳』という言葉と概念は存在していないから、私の言葉での説明になるけれど。それと、政治に感情論を持ち込むのは『正しい判断を損なう』御法度だから、感情的なことは言わないわよ。
昔の公国議会は、国家目的である『民の生存と発展』の為に、『奴隷制』を作った。つまり、『自分達の繁栄の為に』なんだけど、その『自分達』に入ってない人達が居たの。それが被差別階級ね。『自分達の生活を便利にするために』『虐げても良い人々』を用意したという訳ね。
彼らからすれば効率的で、実際今まで彼ら視点では目立った支障も無く、公国は発展してきた。
けれど、クーデターは起こった。ずっと不満を溜めていた奴隷達や貧民街の人達の限界が来た。
今回の損失は大きいわ。破壊されたタンクもそうだけど、これまで議会が意識もしていなかった、『
そう。効率的に見えて、実のところ非効率だったのよね。『そのツケ』……つまり昔の議会の『失政』の代償を現代の私達が
そして、私が『勿体無い』と言ったのはそこ。
民に負担を強いて、いつ割れるか分からない薄氷の上に築かれた平和と発展なんて、こちらからすれば願い下げよ。そんな判断をした昔の議会は愚かよね。まあ、奴隷を完璧に管理して一切クーデターを起こさない自信があったのでしょうけど。でも、そんな『完璧な計画』なんて、インジェンの言う通り『知らなかったひとつの事実』で簡単に引っくり返る。政治に『完璧』なんて使ってはいけないという良い教訓ね。
私はヴェルスタン家として、公に『
私が責任を持って、ルミナと一緒に、人間と
それと、奴隷制廃止に向かう上で目下の障害となっているのが、『奴隷制賛成派』の貴族や関連企業の商人達ね。
彼らは昔から奴隷を活用することで安泰を得てきた一族が多くて、奴隷を放棄することは一族の滅亡を意味すると考えてひどく恐れている。どれだけメリットを伝えても、彼らへの補填の話をしても、分からない。分かりたがらない。どうあっても、『奴隷は必要だ』ということにしておきたい人達。彼らの目的は彼ら自身の安泰であって、国家目的ではないのよ。だから『話にならない』。政治に関わる資格が無いわ。
困るのよね。国家目的に照らし合わせれば答えは一目瞭然なのに。こういう、『議論ができない』人達が長い歴史の中で『分からないのに政治に携わる重要な立場に居てしまった』ことが、公国の反省点ね。最初から間違えたまま、250年経って世代交代してその教育が受け継がれて『固まって』いるのだもの。簡単にはいかないわ。
民主化すれば解決するのかしら。私は成功した民主国家を知らないから、何とも言えないわ。
……語ろうと思えばもっと語れるけれど、今回はこの辺りにしておくわね。質問ひとつで長く喋ってしまったわ。
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