ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!!~世界が滅びる未来を知った五人の少年少女はヒーローになる約束をした~
第1話 「ズーンッ!」からの「バイーンッ!!」からの「ギューンッ!!!」 11 ―スケスケ男撃退作戦―
第1話 「ズーンッ!」からの「バイーンッ!!」からの「ギューンッ!!!」 11 ―スケスケ男撃退作戦―
11
翌日の深夜、英雄達は夢が発案した『スケスケ男撃退作戦』を開始する為に本郷に集まっていた。
「黄島らしい大胆で面白い作戦だ。正義、成功させる為にも気合い入れて行くぞ……ってオイ! お前、何をボーッとした顔をしているんだ。昨日から何か変だぞ」
日付が変わってから徐々に人気が無くなってきた本郷の中心街に立つ勇気は、隣に立つ正義の"ボーッとした顔"に気が付いて、その肩を小突いた。
「え? あっ……あぁ! いや……ごめん!」
小突かれた正義は"ボーッとした顔"から"ハッとした顔"へと変わった。
「はぁ……『ごめん!』じゃないだろ、集中しろ。何か考え事でもしているのか?」
勇気は正義の右手がもぞもぞと頭を搔きむしっているのを見てそう言った。
勇気は正義と長い付き合いだ。正義の癖をよく知っているのだ。
「あっ……いや、考えてるつーか、何か違和感がさ」
「違和感? 何にだ?」
勇気は首を傾げる。
「いや……あのさ」
勇気の問いに、正義は一旦頭を搔く仕草を止めて『違和感』のその訳を答えようとした。
「昨日さ、俺、お前に言おうとしたよな? 初めて俺達が白いモヤモヤを見た時って……」
「ちょっと……静かにしてよ」
……が、その会話を愛が止めてしまった。
「何を二人でごちゃごちゃ喋ってるの? もうすぐ作戦開始だよ? 集中してよ……」
「そうだよ! あいちんの言う通り、二人とも集中して! この作戦には私のチャラが懸かってるんだから!」
愛に続いて、夢も勇気と正義を責めた。
女性陣二人は男二人がふざけていると思ったのか、眉間に皺を寄せたその顔が『真面目にやれよ……』と言っている。
「いや……俺は集中してるつもりだ。正義が」
……と、勇気は反論するも
「あっ! もう一時になる! 皆、"変身"の時間だよ! ゆきぃもギッチョンも集中してよね! 絶対集中だからね!! さぁ、行くよ!!」
その反論は聞かれる事もなく、作戦開始の時間が来てしまった……
―――――
夢が号令をかけると、英雄達は一斉にビルの物陰へと走った。そして、辺りに誰も居ない事を確認すると、英雄達は変身する。
その変身は夢の能力である"黄色い光"を浴びた変身だ。
因みに、ボッズー曰くこの夢の能力の名前は《ドリッチフォーゼ》というらしい。
英雄達がドリッチフォーゼを使って変身した姿は、髪が長く、目のクリクリとした、身長が150cm台の"小動物っぽい女性"の姿だった。
この姿は、夢が聞き込み調査で調べ上げた、"柏木に狙われそうな外見の女性"の姿である。
『正にあいちんって感じだよね。今日皆が仕掛けた罠にスケスケ男が引っ掛かったのも、あいちんが好みの見た目だったからだと思うんだ!』
昨晩、作戦の内容を語った時に夢はそう言っていた――対する愛は、『キモ……』と一言返しただけだったが。
その為、愛はほんの少し顔を変えただけで殆ど見た目の変わらない変身だったが、正義達は大きくその姿を変えた。――それから、姿を変えた英雄達は本郷の中を、東に西に南に北にと散らばっていく。
夢が調べ上げたのは"柏木に狙われそうな外見の女性"だけではない。"現れそうな場所"もそうだった。
その場所は、昨日柏木が現れた公園の近くと、本郷五丁目へと繋がるガードの近くと、24時間営業のスーパーマーケットの近くと、勇気が"トレンチコートの男"=夢の情報を教えてもらったスナックの近くの四ヶ所。
『スケスケ男はこれのどれかの場所に、人気の少なくなった深夜一時から二時までの間に現れるんだ。現れる時間を特定出来るまでに時間がかかったけど、特定出来てからは二日連続で会えてるからほぼ確だよ!』
夢は自信満々に言った。
この言葉が真実であったと分かったのは、英雄達が散らばってから三十分後の事……
「現れただボズよ……」
ボッズーの声が聞こえた。
現在のボッズーは昨日と同様に40階建てのマンションの屋上にいる。その場所から英雄達四人の誰の近くに柏木が現れるのか《ミルミルミルネモード》を使って監視しているのだ。
そんなボッズーが『現れた……』と言ったのだ。
誰の近くに現れたのか、英雄達に緊張感が走る。
「お前の後ろだボズよ……」
誰の後ろなのか……それは……
「正義、お前の後ろだボズ」
「俺か……」
正義だ。
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