第8話 彼女の声はいつも心に届いてる 2 ―正義の決意―

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「俺達はやっぱり五人じゃないと……」


 正義は山下を出てて大木へと向かう道中、後ろを歩く勇気に向かってそう言った。


「五人……黄島と緑川が必要って事か」


「あぁ、俺達は真田さんの事を忘れちゃいけない。いや、デカギライにやられた人達の事も………犠牲者が出る事を当たり前に思っちゃいけないんだ。そして、犠牲になった人のご家族の顔も、忘れちゃ……俺は、真田さんの死を伝えた時のお母さんや弟くん達の顔が忘れられない……」


「最後まで信じてくれなかったな。『嘘を言わないで……私の娘は死んでません』……そう言って、あの人は」


「泣いていた。認めたくなかったんだ。そりゃそうだよ。昨日まで元気だった家族にもう会えないなんて……そんな酷い事あるかよ。死んだなんて……そんなの、あるかよ……」


 正義は拳を強く握っていた。悔しそうに顔をしかめて。


「もしも……もしも……って、ずっと考えてるんだ。もしも、あぁしてたら救えてた命だったかも……こうしてたら救えてた命だったかも……って。でも、そんな風に考えてる時点でダメなんだ!『もしも』も『こうしてたら』もいらない……全部"本当"にしないと。その為にはもっと仲間が必要だ」


「そうだな……今の俺達には、力も知恵も不足しているのかもしれない」


「だから……次こそ必ず夢と優を引き入れる」


「だが、いつまで経っても来ない二人だ。もうやる気が無いのかもしれないぞ」


「いや……そんな事ない」


 勇気の言葉を正義は否定する。


「あの二人は世界がピンチなのにやる気を無くす奴等じゃない。何か理由があるんだ。遅れてるのも来ないのも何か理由が。だから俺がその理由を排除する……」


「頑固にも、絶対か?」


「あぁ……」


 正義は静かに頷いた。


「絶対の絶対の絶対だ……」


「そうか……それじゃあ、その話は桃井にもした方が良いな。ん? あれは……噂をすれば桃井じゃないか?」


 勇気は前方を指差した。


「え? あっ、本当だ。今日は友達と遊ぶって言ってたよな?」


 正義は不思議そうに愛を見た。


「あれは、何してんだ??」


 愛は一人で大木の下に座って、瞼を閉じて空に顔を向けている。

 その顔は微笑んでいて楽しそうだ。


「森林浴にしては何やらブツブツと呟いているが……」


「うん……でも楽しそうだ。幸せって感じ。なぁ勇気、やっぱ大木に行くのはまた後でにしようぜ。何か邪魔しちゃ悪ぃ気がする!」


「ま……そうだな。きっと瞑想でもしてるんだろ。桃井は気性が荒いからな。精神修行だ」


 勇気は悪魔の笑顔でニヤリと笑った。


「へへっ! 瞑想か! 俺なんか一分で寝れる自信があるぜ!」


「いや、秒も持たないだろ」


「はぁあ? そんな事ねぇよ」


「あるだろ」


「ねぇ」


「あるな……」


「ねぇ……」

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