第8話落ちこぼれ魔法剣士が英雄と呼ばれる前の話 その8

場所 アルボレナ


ゴトー15歳

ミグロパーティーの4人

勇者カンデラ の9人パーティー


【本文】

勇者カンデラはおそらく来年Gに上がる歴戦の勇者だ

簡単な討伐系はランクの低い冒険者のサポートにまわり収集系はまったくやらない

武功がないと別パーティーも拒むと聞いていたので、ゴトーなんて呼ばれないと思っていた


カンデラは仕事に拘りが強く、自身がこの人物は見込みがあると感じないと呼ばれない

カンデラパーティーは有名で討伐系といえば真っ先に声が上がるが、収集は一切やらないため年齢のわりに冒険者ランクは高くない

今回はミグロさんのサポートに来たといっていた


勇者ミグロさんと話が終わりカンデラさんがゴトーに向かって歩いてくる


カンデラ

『ゴトー君は君か?』

ゴトー

『声をかけてもらってありがとうございます ゴトーです』

カンデラ

『君には商人の護衛を頼む、君は索敵の距離が長い』

『彼らも索敵だがアークが大量に呼ぶゴブリン対策だ」

『キマイラをしのげた力は本物だ 君はまぐれ、運がよかったといってるが、まぐれではないな』

『報告書を見たが 一人でキマイラの相手とはなかなか能力が高い』

『通常ならキマイラの餌食だし、逃げて帰れない』

ゴトー

「ただ必死でした 飽きてキマイラが勝手に諦めたのではないかと思っています』

カンデラ

『、、、ふむ、、、逃げ帰って討伐に疑問を感じているな』

『おーーいワイトベックこっちに来てくれ』


今回は商人扱いだが索敵のワイトベックさんがこちらに来る

カンデラ

『ゴトー君だ 君と同じキマイラを凌いだ奴だ、若いが有能だ 君の馬車に乗せてくれ』

ワイトベック

『よろしくゴトー君 初索敵で初遭遇、キマイラの正面にも立ったのだろう、、、』

『よくキマイラからよく生還できたね 全員を連れて逃げれないんだよ キマイラは。。。』


この後も順に声をかけていくカンデラ

ゴトーには索敵のワイトベックさんだったが、回復のピロリさんにはカンデラパーティーの回復役2名、エフカさんには魔術師2名を紹介していた

紹介が終わるとすぐに現地に移動を開始した


移動中にワイトベックさんから当時のキマイラ討伐の話を聞けた

カンデラさんのパーティーに入る前、ゴトーと同じように索敵巡回中にキマイラに遭遇をした

当時は14人で攻撃の勇者4人、魔法攻撃1名、回復1名、あとは索敵8人だった

遭遇したのはキマイラ1体だった

周りの鎧を着た索敵はばたばた襲われていった

当時の索敵は索敵が済めば頑丈な鎧で囮で襲われる役割だった

私(ワイトベック)は当時勇者、ケラゾンが鎧を着た索敵、スカードトは当時は珍しい1名の大魔術師だった

囮を襲ったキマイラにワイトベックは切りかかっていたが逃げられ、傷は与えられなかった

生き残った大魔術師スカードトもキマイラの魔法耐性を突破できないでいた

ワイトベックが別の索敵を襲っていたときに顔に傷を負わせ、一時優勢になった

すぐにキマイラが魔法攻撃に転じそれからは逃げて回避する一方だった


最初索敵は8人いた、もう4人まで減った

生き残りの索敵4人が囮になり、キマイラが囮を攻撃している隙にもう一度切りかかり魔法攻撃は止まった

魔法攻撃をやめたキマイラは、馬車に隠れた索敵を直接襲い始めた

次はワイトベック以外の勇者3人

襲われている勇者の側面からワイトベックの渾身の一撃が2つの顔両方に深い傷を負わせやっとキマイラは撤退した


討伐にカウントされているが14人の索敵巡回中生き残ったのはわずか3人

ワイトベック、分厚い金属鎧に守られた生き残りの索敵ケラゾン

キマイラの魔法耐性を突破できなかった大魔術師スカードトが残った

めったにないキマイラ討伐で周りは浮かれていたが、キマイラ討伐以来おとり役として分厚い鎧を付ける索敵にワイトベック、スカードトは代わった


ワイトベックの考えた囮なしでの索敵巡回の40人案は40-51人の索敵に変わり現在に形が残った

馬車に設置された単発式の自動弓1対

短弓1つを索敵は持つ、弓矢は短弓用20本と馬車に予備20本を持っていく


分厚い鎧ではなく今の弓主体の索敵が生まれたのもワイトベックの提案からだった

正式に『ワイトベック探索』で採用された

勇者2魔術師2回復2以外すべて索敵で弓矢と馬車の自動弓を使う


ワイトベック

『君はまぐれ。必死だった、運がいいといってるが、見逃してはくれないよ』

『僕が勇者当時は索敵はおとり役で、いかに勇者が剣で攻撃できるかの訓練だった』

『索敵は金属装備の重装備で避けれれなかったら囮だ』 

馬車に積んである分厚い鎧、見た目からしてあまり動けそうもない

『囮を攻撃している魔物を勇者4人で一斉に攻撃して討伐していた』


『ところが遭遇したキマイラは魔法攻撃で分厚い鎧の索敵をバタバタと倒していった』

『キマイラをよく退けたとほめられたが内心は惨めなものさ』


スカードト

『俺もただ生き残っただけで英雄扱いだった 針の筵(むしろ)だっだよ』

『魔法使ってただけで、さして生き残るために何かをしたわけじゃない』

『魔法、、、、障壁とも言ってよかったほど魔法は通じなかった』

『火魔法をほぼ無効にする力持ってたんだ』

『当時は弱点を看破するなんて考えがなかった』

『今の言葉では魔法耐性といわれるものだね、得意な火魔法で攻撃しても耐性があるから意味がなかった』

『僕に弱点を教えてくれる索敵からキマイラに真っ先にやられてたからね』

『ケラゾンは僕の囮になって、魔力補充をしてくれた』

『ただね、、、意味のない火魔法を使ってました、それで英雄だとさ』


ワイトベック探索で生存確率は上がり死者の出ない探索が普通になった

ゴトーは勇者時代のワイトベックを知らない 16年前のことだ

 

馬車を運転していた索敵のケラゾンからも休憩の時に

『囮として襲われなかったのでスカードトに魔力を補充していたんだよ』

『勇気を出して前に出て囮で死んでいった仲間たちには申し訳なかった」

『当時のキマイラは魔法攻撃はしないとされていた、魔法に対して無防備だった』

『キマイラの魔法攻撃はこの鎧では防げなかった、何もできなかったかな』

『英雄?俺はただ運のいい臆病者だ』

『ゴトー君は目の前に立って、足の攻撃も魔法攻撃も防いだのだろう』

『それで全員で帰還で来た、それがどれほどの偉業かわかったかい?』


ゴトーは『私の成績を見てもらえばわかりますよ、運よく逃げれただけですよ』とは言ってみたが3人にとって苦い記憶は消えない


当時は英雄を作りたかったのかなと思う

英雄本人たちはとても英雄ではないと口をそろえて言っていた

本人たちは確かにめったにないキマイラの討伐をしたので英雄でよいとおもう

今でもキマイラは出会ったら逃げるのが正解だ


索敵が弱点看破しずっと弓矢で攻撃をして勇者の盾まで誘導する

攻撃魔法は弱点属性の最も強い魔法だけを使って攻撃をする

勇者は盾でいなし剣では戦わない、当時の常識外れを提案した


これまで兵士は15年で100回を超える程度のキマイラと会敵している

15年間の死者は69人、少なくない数だ

しかしこれは兵士の数で冒険者は0だ


勇者の剣で複数人で攻撃するパーティーを組むのが常識だったが、役割別に分け待ち構える戦術に変え固定構成で訓練するようになってからは、8人の兵士でもキマイラによる死者は年3人が上限になった、年間で兵士の死亡者0の年もある

14人パーティーから8人パーティに人員を減らして、攻撃力の足し算でキマイラの戦闘力を上回る戦い方から、戦術で負けない戦いに考えを変えたこの3人の功績はとても大きいよ


西の南のゴブリンの森に到着したが、森の中では人間側に分が悪い

木々が邪魔で索敵能力が落ちるし、攻撃能力も落ちる

アークゴブリンをいかにして森の外におびき出すかがカギだ

そのための食糧馬車が3台持ってきた、1台につき寸胴を4つ用意した

1つ降ろして森の手前においておく

薪で温め匂いを周りに振りまく、ゴブリンでは届かない2mの寸胴

体高が2mと少しのアークゴブリン用の食料だ


1日目は空振り ゴブリンは近づいてくるが小さなゴブリンでは届かない

諦めて森に帰っていく、、、、数は60匹ぐらいと多い

普段の3体一組のゴブリンじゃない、ここで呼ばれた理由が分かった

範囲せん滅だ

予備の寸胴は8つほどあるがそのうち4つは昔懐かし14人パーティー用の食料だ

アークゴブリン討伐一日目は空振りに終わる


2日目も同様だがゴブリンの数は170体付近まで増えた

同じように近づくが油断させるため攻撃はしない

夕方残量を見ると半分まで減っている

2日火にかけっぱなしで随分煮詰まっている

ゴブリン170体はなかなか見ることがない


3日目の夕方に2つ目のアークゴブリン用寸胴を置く

1つ目と同じように温めておびき寄せるが3日目も空振り


交代で夜も索敵しているので今夜はスカードトだ

ゴトーは昨日索敵で夕方からずっと索敵して夜の間ゴブリンを追っ払っていた


待望の4日目のお昼

やっと出てきたアークゴブリン

120cm程度の通常のゴブリンとくらべ2mは超えている

寸胴から手づかみで食べている


ベテラン索敵のローキーンから「周囲警戒」の指示が飛ぶ

アークゴブリンは通常のゴブリンに寸胴の食事を分け与えている

東方向に置いてある寸胴2つ、アークゴブリンが食事を終わりゆっくりするまで待機する

1時間ぐらいたった時油断をして座り込むアークゴブリンとゴブリン180体


勇者ミグロから「討伐開始」の号令が出る

真っ先に正面に立つ 勇者ミグロと素早い動きで同じく正面に立つカンデラ

一斉にゴブリンたちも戦闘態勢をとる


ここで大魔術師のクックアール、ロゾナス、エフカが広範囲の火魔法でゴブリンを攻撃するがアークゴブリンの魔法防御で無効にされる

アークゴブリンは追加で魔法防御を立ち上げると自身も立ち上がる

これでアークゴブリン近くのゴブリンは魔法が通じない


アークゴブリンのミグロが右腕、カンデラは左腕を狙う

アークゴブリンはそれも器用に躱すが、勇者2名の追撃、第2弾の3人の攻撃魔術師から氷魔法発射と索敵ローキーンからの弓が発射して命中する

しかし魔法はさして効果がない

続けて追い打ちの本気の火魔法 第3弾はゴブリンには次々に命中する

これまたアークゴブリンにはさして効果はない


自分の魔法防御でずいぶん威力弱まるが、炎に怯んだアークゴブリンはミグロに照準を合わせ攻撃、ミグロは自慢の剣で受け止めカンデラは左腕を攻撃した

今度は避けれず剣傷の入るアークゴブリン


回復のゲトラデは勇者ミグロを回復しつつ、もう一人の回復エランデルとミグロパーティーのピロリは大魔術師3人の魔力回復をしている

これが初めてとは思えないコンビネーション攻撃 さすが歴戦のパーティーだ


更に追撃をかける勇者と大魔術師の5人 アークゴブリンは何回か両勇者と打ち合った

やっと防御効果が切れ魔法攻撃が威力を発揮し始め、周辺のゴブリンは10体単位で討伐されていく


魔法攻撃がさばききれないアークゴブリン

ただ追加の魔法は次々命中しているがアークゴブリンの魔法防御で軽減されている

しかし勇者2名の剣技で追い詰められたアークゴブリンはいよいよ奥の手 咆哮(ほうこう)し森周辺にいる周りのゴブリンを14人ptに突撃させる


14人の周りにゴブリンが数えきれないほど取り囲む

ここまではみていてよかったがお仕事開始だ


ゴトーは『南側 壊滅させます』といって雷の広範囲魔法を3度場所を変更して放つ

一斉に倒れるゴブリン 追撃の火魔法でとどめだ

後で数えたら279体だったが一気に減らす


それでもゴブリンは一斉に突撃攻撃してくる、しかしそこは貴重な魔法剣士ゴブリンでは超えれないよ

弱点看破で火、雷 氷の魔法をそれぞれ打ち込み、近づかれたら槍で間合いを取りつつ範囲殲滅に特化する

アークゴブリンもゴトーが ゴブリン150匹を超えたころには討伐されていた

流石に目の前のゴブリンの討伐でいっぱいいっぱいで、クックアール、ロゾナス、エフカの詳しい状況はわからない


南のもう一方はミグロパーティーの魔法剣士ドルマが奮闘している

ゴトーは時折助け舟を出すし、ドルマも支援攻撃をしてくれている

およそ20分かけ ミグロが『アークゴブリン討伐したぞ』と叫ぶ

それを聞き勢いを増す14人パーティー

その間 馬車にいる索敵のケラゾン、スカードト、ワイトベックも負けてはいない

西のゴブリン集団を討伐する


南の森から次次出てくるゴブリンを討伐していて魔力切れ寸前の時 アークゴブリンの魔術師用の魔力回復をいていたピロリから魔力補充が来る

ゴトーは半分をドルマに渡して引き続き広範囲雷魔法を放つ

アークゴブリン討伐から6分後ゴブリンたちは突撃をやめ森の中に退却していく

念のため警戒は続けるが大勢は決した

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