第4話 メディウスは平和な田舎町で生まれました オイ!?
「此処は何処だ?」
何かやけに煩い、ワンワンワン犬みたいに泣きやがる声で俺は目覚めた。
「生まれましたよ、元気な男の子です」
意味の分からない会話が聞こえると、俺は突然巨大な手に持ち上げられた。
(一体どうなってやがる? 俺をこれからどうする気だ?)
(それにしてもさっきからチビの鳴き声でやかましい)
(誰か黙らせろ、このクソガキを!?)
俺は巨人に運ばれると、これまた大きな女の顔が見えた。コイツは誰だ? デカいが美人じゃ~~ね~~か。中々イイ女だ。でも、俺よりも大分デカいのが問題だ。俺を軽々持ち上げる程力も半端ね~~。そう思っていたところ、また何処かに移動させられた。
温かなぬくもりを感じる。
良くは見えないが、ゆっくりと肌色の柔らかな地面に置かれた。そこは温かく、そして何か安らぐ気分にさせられた。それにしても、まだ耳元で若干ギャアギャアピーピーと泣いてやがる。まあ、さっきよりも大分静かになって来たのだが。
(いい加減に黙らないと、ぬっ殺すぞ!?)
「かっわいい」
「ねえ、貴方名前は? 決めたんでしょ?」
「ああ、もちろんさ。この子の名前は男の子だから、メディウスだ」
(そうだ、俺の名前はメディウスだ。何で男の巨人は俺の名を?)
(他は何を言ってるかサッパリだが、俺の名前を呼んだのは確かだ)
それにしても視界がまだボヤボヤしてやがる。何で見えね〜〜んだちくしょう。一体マジどうなってやがる。さっきは何かあったかくて気持ちいいと思っていたが、何か段々と蒸し暑くなって来たのは気のせいだろうか?
(長居は無用だ、此処を離れよう)
「コォ~~ラ、メディウスじっとして」
「どうした?」
「この子凄く元気なのか、もうハイハイみたいな動きしてるのよ」
「ほぉ~~それは凄いな」
逃げようともがいたら腕でプレスされるのを感じた。まずい、さっきの女に俺は羽交い絞めをされている。このままでは、俺は潰されるかもしれない。
「この子本当に元気があるわ、まるでアナタと大違い」
「それを言うなよ、でも良い事だよ、元気なのは」
「ええ、そうねノラン」
巨人がさっきから、ワッワッキャッキャッと言っていやがる。何がそんなに楽しいんだ。俺は女から逃げようとすればする程、腕で強く抑えつけられる。もがけばもがくほど身体は暑くなり、また耳元で傍にいるガキがヒートアップしだした。
鼓膜が破れそうな程ギャン泣きを始めやがった。勘弁して欲しい。
「メディウス、一体どうしたんだ?」
「どうしたのかしら?」
「奥様、お子様はお腹が空いているのでは? ないでしょうか?」
「ああ、そうかも!?」
「それだ!?」
暑さと痛みと耳障りな音が俺を苦しめる。
酸欠になりそうだ、思わず大きく口を開く事にした。
!?
呼吸をしようとした瞬間何者かに口を塞がれた。
マズイ、息が・・・・・・
目覚めたらイキナリ巨人の世界に居て、俺は知らない女の巨人にプレスをされ、挙句の果てに口を塞がれた。
俺は目覚めてスグに死ぬ運命なのだろうか?
口の中で何かプニプニした物が当たる。俺はそれを舌で確かめてみる。
「ウッ、ウ~~ン」
急に巨人の女が高くて艶のある声をあげた。
「どうした? ミランダ!? 急に色っぽい声を出して」
「奥様、はしたな過ぎます」
「だってこの子が急に私のを」
もうダメだ。我慢の限界だ。これ以上呼吸が出来ないと流石の俺様でもヤバイ。俺はありったけの力を込めて、プニョプニョを咥えながら吸い込んだ。
(何だコレ? 空気じゃ無くて・・・・・・液体が・・・・・・)
肺に入ったら一貫の終わりだ。このままでは、俺は間違い無く死ぬ。
マズイ・・・・・・美味い!?
美味いぞこの液体、甘いし何か薄口のミルクの様な味わいがする。
しかも知らない間に俺の傍に居た煩いガキの声も止んでいるじゃねーーか、丁度腹も減ったし、煩いガキの声も止んだし、一石二鳥だ。
「貴方、この子ちゃんと私の飲んでるわ」
「良かったな〜〜メディウス、呑んで早く大きくなって、パパにお母さんのオッパイを返してくれよ」
「もう、貴方!? 何言っているのよ子どもに向かって~~」
もう飲めない。
満足だ。
何だろう? 今度は急に瞼が重くなって来やがった。
ちくしょう、油断した。
どうやら、あのミルクみたいな飲み物には睡眠薬か何かが入って居たらしい。俺はこのまま巨人に喰われるのだろうか?
「メディウス寝ちゃったわ、お腹が一杯になったのかしら」
「さっきまで、大きな声で泣き叫んでたのが嘘みたいだな」
「ええ、でも可愛いのは変わりないわ」
「ああ、俺達の大切な子だからな」
「でも………」
「どうしたミランダ?」
「何故、この子はこんな時代に生まれて来たのかしら?」
「そうだな、よりによってこの年の……」
━━勇者が消えてからちょうど49日目に
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