第8話 彼女の声はいつも心に届いてる 3 ―彼女の声はいつも心に届いてる―

 3


 ― 先輩、元気にしてますか? 私は元気です! 今日から山下が営業再開らしいですよ……って、きっと見守っててくれているだろうから、いちいちこんな報告はいらないですよね?


 ― 私は果穂と瑠璃と遊びに行くつもりです。せっちゃんと勇気くんからも「一緒に行こう」って誘われたんだけど、元々果穂と瑠璃とは約束があったし女同士の方が楽しいから断っちゃいました


 ― それと、山下だけじゃなくて来週からはピカリマートの営業も再開されるらしいですよ…………でも、こうしてドンドン町が元通りになっていくと「何でここに先輩は居ないんだろう……」って思っちゃったり何かしちゃったりして、落ち込んじゃったり寂しくなっちゃったりもしちゃう時もあります……


 ― けど、そんな時は友達といっぱい話したり、音楽を聴いたり、ご飯をいっぱい食べたりして元気になるように努めてます! 果穂達とは今度シーかランドに行こうって約束もしてます。楽しみです!! いつか私がそっちに行く時にはいっぱい想い出話を持っていきますからね! お楽しみに!


 ― あっ、勿論それは私がお婆ちゃんになってからです! それまでは長生きしますよ! 果穂も瑠璃もみんなみんな! だって、絶っっっっっ対に《王に選ばれし民》を私は倒すから! 世界の平和は私が守ります! 見守ってて下さいね!! あっ、たまには幽霊になって助けに来てくれても良いんですよ! なんてね……



 ……………



 …………………。



「………」


 愛は瞼を開いた。


 瞼を開くと、その先には青空が広がっている。


「あっ……また泣いちゃった」


 愛は、空に向かって話し掛けていたんだ。


「でも、誰もいないし……一人の涙は許して下さい」


 大空の先に天国があると信じて。


「ほら、言ったでしょ? たまに寂しくなるって。今がその時ですよ! でも、メソメソじゃないんで、またすぐに元気になるんで!」


 愛は嘘をついてない。だって、彼女との想い出はいっぱいあるから。いつだって目蓋を閉じて想い出せば、いつだって会えるから。今だって彼女は見守っていてくれていると愛は知っているから。だから、たまに泣いて、たまに寂しくなって、そして愛はまた元気になる。


「そっちも元気でいて下さいね。って言われなくてもそうしてそう……ふふっ! それじゃあ、先輩!!」


 そして、愛は言うんだ。

 別れの言葉なんていらないから。『バイバイね!』なんていらないから。だって、バイバイじゃないから。


「またね!!!」


 ………と。大きな笑顔を大空に向けて。



 ……………



 ……………………愛の頬に流れた涙は、優しく吹いた風がぬぐっていった。頑張れよ……と、囁きながら。




 第三章、第8話「彼女の声はいつも心に届いてる」 完


 第三章『愛の英雄の誓い 編』 完


 ―――――


 第三章を最後までお読みいただき誠にありがとうございます。これにて『愛の英雄の誓い 編』は完結となります。

 ガキアイシン達は輝ヶ丘を救えました。しかし、失ったものは大きい。やはり、三人では足りない。英雄は五人でなければならない……



 次回は第四章……題して、




『五人の英雄 編』




 世界を救う為、英雄は一つになります!

 五つの心を一つに集め、世界を救え少年少女達よ……



 

 お楽しみにッッッッッ!!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る