第7話 光る泥の文明【ニコ視点】
人間の文明は、何千年も前からあったらしい。紙が無くても、石や洞窟の壁に、その存在は記されていた。
そして。
液体型万能光熱エネルギー体、『
「……人間と
リームス文明が
歴史や考古学はあまり進んでいないのだという。
「ですから。我々人間がどこから来たのか分からないように。
「…………【『知る』ことは全ての判断の原点である】」
インジェン第三作『濁流に沈む旧都』から引用する。私はインジェンファンだ。彼女の小説は物語でありながら、現実のことをかなり正確かつ深く表現していると思う。
知らねば、判断できない。だから歴史を学ぶことは大事なのだ。……私は疎かにしてしまっていたけれど。ただ、国までもが拒むほどとは思っていなかった。
「可能性を排除して判断の材料を自ら減らすなんて愚行よ。……陰謀かしら?
「あると思います」
「ルミナ」
本人がここに居る。
可愛い。
撫でたい。
抱き締めたい。
駄目だろうか。
「……わたしの、主観ですけど。わたしの勝ちに難癖を付けたり。『どうしても認めたくない』人は、実際に居ました。……わたしが思うに、人間と
彼女の主観では、当然のことだろう。ずっと虐げられていた筈だ。鵜呑みにはできないけれど、当事者の言葉は貴重だ。なんであれ、
「……情報が足りない時点で結論を付けるのは良くないわ。調べてみる。その、支援は無いけれど個人で調べている専門家も居るのよね?」
「探せば居るでしょう。彼らはいつも資金難ですから」
「なら何件かピックアップしておいて。ルミナ、来なさい。ウチの案内をしないと」
「かしこまりました。お嬢様」
「はっ。はい!」
陰謀。危険な言葉だ。簡単に決め付けて良い話ではない。ともかく調べるのだ。いずれ分かる。
私はルミナを連れて部屋を出た。
「……あの」
「なに?」
絨毯の敷かれた廊下を歩く。ルミナは私の後ろに付いている。
「どうして、そこまで……? わたしは別に、
「ああ、私の性格よ。知りたくなったことはとことん調べるの。【好奇心と探求心は本人でさえ抑えられない。それほど人間とは、不完全なのである】」
「…………」
インジェンの第四作『冠を戴く獣』から引用。
「さっきから、それ……」
「インジェンよ。知ってる? 全作全巻あるわ。貸してあげましょうか。まあ、私が好きだからといって強制はしないけれど」
「……ベルニコお嬢様の、『目的』を、訊いても良いですか」
「ん」
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