第12話 心の中のマケルシカ 前編


 復習じゃ無いが、二年前の僕のステータスはこうだった。


名前:メディウス・アーネスハイド


身分:元男爵家、現騎士の息子

レベル:1


HP 002 MP 0001

STR 001 ATK 不明

DEF 051 AGI 001

LUK 不明 INT 0005

CHR 00001



EXP 0


加護: 便利眼、マガジン、イマジン、口寄せ、アニメ、ズルXX、X間XX、XXX、X憶X、速読、X生X力、不明、その他


魔法属性:8


勇者確立:対象外

英雄適合率:なし


 一目見れば分かることだが、全くと言っていいほど元一級剣士と元Aランク冒険者の息子とは言えない。もしかして、僕を授かる時の彼等のステータスが直接僕に影響を及ぼすのだろうか?


 例えばだけど、三級剣士とCかDランクまで落ちていると考えると、その影響が僕に反映され、それが誕生する子どもに大きく影響するとか?



「メディウスどうした?」


「いえ」


「何か難しい顔をしておるの」


「あっ、それは鑑定結果の紙じゃないですか!?」


「はい、二年前王国から来られた鑑定士団の方に鑑定して貰ったものです」


「それは、随分仰々しいのう」


「ジルスさん、ノラン様は元とは言え、様です。王国から来るのは当然かと」


「あいや、すまん」



 そう言うと、バツの悪そうな顔を彼はした。



「いえ、大丈夫ですよ。それに王国から来たのは別の理由が有ります。私が男爵だったからでは有りません」


「というと?」


「今日は息子の誕生日で有り、そしてもう一つの日でも有ります。年月日が経ち、こう平和な毎日を過ごしていると忘れてしまうものですが」



 そう言うと、父は少し遠くを見詰める様にしてから目を閉じた。



「勇者ルーザー・マケルシカナイト様の命日ですね!?」



 突然大事なことを想い出した様にメルさんが叫んだあと、ジルスさんも右拳で左手の平を叩いた。



「そうじゃ、儂もすっかり忘れておったわ」


「この町オートナーリアも辺境の場所、魔王軍との戦いでは被害はあまりないため、忘れるのも早いでしょう。王国は普通に今日彼の追悼式典を行っていることでしょう」


「そうか、それじゃあ王国から鑑定団が来られたのは」


「そうです。息子が勇者の生まれ変わりかどうか? それを調べに来ました。普通なら、私達の住んで居る辺境の町イスカに来ることは無いでしょう」


「それで、メディウス様は?」


「勇者の生まれ変わりじゃ有りませんでしたよ、私達にとってはとても喜ばしい結果ですがね」


「どれどれ、ちょっと儂に見せて貰っても良いかの?」


「はい、どうぞジルスさん」


「済まん、何と言ったら良いか」


「私にも見せて貰っていいですか?」


「はい、どうぞ」


「初めてみました。勇者の確立のみならず、英雄適合率さえ無い方は。あっ、すいません(汗)」



 バツが悪そうな顔をすると、如何にも作りましたと言う笑顔で微笑みながらメディウスに紙を返した。



「あっ、でも!?」



 突然歩を止めると、何かを思い出した様に突然声をだしたので、皆が彼女の方へ振り返った。



「なんじゃ、イキナリ?」


「いえ、少し書かれている内容が気になったんです。ほら、此処です」



 そう言うと、彼女は鑑定書に記されている加護の部分を指でさした。



「何じゃこりゃ!? さっきはさっと見たから気付かんかったが、物凄い量の加護じゃの~~」


「そうなんですよ。私でも加護は二つしか有りません。それに、英雄になられる様な凄い方でも、加護は五つ有るか無いかじゃないですか」


「四つ有るだけでも凄いのに、物凄い数じゃのぉ~~」



 そう感心した表情をしながら、彼は短く太い指をぎこちなく曲げながら、数を数えた。



「全部で十一個もあるわい」


「十二個ですよ、ジルスさん。もぉ~~相変わらず数字が弱いですね~~」


「面目ないわい」


「それより、その他ってどういう事でしょうか? まるでこれから増えそうな感じに見えますね」


「これ以上増えるのか!? 凄いのぉ~~」


「そうなんですか?」



 僕は加護の多さに皆が驚いていたので、思わず本当に凄い事なのか聞いたところ、あの勇者でさえ加護は七つだったと言われているらしい。しかし、これは王国内のみで、秘匿の情報のため誰も真実は知らない。王国に仕えていた父様でさえ、勇者様の鑑定結果は知らないと言う。


 加護の多さを聴いてすっかり得意げになっていたのだが、次のジルスさんの一言で落ち込み、メルさんの追加の一言で一気に奈落へと突き落とされた。



「それにしても、見た事も聴いた事も無い加護ばかりじゃのぉ~~」


「確かに、この世界を形成すると言われている、六つの要素が一つも有りませんものね。あっ……」


「メルは地雷を踏みすぎじゃな」


「そういう、ジルスさんだって」


「いや、儂は見た事が無いと言っただけじゃぞ。ノラン殿はこの中の加護で何かご存じか?」


「いや、残念ながら私も一度も見た事が無いものだ。しかし、私も妻も気にしていないよ。息子が戦いの場に引き込まれる確率が無くて、本当に私達は喜んでいるんだ」


「父上~~」


「泣くなメディウス、父さんや母さんと同じ人生を歩む必要はない。イスカの町で平和にのんびり暮らせばいいんだ」



 そう言うと、彼は息子の肩に優しく手を置いた。彼の手から伝わる温かな熱は、まるで彼の優しさそのものだった。本当に息子に対して、ただ元気に大きくなれば良いという事を伝えているかの様で有り、その想いが伝わりメディウスはとても嬉しく、今度は違う涙を流した。



「メディウス」


「父様、違うんです。今流れているのは嬉しい方です」


「そうか、なら良いのだが」


「「ホッ」」



 袖で拭おうとしたところ、メルさんが白い布を差し出してくれたので、お言葉に甘えて使わせてもらった。涙が止まったので、頂いた布を顔から外そうとしたところで、突然僕の身体が急にふわっと宙に浮いた。



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