第7話 バイバイね…… 27 ―87回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ?―

 27


 絶望と希望は相互関係にある。

 希望の光が明るければ明るい程に、絶望が顔を覗かせた瞬間、渇れ果てぬ涙や枯れても尚止まらぬ叫びが、希望を持ってしまった者に襲い掛かってくる…………神は次に、アイシンに絶望を与える。


 それは、本当の英雄になる為の試練か。それとも、ただの神の遊びか。


 どちらなのか決めるのは、アイシン自身………


 ―――――


「うん! それじゃあ、今から使い方を教えるボズね!」


 ボッズーが喋り出そうした瞬間、



「ギィーーーーーーェーーーーーーー!!!!」



 突然、ホムラギツネが暴れ出した。


「うわッ!!」


「何だ……急にッ!!」


 その暴れ方は尋常ではない。

 暫くの間のホムラギツネは、火柱の尾を作らなければ火の玉を吐く事もなかった。しかし、慟哭が如き吠え声をあげたかと思うと……


「また火柱みたいな尻尾だッ!!」


 火柱の尾を作り、それを振り回し始めた。


「ク……クソッ!! 今までよりも動きが速い!! こ……これじゃいつまでも避けれない!! その内当たっちまう!!!」


 セイギは必死に避けるが、それは体をのけ反らせてではなく、跳び上がってだ。しかも火柱の尾を振り回す速度は速くなっている。回避は更に困難になり、攻撃を受けた場合を考えると、その威力は更に強くなっている事だろう。


「何故だ突然!! これではレーザーでは太刀打ち出来ない!!」


 ユウシャは攻撃の手段をレーザーから光弾に変えた。しかし、


「ギィェ!!」


 ホムラギツネはユウシャが二丁拳銃の銃口を並べ始めるとユウシャの方にも火柱の尾を振った。


「何ッ!! 光弾を作らせないつもりか!!」


 ユウシャは避ける為に翔ぶ、


「ちくしょう!! 何なんだ急にッ!!」


 セイギもそうだ。ユウシャの光弾の生成を邪魔する為に振られた火柱の尾をギリギリの所で避ける。だが、ジャンプして着地した瞬間に、


「あッ!!」


 右から来た火柱の尾に薙ぎ払われてしまった。


「うわッ!!」


 ユウシャも同じく……二人は共に、瓦礫になった輝ヶ丘高校に全身を強くぶつけてしまった。


「せっちゃん!! 勇気くん!!」


 ホムラギツネが大暴れを始めてセイギとユウシャが薙ぎ払われるまでは僅かな一瞬……アイシンは驚きと共に見ている事しか出来なかった。


「ホムラギツネ……いや、アイシンの先輩は、野性的に見えるけど、まだ自分の意思を持っているみたいだなボズ! きっと、俺とアイシンの会話を聞いたんだ。自分の作戦を邪魔されない為に温存してた力を出してきたんだボズ!!」


 ボッズーはホムラギツネの突然の大暴れをそう解釈した。だからこそ、ボッズーは言う。


「アイシン、急いで取り掛かるんだボズ! セイギとユウシャに加勢する為にも、キュアリバを……」


「うん……」


 ……と、アイシンは頷くが、


「キュアリバってぇ♪ 100回までしか使えないんですかぁ?」


 校庭の隅のベンチに座る芸術家が喋り掛けてきた。


「アイシン、輝ヶ丘全体を対象にするから今から空に飛ぶぞボズ。そして、空に行ったら……」


 しかし、ボッズーはその質問を無視した。


「アレ? 無視するんですかぁ? 私、質問をしているんですけどぉ♪ 答えて下さいよぉ♪」


「腕時計を叩くんだボズ。休まず限界まで、87回だボズよ……」


 再び、ボッズーは芸術家を無視する。


「ですからぁ♪ 87回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 無視するなら答える迄聞き続けますよぉ♪ 87回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 87回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 87回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 87回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 87回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ?」


「黙れボズ!!」


 流石の限界。ボッズーは芸術家を制した。


「今はお前と喋ってる時間は無いボッズー!! まぁ、一生喋りたくは無いけどなボズ!!」


「ホホゥ♪」


 芸術家はボッズーのその言葉に笑った。ベンチにゆったりと座り、筆をタバコの様に咥えながら。


「私は貴方達の邪魔をしたい訳ではないのですよぉ♪ 私は今から貴方達にアドバイスをしてあげようと思っていますのにぃ♪ ねぇ? 100回を使い切ったらもう使えないんですかぁ? ねぇ、桃色の英雄さん……いえ、ガキアイシンさんも気になりますよねぇ?」


「煩い!! 喋り掛けるな!!」


「OH♪ 相変わらず怖いお言葉……でも、こう言われたら貴女も気になる筈♪」


 咥えていた筆を口から外し、芸術家はニヤリとした笑みを浮かべた。


「100回までしか使えないなら……貴女の大好きな真田さんは死にますよ♪♪♪」


「え………?」

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