第3話英雄と呼ばれる前の話 その3

戦争した国 レモニウム

自国 エルデバラン


登場人物

北の酒場の主人 モゲ

新人冒険者商人 ゴトー

勇者ミグロ

大魔術師 エフカ

母スペイド

悪友エルス


【本文】

ミグロさんから冒険者になった理由を聞かれたので話す


ミグロ

『魔法を使えるものが半数、剣技を使えるものがさらにその半数 回復魔術が使えるものが半数、索敵が使えるとなると更に半数』

『全国民で2000人もいない貴重なエリートではあるのに、兵士にならないものはなぜか?』という問いだった


ゴトー

『領土は拡大できたが父が亡くなってしまった』

『余り遊んでもらえず家にも帰ってこず寂しい思いをした』

『エリートでも落ちこぼれなこと』

『毎日休みなく働く早く母を楽にさせたい』

『まだいないが恋人も作りたいし子供も欲しい』

『ゴトーは一人っ子なので子供は兄弟姉妹も欲しい』

『自由な冒険者になったほうが自由に時間を使えるから』と答えた


ミグロ

『君もか 僕は魔術師の母を失い、エフカも父親を失った』

エフカ

『俺はまだ独り立ちしていたから金銭的には余裕があったが、、、苦しかったんだろ』

ゴトー

『はい 馬車があったのですが学費を払うため売り払い、母は朝 昼、夜の酒場でずっと働いています』

『この5年間、、早く卒業することだけを目標にしてきて成績は最低です』

ミグロ

『それは大変だったな 勝ったといっても南の戦いでこの南のアルボレナからは随分人が亡くなった』

エフカ

『学友はどうした やはり兵士が多いか?』

ゴトー

『はい ほぼ兵士で冒険者になったのは僕ぐらいなものですよ、結局学友のエルスも兵士になりましたし』


ミグロ

『なんと覚えるのに時間のかかる魔法職を1年早く習得し、卒業したエリートの魔法剣士がすぐに不安定な冒険者になることが珍しい』

『俺のように魔術が使えないもの エフカのように剣術がさっぱりなもの 回復しか使えないピロリ、索敵は君より成績の悪い魔法剣士のドルマのパーティーが私のパーティーの基本だ』

エフカ

『そんな落ちこぼれのおれらからみると、何でもできる魔法剣士はどこでも引く手あまただろうにと話していたんだ』

ゴトー

『何でもできるが特化した人には勝てませんよ、エフカさんと魔法対決なら3秒で負ける自信がありますね』

『勇者の力は少し腕の立つ商人といったところです、勇者のミグロさんとは比較になりません』

『回復は自分の体力が回復できる程度で、多少人よりましなのは索敵ぐらいですかね』

『得意なのは商人ですよ エリートらしいですが落ちこぼれですよ』


ミグロ

『俺たちも苦労してここまで来たが、10才から。。。。大変だったな』


エフカ

『なあゴトー 不安定だが自由だ』

『魔法剣士で冒険者は少ない そりゃ安定して給金もらえるほうがいいからな』

『パーティーメンバーにいる魔法剣士のドルマは気楽な冒険者がいいという変わり者だ』

『ゴトー 明日からよろしく』


この後ゴトーは宿泊所にはいり、食事と微量のお酒を飲んだ

お酒のうまさはよくわからない


冒険者の下支えをしてきたゴトーは、これまでなら馬車出発前後の馬の食事、水補給をしていた

食事は朝昼晩作るし、冒険者の落とすお金で暮らしてきた

通常は冒険者は外に出れば自分たちしかいないのでやるが、国内では冒険者の下支えに金銭を払ってやってもらう

何でも自分でやる癖がすぐは抜けない

明日の朝もまたやってしまいそうだと思いながらぐっすり寝た


翌日自分で馬車の用意をしようとしたが、朝起きると馬車がなかった

ゴトーの運んできた馬車はここの住民の足と言っていたなと起きてから気づいた

しょうがないので酒場の厨房を手伝っている


ミグロさんとエフカさんがやってきて

『夜間索敵の練習が必要だよ、昼間は馬車で寝て移動だ』

そういえば、言われてたな、お酒はクエスト終わりだけにしておこう


4日間朝から馬車に揺られ夕方起きる生活だ

ゴブリンの森に向かうときは基本索敵が夜の間起きているそうだ


柵外は馬車の中で休むが夜行性の魔物が出てくることがある

馬車で引きこもれば大抵のことに対処できる

大きな魔物で対処できなそうなら夜たたき起こすしかない

馬も寝ているし真っ暗並みでもなんとかしないといけない

この辺りは柵外の注意点だ

気を付けるんだよの中身はこれでいいのかな?


柵外で2台にしたのは馬車をまだゴトーが持っていないかと思ったが違うようだ

エフカさんは『索敵は夜の間警備することがよくあるのでその練習』だそうだ

そういえばそんな習熟訓練あったなあ

さぼってやってないけど


ゴトーは収集する角を輸送する台車付きのエフカさんの馬車の寝室で寝て移動だ

4日と予想していたが道が良くない

ゴトーは結局南に4日間の夜間索敵を続けた


5日目になると先に到着していたパーティーと合流できた

ゴトーは昼夜逆転生活から通常の生活に戻す

まっすぐ向かえば4日だが、柵外は柵内とは違い計算通りにはいかなかった


時々揺れで起きることがあり、夜間索敵していると寝不足になる

今回はゴトーが寝てから移動してくれたためそこまで強い寝不足感はない

その分距離は稼げなかった

これから本格的な収集のため、到着当日は寝不足解消を兼ねて昼も夜も寝て夜間索敵は他のパーティーの索敵に任せる

夜間索敵サボったのでよくわからないよ


6日目の朝から収集開始だ

朝勇者ミグロから 『そろそろゴブリンの森だ』と聞きゴトーの柵外初仕事だ


ゴトーは周囲警戒の索敵をする役割、ミグロさん、エフカさんはゴブリン角をひろう役割に分ける

3人パーティーでの旅、ほかのptも到着して全体で19人ほどになった

昼の収集時は索敵らしく警戒に当たる

夜間索敵は現地についてからはゴトーはやらず、朝から日が暮れるまでゴブリンが出てこないように警戒する

本格的な初冒険の始まりだ


角輸送用の台車は外してそこらに落ちている角を拾い積み込んでいる

木は着火しにくく最初にゴブリンの角に火をつけてから薪に移す

そのためにゴブリンは全滅させない

半日拾い続け場所を移動、ゴトーはひきつづき警戒に当たる

周囲警戒の時に角のよく落ちている場所の目星をつけておく

昼食時は昼の索敵が順で休む


ゴブリンは森から出てこない、午後からもひたすら角拾いだ

ゴトーは初日はミグロさんとエフカさんの周りだけだったが、到着して翌日はゴトーが巡回しながらほかのパーティーの警戒もする

角がたくさん落ちている場所を調べておき、馬車ごと移動する

4パーティー来ているのでほかのパーティーにも角の落ちている場所を共有しておく


これだけ角が落ちているのはゴブリンの恋の季節が葉月だからだ

ゴブリン同士の男の決闘の証で角が折れたゴブリンの負けで決着がつく

人間はそれを利用する、折れた角はまた1年かけて復活する


ミグロさんとエフカさんは3日の滞在中収集場所を変えつつ、ひたすら角拾いをしている

たまに巡回中にゴブリンが森から出てくるがゴトーには近づかない

たとえ3匹でも人間の魔法剣士、ゴブリンの大集団でもない限り襲われることもない

ゴブリンは3体一組で森の中にいて何か異常があれば出てくるのだろうが、ゴトーの索敵距離は100mと長い、通常は50-60mだ

索敵距離は魔法の必中距離と同じで、なぜだかわからないが索敵の距離は長く、特に弱点を看破するのはゴトーは得意だ

まあ ポンコツ剣技をみれば俺が優秀ではないことがすぐにばれるがね


ゴトーは探知の利く森から100m手前付近を巡回する

そうこうして現地滞在4日目に角を乗せた台車2台に角をひろい終えた

ミグロさんの貨物台車とエフカの貨物台車はすべて角で埋まった

4日目は食料の寸胴も減ったためミグロさんの馬車に余分に角を拾ったようだ


ミグロさんから『これだけ拾ったら3カ月は暮らせる 帰ろう』と呼びかけられエフカさんも同意する

少し少ないと感じたがパーティーリーダーのミグロさんの決断だ

ゴトーの初柵外仕事はあとは帰ることだ


今度は昼から夜間も起きていて朝寝ることにする

最後の日になって他3パーティー分も夜間の警戒対象だ

何事もなく夜は空け、朝ミグロさんが起きだしてくるとすぐに寝た

それから向かう時と同じで夜間索敵に戻り4日かけて柵内に帰ってきた

戻りはやはり食料が少ない分早く到着した


国境警備の衛視 ウズリーに馬車と台車を渡す

ウズリーは今回は受け取っただけで輸送の手配はしない

今回は税金納付のため冒険者組合に戻るため3人で戻る

本来は領内は本物の商人が馬車で運んでくれるが、ゴトーはミグロさんが借用した馬車を返さないといけない

ゴトーの運んできた馬車は、南の国境付近に住む住人の足となっていた

馬車の後ろには満載の収集品がある


これが一肌脱ぐの意味か、、、助かる

冒険者組合にもっていけば収集品の輸送実績になる

これまでゴトーもさんざん馬車の移動で世話になった

今回は実績ももらうことになる、、少しづつ返していこう


冒険者組合まで戻るならついでに自宅まで運んでしまえばいい

ミグロさんと、エフカさんは南の柵のすぐ近くに住んでいるが、税金納付があるので一緒に移動する

そのため3人で冒険者組合まで戻る


ゴトーは馬車に乗り込み、ミグロさんと、エフカさんはそのまま馬車で冒険者組合に向かう

ゴブリンの角はかなり軽く重いパーティー用食料も少なくなったので馬も速度が上がっている

ゴトーは住人が採集した収集品を運搬している


冒険者組合についたのはお昼と夕方の間

クエスト終了の報告はミグロさんがしてくれる

続いてエフカさん、ゴトーの順にクエスト記録をしていく

これで初の柵外仕事終了だ


ゴトーはゴブリンの角用に馬車をレンタルしたので自宅まで運んで戻る

冒険者になったので馬車を借りるにも銀貨は必要だ、なるべく早く戻したい


新たに角の輸送馬車1台と輸送人付き馬車の2台を借りゴトーの自宅に運び込む

輸送馬車の借用費を冒険者組合に払い組合横の酒場に戻ってきた

3時間後、、、戻ってくると夕方過ぎだ

エフカさんのおごりで酒場で飲む

仕事終わりの一杯はおいしいといわれるが、ゴトーはよくわからない

何か言われたことを忘れるのはわかったのでメモを取ることにした

このメモでこの冒険を書いている


仕事は武器で威嚇しつつ、時には魔法で追い払い安全に採取できるように心がけた

エフカさんから『いつもは5人で行くが3人分は働いたな 索敵は見事だった』と褒められた


索敵方法はゴブリンの場合

人間が森に近づくと偵察隊の3匹のゴブリンが出てくる

ゴトーは教えられた通り いったん引いてやり過ごし、ゴブリンが移動すればまた近づく

森から出てこようとすると、武器で威嚇する

実際に出てきたときは氷魔法を使う

怪我をすると一斉に怒って出てくるので、怒りださないように足元に集中して地面に命中させる

ゴブリンたちがおよそ40mまで近づいたら本気で火魔法で攻撃するが、今回は出番がなかった

落ちこぼれだがこれでも魔法剣士、ゴブリンたちでは超えられない壁だ

もしゴブリンが撤退したらゴトーもいったん距離をあけ撤退

こういった順序でミグロさんとエフカさんはひたすら角収集のみに専念できた


エフカ

『やっぱり魔法剣士は偉大だわ 一人で収集以外すべてできたんだから』

ゴトー

『教えてもらったとおりやっただけですよ』

ミグロ

『いつもは3人で交代しながらやるんだ 回復のピロリはずっと中で角拾いだがな』


『いいメンバーだった 俺が集めたパーティーで今回が一番楽で量が多い』

『ただ4日角拾ってればよかったからな』

ゴトー

『それよりいいんですか 1/5じゃなくて1/3でそれも霜月売却ですよ』


ゴトーが南に運んだ馬車の戻り便は南の森での収集物が目いっぱい入っていた

採集物はすぐの買い取りでゴトー単独の実績にしてくれた

金銭と実績の少ない新人冒険者には本当にありがたい


ミグロ

『俺のパーティーのやり方だ』

『クエストごとに均等分割 商人に即時売却が基本だ』

『金は必要だが、金でもめるのはごめんだよ』

『それよりゴトーは大丈夫か?2か月収入ないぞ』

ゴトー

『母と同じ西北の酒場で働きます』

『これまでも学校が休みの時には働いてましたし、母と違って朝と昼だけです』

『これまでの週2が毎日になるだけですよ、問題ありません』

『そうすれば母は夜だけになりますし働けば食えますから。。。大丈夫ですよ』


エフカ

『そうか俺らはオーガ退治に行くんだ どうかなと思ったが』

『母さんの負担を減らすことが優先なんだな』

ゴトー

『はい 最優先です』

『オーガ2体倒せば830枚に値上がりしてますよ』

『これは値下がりはしばらくないですね』


エフカ

『いいことを聞いた』

『この辺でお開きにするか じゃーなゴトーまた頼むわ』


そういってミグロさんとエフカさんと別れる

ミグロさんとエフカさんは冒険者組合近くの宿屋に泊まっていく

次のオーガ討伐の準備もしてあった

ゴトーは馬車を使わず80分歩いて自宅に到着し食事の用意をした

用意が終わると母のスペイドがちょうど帰ってきた


ゴトー

『母さん おかえり 明日の朝から西北の酒場は僕が行くからね 夜だけお願い』

一切行くなというときっと自分の心配だけしなさいと4時間ぐらいお説教を食らうので夜だけは是非にとお願いした


母スペイド

『そう、、ありがとう 夕食をもらうわ』

ゴトーの作った夕食を食べる母をみて


疲れているだろうにいっさい疲れたとは言わない

5年休みなく朝から夜まで働くとか超人の域だ

ゴブリンの角でしばらく過ごせる


2か月酒場で働いたらかあさんは朝と昼はやめて夜だけにするという提案をしたが無駄だと分かった

次は自分で稼げるようになったから、少しは楽に過ごしてくれるように頼んでいたがまあ無駄だった

今度は実入りのいい冒険者になったのに、心配で出かけれない作戦でやってみよう

ゴトーはこの時そう思っていた


母のスペイドは夜だけ出勤の提案を受け では夜だけはやめましょう

他はこれまで通りで余計な心配をせず自分の仕事をしなさいだそうだ

ゴトーにも自分にも厳しい母だ


翌日から休日の日課だった西北の酒場に向かう

朝から出発して西北の酒場に6:30につき朝の冒険者用の食事を作り始める

3人で手分けして寸胴14本作りつつ芋をふかしていく

寸胴は100kgが入るが、60kgしか入れない

寸胴は2つ積んでいき、余れば自宅に持ち帰る


討伐に向かう冒険者向けの長い期間なら80kgにして4本積みこむ

西北の酒場は農作業に向かい長くても2日分で人数は12-15人

これなら通常は寸胴2本だ


西北の酒場は周囲で大規模に食料生産をしていて、いたるところに農作業用の小屋がある

自宅に戻るより小屋に泊まって農作業を長い時間できるように2日分の食料を持っていく

先に書いたように農作業は12名から15名で行い3日目に戻ってくる


8時ごろになると北行きの冒険者が集まってきて11本予約分がなくなり馬車に積まれていく

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