第7話 バイバイね…… 31 ―ふたつにひとつ―

 31


「嫌だ……嫌だ……」


 アイシンは頭を振り、繰り返し繰り返し……言い続ける。


 真田萌音の死が近いと知った彼女は、地面に崩れる様に座り、抱えた頭を振り続けている。


「嫌だ……嫌だ……」


 と呟いて。


「どちらかを選べなんて……そんなの無理だよ……」


 でも、彼女はただ単に真実を受け入れたくなくて『嫌だ……嫌だ……』と頭を振っていたのではない。彼女はずっと考えていた。真田萌音を救う方法を。


 だが、行き着いた答えは残酷なものだった。



 一人を見捨てて大勢を救うのか……


 それとも大勢を見捨てて、一人を救うのか……



 迫られた選択に彼女は頭を振る。『どちらの答えも選びたくない……』という思いで……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る