第2話落ちこぼれ魔法剣士が英雄と呼ばれる前の話 その2

住んでいる町アルボレナ


登場人物

ゴトー 主人公 15魔法剣士

エルス学友 15

ミグロ 勇者 25

エフカ 大魔術師 28

ドルマ 索敵 21

ピロリ 回復 21

スペイド  母


【本文】

受付のガンビラの横6mの位置に通信結晶が置いてある

触ると通信の開始だ

通話相手はミグロ、、、、このあたりでは有名な勇者だ


ミグロ

『ゴトーくん?でいいかな?』

ゴトー

『ミグロさん初めまして ゴトーです』

ミグロ

『ゴブリンの討伐依頼を受けようと思っていたが、丁度索敵が都合が悪くてね 都合はどうだろう?』

『魔法剣士で索敵が得意だし、討伐ランクはBだが僕はFだ 連れていけるよ 初仕事にどうかな』

ゴトー

『喜んで行きます いつ集合でしょうか?』

ミグロ

『長月の10日だ 前日18:00までに組合近くの宿屋に入ってくれ』

ゴトー

『わかりました 9日の16:00ごろには入るようにします、 お誘いありがとうございました』

ミグロ

『こちらこそよろしく では』


通信が切れる

ゴトーの初仕事 南の森林に多くいるゴブリンの定期的な討伐だ

仕事が幸先よく決まったし自宅に帰って母に報告しておこう


東行の馬車を捕まえて一度 学校方面に戻る

20分ほど東に走れば自宅の分岐、そこで降りて徒歩で北へ向かう

30分歩いて自宅へ到着した


母はまだ帰っていない

父はもういない ゴトー10歳の時に戦役で亡くなった

給金は出て生活は安定するが招集で移動が多く、またよく訓練に出かけ家にいなかった

ゴトーは父親にあまり会えなかった


魔法剣士として兵隊に入ってもいいところ索敵係で実戦になればすぐに逃げきれず死にそうだ

どうしても索敵は戦場の前のほうにいる必要がある

剣技で何とかする勇者と比べ、逃げることを優先する索敵

中央の比較的安全なところは回復の魔術師、攻撃の魔術師がいる

その外側にいて索敵は前線の勇者のすぐ後ろだ

武力があっても索敵の苦手な兵士と冒険者はいる、、というか多い

魔物と対峙して自分で何とか出来る勇者と、できない索敵ではどちらが頼りになるかお分かりだろう


卒業祝いに豪勢な昼食を食べたのでまだお腹いっぱいだ

今晩の夕食と、翌日の朝食を作り、テーブルに並べて置く

あとは母の帰宅待ちだ


夜22時を過ぎて母が帰ってきた

ゴトー

『母さん 無事卒業して冒険者になってきました』

といって魔法剣士の卒業の魔石を見せる


母はスペイド 小柄だ

『ゴトーおめでとう すごいわね 魔法剣士で15歳で卒業なんて』


魔法剣士は通常16才で卒業だが1年早く15歳で卒業した

エルスも同様で1年飛び級をしている

魔法の習得は早かったとおもう

体のできないうちは剣術はやらず魔術から覚える

初級魔術の6歳から順調に魔法を覚えれた

初めに習った索敵が得意で、成長していくにつれ覚える魔法も増えると、だんだん成績が下がり最後の苦手の剣技は合格最低付近だ


ゴトー

『これを』

といって冒険者の魔石を見せる


母のスペイドは先ほどの酒場とは違い近くの西北の酒場で働いている

ゴトーも学校が休みの時はお邪魔していた

父親の死後、それまでの週2の勤務から毎日働きだして5年、休みなしで働いている

朝早くに出かけ夜にならないと帰らない

必死に働いて学校の費用を捻出してくれた

冒険者として初仕事も決まり少しは楽になる、、というかしてもらう


父が亡くなった10歳の戦争から夕食と翌日の朝食の用意はゴトーがしている

実際に食材購入していると相場によって価格が上下する

時期によっても価格が上下する、生産場所でも価格が上下する

その甲斐があって商人項目は優秀だった


母のスペイドは魔石を交互に見ていたがやがて

母スペイド

『お父さんが生きていたらぞ喜んだでしょう』

ゴトー

『そうですね 父のように勇敢ではありませんが何とか剣士はかろうじてついています』

スペイド

『そう 私ももっと頑張らなくてはね、息子には負けないようにしないと』


母スペイドはゴトーが学校卒業してもこれまでと変わらずに働くようだ

魔法学校の費用はもう稼がなくていいので、朝と昼だけやれば十分生活できる

週に2回休みも取れるだろう

ただそれが母スペイドの頭にはなさそうだ


母スペイドは酒場で朝から夜まで休みなしで働いている

これを説得して仕事を抑えてもらうことはできるだろうか?

これから説得する日々が続くのか 少し不安だ


この後はゴブリン退治に向かうまで学校で習った自己研鑽の訓練をして過ごした

いつもの食事の準備をして母の説得を試みている

連日朝と昼はもういいんじゃないかな?夜だけにしたらどう?

では朝と昼だけでもいいんじゃないかな?

この2つのパターンで説得してみたが母には全く効果がなかった

母を説得できずにとうとうゴブリン退治の前日になってしまった


相場の確認のため少し早く出かける

ゴブリン退治に必要なものは食料だ、おびき寄せるためとパーティー分と余分な食料を持っていく

料理は冒険者組合近くの市場で調理されたものを調達するが、今回はすでに用意してあるとの事で持っていかない

背中に槍を担ぎ旅支度をして出かける、まだお昼だが早めについて待っておこう


街道沿いに南に下って30分 西行の馬車が来たので乗って向かう

馬車で30分【 今 度 は 】間違えずに西冒険者組合に到着だ

冒険者組合前には馬車が4台ほど停車している

ゴトーは馬車の運搬人に声をかける


ゴトー

『こちらはミグロ様の馬車ですか?』


荷物を積んでいる輸送人は、ああ明日出発の勇者ミグロの馬車3台だと答える

確認したら冒険者組合で待っておこう、9日ぶりの冒険者組合だ


ミグロさんと初パーティーとは運がいい

この道10年のベテラン勇者

大魔術師のエフカさんと一緒に回ってこのあたりの討伐系では最も有名だ


目の前にはそのエフカさんがいる

本来は 索敵のドルマさん 回復のピロリさんも一緒だが別の用事で今回は参加しない

それにゴブリン退治でも目的はゴブリンの角の収集だ

葉月に生え合わる角が落ちるので角を収集して薪の着火に人間が利用している

今回は3人で行くことになった


それを聞いたのは目の前のエフカさんからだ

商人ゴトーは馬車の台数から計算して相場の確認はした


エフカ

『まあゴブリンも大したことはないし、前回討伐したから今回は角の収集だよ』

『ゴトー君 ゴブリンの角の相場は知っているかな』


ゴトー

『葉月で一斉に生え変わるので供給過多で今売却だとあまり稼げませんね』

『馬車3台分に乗る範囲で 銀貨500枚いけば良いところでしょう』

エフカ

『ドルマとピロリはオーガの討伐応援だ オーガ魔石はどうかな』


ゴトー

『オーガ魔石は品薄です、やはり強敵ということもありますが、最近ゴブリンが少なくオーガもあまりいませんでしたからね』

『葉月のゴブリンの増加で改善はします、魔石箱いっぱいで銀貨800枚といったところでしょう』

「魔石箱は36個入がひと箱」

エフカ

『気を悪くするだろうが「商人」は優秀そうだ』

『俺は冒険者組合には収集の時と税金支払いしか寄り付かないんだ』

『魔石の作業依頼が多くて組合にはあまり寄れないんだ』

『ミグロと一緒に回り、あとは魔石育ててれば生活は成り立つからな』

『ミグロは討伐と護衛で割と引っ張りだこで、冒険者組合には寄れない』

『ドルマが収集もやっているので南の森までは一番詳しいかな』

『ただ、アルボレナの組合には寄らず国境に住む商人任せだ、税金すら商人任せだからな』

『ピロリは住民の治療に回っていてこれまた商人任せだ』

『こういった時期や相場のことは私たちのパーティーは疎くてね』


ゴトー

『不得意な剣技、苦手な攻撃魔術、得意なのは商人「商人ゴトー」ですよ』

学校でもそれで通ってたしなー


そんな会話をしていると有名人 勇者ミグロが冒険者組合に入ってきた


エフカ

【おーいミグロこっちだ】


ミグロさんはフルプレートの鎧 金属のこすれる音をさせ歩いてくる

黒髪に精悍な顔 剣技は師範クラスが学びに来るほどだ

勇者といえばこのあたりではこのミグロさんだ


ミグロ

『エフカきていたか ゴトー君は君だね』

ゴトー

『今回お世話になります ゴトーです』

ミグロ

『ミグロだ よろしく頼む 角集めだ さして危険はない』

『エフカ 相場はどうだ?』


エフカ

『過剰気味で馬車3台で銀貨500枚いけばよいほうだとさ』

ミグロ

『それだけあればいいだろう』


ゴトー

『腐るものではないですし需要の多い寒い師走に売ったほうが儲かります』

『3台の馬車いっぱいで銀貨30%増しの520枚にはなるでしょう』

『保管倉庫は私の家の元馬小屋が空いていますよ』


ミグロ

『ほう、、、流石だゴトー 異色の魔法剣士のうわさは聞いていた』

『商人になりたがる魔法剣士がいるという噂だった』

『俺たちは持ち金には余裕がある ゴトー君に任せよう』


『おい 飯は食ったか?』


エフカ

『まだだ 待ってたよ ゴトー君もまだだろう』

『おごるよ 断るなよ先輩からのおごりは下心たっぷりだからな』

ゴトー

『はあ。。怖いですね でもおごられましょう』


早速誓いを破りラム酒という緊急時には消毒に使うものをすごく薄めて薄めて飲んだ

いい気分になるのは確かだが明日の予定もあるので早めに休むことにした


気持ちが高ぶっているのか、初冒険への不安なのか、宿屋のベットなのか何かよくわからないがすぐに寝れなかった

慣れないお酒のせい、お酒のせい、と考えていたら知らぬ間に寝ていた


明け方になると起きて今日の予定を確認する

今日は馬車での移動で南の国境まで向かう

朝の修練をやりひと汗かいておく

新人冒険者らしく宿を出て、、、、朝食のその前に


相場の確認だ!!


【しっかり確認】後、朝食を食べる

個人的に好きな芋バーグでもつまみながら先輩冒険者たちを待っておくとしよう


ゴトーは出発準備をしている

芋バーグを起きてきたミグロさんとエフカさんに渡す


ゴトー 『おごりのお返しです』

エフカさんは馬車の中を見て 『もらうわ』

ミグロさんはゴトーに『ありがとう 朝食代浮いたよ』

この芋バーグは冷えてもサクサクとした食感で、今朝厨房の中を手伝ってゴトーが作ったものだ

これまで学校が休みの日に行っていた自宅近くの西北酒場で酒場働いていて、寸胴8本ほど仕込む生活をしていた

馬の食事に出かけ、馬車に補給用の水を汲んでおいた

【商人】の朝は早いのだ


準備万端で出発する、南の森にゴブリンの角拾いの旅だ

先頭は勇者ミグロさん 次にゴトー 大魔術師エフカさんの順で進む

エフカさんとミグロさんの馬車にはゴブリンの角輸送用の貨物専用台車をつないでいる

馬の休憩がてら1時間おきに停車しアルボレナの南の町はずれを目指す

ゴトーの馬車は食料の寸胴が重くあまり早く進めない

予定は4時間だがもう少しかかりそうだ


お昼は寸胴にはいっているスープと主食の芋だ

町はずれの柵はまだ見えていない

アルボレナは4万人の町で土地は30km四方ほどある

ゴブリンは南の山近くに住むため、柵の外にでて馬車で4日ほどかかる

お昼を簡単に済ませて午後の移動だ

馬も人間が歩くよりは早い程度で昼食休憩しても速度は変わらない

それでも町はずれまで1日もかからない

今日の宿泊所が見えてきた


まだ日は高いが町と外の境界なのでここで宿泊だ

ゴトーの運んできた馬車は柵近くの近隣住民用のようだ

寸胴3本を南の境界まで運んだことになる

ミグロさんが衛視のウズリーさんに挨拶をして、ゴトーが運んできた馬車ごと渡した

これでゴトーのお仕事は1回目が終了した


この後ウズリーさんから『酒場まで運んでおいてくれ』ということで酒場まで運んで

馬車から3つとも寸胴を下ろし、衛視のウズリーさんまで戻って来た

その後馬車は東に向かっていった


酒場の出来事を書いておこう

酒場の中に寸胴3本を運びこんだ、昼間から少数がお酒を飲み、大半の人間が急いで寸胴から食事をする

西北の酒場と全く同じだ

午後からの冒険者と何日かぶりに帰ってくる冒険者でごった返している


『兄ちゃんが運んできたのかい?』

待合のほうから野太い声がする

ゴトー 『ええ これが初仕事です』

『おお そうか ありがとう』

『初仕事なら 一肌脱いどくか おまえら』

おう おう 

『楽しみにしときな』


何か知らないが一肌脱いでくれて楽しみにしておけばよいようだ



ひと段落すると

『ここが初めてなら国境を少し散歩しときな』

『アルボレナの中と外はかなり違うからな』

『気を付けるんだよ 中と外は違うから』

『頑張りなよ、でも頑張りすぎるなよ』、


全員から気をつけろと言われているので、気を付けたほうがいいというのはわかった

それがなにかわからいのだけれど?

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