第3話 裏世界へ 19 ―弊害―
19
バラバラに逃げて、一時は《魔女の子供》に捕まらずに済んだ剛達だが、何事にも100%の成功はない。次の一手を起こさなければ、一時の成功には必ず綻びが生まれるもの。
彼らにとっての次の一手になり得るものは、ドアノブの発見であったが、探しても探しても、ドアノブは何日経っても見付からなかった。
そして、次第に《魔女の子供》に捕まりそうになってしまう者が出てしまった。
変身を解かずにガキカイドウであり続けた優は、仲間達を守りたい一心で街中を走り回り、ビルからビルへ跳び周り続け、耳を澄ませ、目を凝らして、《魔女の子供》に見付かってしまった仲間を発見すると、彼ら彼女らを助け続けた。
だが……ここで、バラバラに逃げる策を取ったが為に起こる弊害が露呈し始める。
―――――
「エイッ!! ……ヨシッ、これでOK! さぁ、藤原さん逃げて!!」
「ありがとう、優くん!!」
ビルからビルへ跳び回っていたカイドウは、《魔女の子供》に捕まりそうになっていた藤原を発見した。
発見したらすぐに動く。カイドウは素早く地上に降り立つと、藤原を追い掛ける子供の前に立ち塞がってハンマーをフルスイング――子供を夜空に向かってブッ飛ばした。
「ふぅ……なんとかかんとかぁ」
その場から走っていく藤原の姿を見て、カイドウは一安心。
だが、その直後……
「キャーー!!」
女性の叫び声が聞こえてきた。
「ん? この声は旭川さんか……う~んと、あっちか!!」
カイドウは急いで旭川の声がした方向へと走った。
「う~ん……それにしても立て続けだなぁ!! 困っちゃうなぁ!! 体が一個じゃ足りないよ!!」
そうなんだ。仲間達のピンチは立て続けに起きていた。
カイドウは藤原を助ける前には畠山を助けたし、畠山を助ける前には小山を助けた。
それも、仲間達はバラバラに逃げたのだから襲われる場所もバラバラだった。
南の次は北、北の次は西、西の次は東……という様に。
一難去ってまた一難が続いていた。
これが、バラバラに逃げる策を取った事で起こった弊害の一つ。そして、弊害はもう一つある。
「はぁ……こんな風に、あっち行ったりこっち行ったりを続けていても、いつまで経っても防戦一方だ。全部が後手後手……本当なら、みんながピンチになる前に助けてあげたいのに!」
もう一つの弊害は、カイドウが状況の俯瞰を出来なくなってしまった事。
カイドウは本当なら、仲間達をそれこそ高い場所から見守って、それと平行し《魔女の子供》の行動も把握して、子供が仲間に近付きそうになれば、その子供をブッ飛ばして仲間から遠ざける、そして自分は再び定位置に戻る、そしてまた仲間達を見守る、こんな作戦を取りたかった。
しかし、仲間達の行動する場所がバラバラになってしまった事で、仲間達の居場所を知る事すら出来ずにいた。
勿論、カイドウもバラバラになった仲間達の居場所を探ろうとはした。
しかし、《魔女の子供》に捕まりそうになる仲間が続出してしまったが為に、それが出来ていなかった。
助けては逃がし、そしてまた別の場所へ行き助ける、そしてまた別の場所へ……この繰り返しが状況の俯瞰を難しいものにしてしまっていたのだ。
「金城くんや剛くんは大丈夫なのかな……まだ彼らの叫び声は聞いてないよ。聞いてないって事は安全なのかな? まさか捕まってはいないよね? もし、ピンチになったら絶対に叫んでくれよ! 大きな声で僕を呼んでくれ!!」
カイドウは願いを独り言に乗せて叫んだ。
……………
……………………しかし、
たった今、カイドウが駆け抜けた大通りのその近くで、叫ばずその反対に、息を潜めて隠れる者がいた。
それは、剛。
剛は《魔女の子供》に見付かり、ピンチを迎えていた。
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