第4話英雄と呼ばれる前の話 その4

戦争した国 レモニウム

自国 エルデバラン


登場人物

新人冒険者商人の ゴトー 15 

酒場の主人 モゲ

ミグロ 勇者 25

エフカ 大魔術師 28

ピロリ 回復 21

ドルマ 索敵 21

スペイド 母 39

学友エルス 15

ランドリー 先輩女性冒険者 ランクC 18

ケルトミラー 優秀な同期の卒業者16


【本文】

11本積み込むのが終わるころはだいたい9時頃

9時を過ぎると今度は近隣の朝の農作業者向けに、芋と寸胴で煮てある野菜スープをセットで出す

およそ30分ほど忙しいがそれが過ぎれば今度は昼食の用意だ

豚をさばいて下味をつけて焼いたものを鍋にいれ煮込む

人気の トン汁を作っておく

今日の定食は豚のヒレカツ定食なので作っておく


お昼になると昼から出発の冒険者と何日かぶりに戻ってくる冒険者でごった返す

冒険者向けの寸胴はここで無くなり、戻ってきた冒険者は昼間からお酒を飲む

お酒のつまみは別の担当者がやりゴトーは夜の下準備だ

スピードが勝負の戦場は昼の3時ごろまで続く

それを過ぎると夜の仕込みと次の朝の準備を2時間ほどして仕事終わりだ


6時前に出発しここまであまり休憩をとれていないが、これをずっとやってきた母

これに加え夜の仕事もこなして帰る、頭が上がらない


ここの北の酒場の主人 モゲ に夜だけの仕事に控えてくれるよう頼んでおく

5年間毎日休みなくだ、少しでも楽にさせたい

モゲは朝と昼で十分といっているが、母が少しでも家計の足しにしたいとずっと働き詰めだ

ゴトーは母が楽にならないと冒険者になった意味がないと繰り返しても無駄なので

心配で外に行けない作戦に切り替えるとモゲに話している

母が出勤してきたので引き継いで帰る


自宅に帰ってこれまで通りゴトーは母向けの食事を作っておく

昼食は勤務開始前に食べてもらうようにして少しでも楽をしてもらう

ゴトーは自分の夕食と母の朝食用の用意をして母の帰りを待つ


これを母が夜だけ出勤に折れるまで続ける

一度言い出したらなかなかうんとはいわないが、そのあたりもモゲに言ってある


16日たち神無月の13日、母がやっと折れて夜だけの出勤にしてくれた

昼も出るといって聞く耳がなかったが

朝は母を休ませる、そうじゃないとゴトーが冒険者として心配で動けないと連日言って来たかいがあった

その代わり夜は23時の最後まで働くといったので

21時で終わらんと心配で冒険に行けないといってみるが折れない


頑固者同士の根競べの開始だ

残念でしたね お母さん 頑固者比べでは負けませんよ


ゴトーがその場では折れて朝6:00から21:00まで働き母と同じ勤務にした

23:00閉店を待って母と一緒に帰る

これを8日 21日まで続けたら、やっと母が折れた

16:00から21:00厳守で北の酒場で周知してもらった

やっとこれで冒険に行ける、お互いなかなか頑固だ

この頑固な母を動かすにはそれ以上の頑固者にならないといけないと学んだ

クエストのほうがよっぽど簡単だ


霜月に入りもくろみ通り32%ほど値上がりしてところでゴブリンの角を売却する

冒険者組合はこうした金銭分配の仕事もする

手数料は払うがこういった分配で揉めるパーティーもある

事前に決まっていたが何人か割に合わないからとで変更もない話ではない

そういった連絡と調整も組合の仕事で依頼クエストの調査ランクを決定

人員の配置、国への報告、税金の支払いと仕事は多い

本来は新人冒険者の仕事だが、母の説得が難しいので西北の酒場に向かい西冒険者組合に行けそうもなかった


今回のゴブリンの角の分配は1/3だが予定より32%多い

その確認の通信をミグロさんとエフカさんにそれぞれ確認する

了解が取れれば商人から売れた時に分配金が入る

今回は不足していたのですぐに買取だった

即時入金、初給料 銀貨560枚

当座の生活費銀貨160枚をもらい他は貯金に回した

次のクエストの募集を見る


何度見直してもクエストボードにはやはりAランクはない

パーティーマッチングを依頼する

待合で待っているとすぐに連絡がある

通信結晶に出てみるとミグロさんパーティーの魔法剣士ドルマさんから南の森の調査依頼がある

ゴトーの初仕事の街道で魔物の実数調査と採集物調査だ

この間の角回収でよさそうだとの話をきいて誘ってみたとのことだった


出発は霜月の20日

この西冒険者組合に19日に集まるとの事なので、すぐに仕事を受けた

今回は南の森の調査依頼は収集系の先発調査だった

ドルマさんは収集系の仕事もしている

柵外の調査で次の柵内する場所の調査もやっていた

Aランクの仕事ではこういった誰かについていく仕事ぐらいしか仕事がない

少しでもクエストを受けてランクをCにあげないと自分だけで動けない

クエストボードにはCランク以上のものがほとんどで駆け出し冒険者が受けれるクエストはやはりない

領土の拡張で採集の仕事が増えているがそれもAランクの仕事では受けれない


ドルマさんとの調査の仕事が終わり、収集品調査もした

商人ゴトーの才能を発揮して予定外の収集品で、銀貨410枚ほど予定より多く稼いだ

エルスとの金儲け談義様様だ


空きの日数で他のクエスト募集にも応募してみる

次はアロエ採取の仕事があり返答待ちだ

返答はあったがもうアロエ採集は終わりごろで今回は見送るとの事

なかなかAランクでは仕事はない

結局霜月の19の仕事からはドルマさん以外の柵外の仕事はなく、実家近くの近隣農家の手伝いと、駆け出し冒険者らしく西と中央の冒険者組合の手伝いをして過ごした

商人として相場のチェックは欠かせないし、何か良い産物を作り儲けたいものだ


ゴトーは師走の19に中央冒険者組合にいく

といってもそれまではほぼ毎日冒険者の手伝いでアルボレナ中央の冒険者組合に来ている

新人らしいご用達のクエストボードへのクエスト貼り付け、冒険者の分配金の連絡等組合の仕事をしつつ顔を覚えてもらう


中央冒険者組合にはランドリーさんという秘書的な役割をする人物の下で働く

ゴトーと年齢はさして変わらないが、丁寧に教えてくれるので冒険者の基礎は彼女から教わった


西の冒険者組合は半笑いだったガンビラさんが収集系のスペシャリストで仕事が早く

ゴトーの出る幕があまりない


組合の仕事をしている師走の10日にエルスが遊びに来てくれた

今は兵士になり働いている

「ほぼ毎日訓練訓練訓練で足腰が立たないよ」と愚痴をこぼしていた

神無月にも来てくれていたが、その時は北の酒場で働いていて空振りだった


ゴトーは「勉強が終わったらまた勉強だよ エルス 成績はいわなくてもわかるな?」といっておく

エルスとの最下位争いは苛烈を極めていた

エルスは「落第勢の中ではトップ争いだ 期待しているぞ ゴトー」といって去っていった


エルスもゴトーも1年早く卒業しているので、優秀じゃないかという声が聞こえてきそうだ、断じて違う

商人の息子であるエルスは商人項目は優秀だ

本業の巡回警備に必要な習熟訓練をさぼり、各相場の確認をしてどうやったら儲かるかの議論で忙しかった

1年たとうが10年たとうが成績は最低限より上がる機会はない

卒業に必要な訓練と教練は必須項目の合格の認定をされたら、習熟は一切やらずに

次の卒業に必要な訓練、教練を受ける

こんなやり方で卒業だけ早くした

エルスは回復魔法の成績が常に最低で本当にぎりぎりだった

ゴトーは剣技がぎりぎりで剣では卒業できそうもなかったので槍と弓で合格した


中央の冒険者組合はほかの冒険者組合に追加して冒険者組合の仲介の仕事が追加されるが駆け出し冒険者ではそんな仕事は回ってこない

ゴトーのようなAランク冒険者は見たことがない偉い人たちで、教えてくれたのは

ランドリーという先輩女性冒険者だった

実働部隊ではなく4か所ある冒険者組合の割り振りの連絡が仕事と書けばわかってもらえると思う


さて師走の19日になった

夕方になり続々と集合する先輩冒険者と交代兵士たち

ゴトーから見ると40名の大捜索隊だが毎月1度このような周辺を巡回する

通称”索敵巡回”というものが行われる

索敵だけではなく実際に討伐も行う本格的なものだ


ゴトーは中央冒険者組合で受付をしつつ、翌日の出発の準備をしている

誘ってくれたドルマは16:00ごろ到着した

ドルマさんは索敵の先輩でCからDに上がったばかりだ

魔法剣士としても先輩で誘われたときはうれしかった

個人的な事情も知っていて話しぶりからも頼りになる


今回は西に向かい強敵との戦いもあるかもしれないので誘ってみた

今回のような索敵巡回はランクを上げれるし、新人冒険者には収集よりいい

大人数なので安全だし、なにより冒険者組合の仕事なので即時振り込みという好条件だ


ドルマさんも学校時代あまり成績が良くなく、両親は存命だが、父親が怪我を負い兵士として現地に立てず事務職になったといっていた

戦争の爪痕と痛みはいたるところに残っている


翌日になり朝から26台の馬車が出発する

西のアルボレナの境界までは半日で到着した

紛らわしいが西の南と西の西が 西の冒険者組合の管轄範囲

西の北と中央の北と東の北が 北の冒険者組合の管轄範囲

中央の南が南の冒険者組合の管轄範囲

東の南と東が東の冒険者組合だ


西の西には手ごわいオーガ、もっと手ごわいサイクロプス そして難敵のキマイラと超難敵のグリフォンがいる

オーガとサイクロプスは人間で何とかできるが、キマイラとグリフォンは逃げるしかない

近接武器の棍棒を持っているオーガとサイクロプス

武器はないが前の口から炎と冷気と上の顔から雷を使うキマイラ

蛇の尻尾には金縛りの効果がある

グリフォンは飛行でき上空から炎のブレスを吐いて攻撃する

馬の足では逃げれない 襲われたら死を覚悟しないといけない


馬車は索敵が一番外側 ゴトーは前から4台目で移動中

国外拠点は7か所あり馬車だと5日の距離だ

今回向かう国外拠点が最も西の果てだ


アルボレナの西国境から6時間西に馬車で走ると1つ目の国外拠点がある

ただ馬車に乗って拠点に入って、食料を兵士に配る

国外拠点1の食料で国外拠点2の食料を作る

何事もなく一日が終わり翌日は2の国外拠点に向かう

今度は前から3台目に移動だ

この日も異常はなく2日目を終わる

3,4,5と食事を配りつつ順に位置を変えつつ5日目で7つ目の”国外拠点7”に到着した


国外拠点=砦と思ってもらえればいい、対人間用ではなく対魔物対策専用の施設になる

乱戦になりやすい人間と違って人間が多数で魔物は少数だが非常に強い


他の違いはオーガとサイクロプスは遠距離武器の攻撃がないので人間は弓の攻撃が主な手段になる

当然人間用より堅固に作ってあり、備え付けの兵装もある

もっと強い魔物は魔物を引き連れて国外拠点に戻り、攻撃をして倒せればよし、倒せなければ拠点でやリすごす方針だ

オーガは4,5mで討伐できるが、サイクロプスは大きさが5,10,15mの3種類いる

5mならなんとかできるが10mと15mは基本砦までおびき寄せて討伐だ


本来47名だが今回は41名

魔物警戒の冒険者の索敵専用が24人 そのほかは交代の兵士15人と、何かあった時のための勇者、大魔術師、回復魔術師のそれぞれ2名づつ6名の47人が標準的な構成だ

今回は弓兵の交代が11人のため41人になっている


索敵だけでなく食料補給にも来たので24車両注8車両は砦の補給用だ

7か所目の砦の兵士の索敵は2日と短いながら一休みできる

通常補給はここの人員現在の96名全員で行っている

索敵してみるが近くに魔物はいない

来る途中オーガが見えていったん退避した以外魔物とも出会っていない

近隣の魔物も活発な活動ではない

いって帰るだけの簡単なお仕事 この時点ではそう思っていたし全員そう思っていた


到着すると懇親会を開き冒険者が御馳走をする

見回りは今回きた冒険者の索敵魔術師が行い兵士たちには休みになる

兵士の補給は基本的に兵士がやるが1カ月に一度の出張懇親会を開く

兵士の支給品は貯蔵に適したもので味もいまいちだし、水分を徹底的に省いた硬いものが多い

冒険者の補給は日持ちはしないが脂身の肉、芋もほかほかでバターと合う味付けにしている

スープも野菜たっぷり栄養満点 味はかなりおいしい

2日分しかないが、それでも兵士はつかの間の休息と美味しい食べ物を食べている


即時振り込みなのは兵士から直接お金が出ているからだ

兵士の移動も兼ねているので、交代の兵士15人はただ移動するよりおいしい食べ物と一緒に移動する

7か所の砦間の移動も兼ねているので、何人か兵士は入れ替わった


冒険者もいつもは時期がずれて入金、労力に見合わない収集より、運ぶだけで即収入の索敵巡回は人気が高くいつも埋まるのが早いとドルマから聞いた

一度参加すると次の索敵巡回には行けない

各国外拠点に月に一度しかない2日の休みを兼ねている


今回の5日目の国外拠点7は一番遠いため食料は大量に買い付け、途中の国外拠点で料理をしつつ運んでいる

次の出張懇親会は国外拠点6と国外拠点1になる


出張懇親会ではない通常の冒険者の補給は、砦の監視を冒険者が変わる2日間の兵士の休憩がないが、おいしい食べ物は供給する

これを楽しみにしている兵士は多い

基本的に兵士の休日は兵士の人員の移動と一緒に行われる


派遣されている兵士の中に学校を一緒に卒業したやつもいたが、エルスと違い1回同じクラスになっただけで顔見知り程度だ

挨拶はしておくが お前も兵士になったほうがいいぞと勧誘を受ける

安定しているし給金は支給されるし、確かに親切で言ってくれている

ゴトーは『「お前みたいに優秀だったら志願しなくてもこういう大変な部署でもやれるだろうが。。。。おれは自信はないよ』


成績優秀者でないとこういった危険な地域に配属されない

それにやつは卒業生の中でもかなり優秀だ 

卒業者80名中最高2位までなったことがある

既に英雄と呼んでいいレベルだ、名をケルトミラーという

出発の別れ際にまた会ったので『ケル―(愛称)の出世を楽しみにしているよ おれじゃ絶ー対ー無理だ』といって別れる


出発後軽くなった馬車23台で出発した<3台は拠点の更新用で置いてきた>

あと6日で戻れるがやはり柵外、オークが6体現れた

北の索敵からの連絡で順次回っていた指令塔の勇者が『迎え撃つ、総員用意』大きな声で叫ぶ

向かう時は補給するために向かう、基本的に討伐はしない


北の索敵はそのままで南にいる索敵が北側に移動する

ゴトーにも見えてくる6体のオーク

豚はおいしいが豚顔のオークははっきり言って嫌いだ

オーガではなくオークなので対処はそう難しくない

槍を主に使うが 魔法は使えない

オークロードは魔法を使うが今回はいない、オークソーサラーもいない、ただのオーク集団だ


魔法剣士のドルマとゴトーだけ勇者のもとに行く

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