第7話 バイバイね…… 25 ―時間を巻き戻すしか方法はない―

 25


「輝ヶ丘を燃やすのはバケモノじゃない?!」


「赤い石は……いや、青い石という物も全て、《王に選ばれし民》が作った武器ではないだと……」


 アイシンの口から赤と青の石に関しての真相を聞いたセイギとユウシャは驚きで一瞬動きが鈍った。


「あっ! うわッ!!」


 そのせいで、セイギはホムラギツネが振った尾を腹に受けて地面を転がってしまう。


「ギィェ!!」


 そんなセイギに跳び掛かろうとするホムラギツネを


「チィッ!!」


 ……と舌打ちをしながらユウシャは撃つが、流石にホムラギツネも学んでいる。セイギに跳び掛かろうとするのをすぐに止めて。ホムラギツネは踵を返し、今度はユウシャに向かって走った。

 ホムラギツネの足はまだ速い。しかも走り方はジグザグで無軌道。放たれたレーザーはホムラギツネに当たりそうにはなるが、寸前で避けられてしまい、間違えて地面に当たってしまう。


「そんな避け方があるのか!! うッ!!」


 ユウシャはホムラギツネの避け方に目を見開いて驚くと同時に、高速で迫ってきたホムラギツネに二丁拳銃を持った両手を掴まれて強い力で捻り上げられてしまった。


「ギィイイ!!」


「ちきしょう!! ユウシャから手を離せ!!」


 その光景を見たセイギはすぐに起き上がり、ホムラギツネに向かって走った。


「ホホホホホォ♪ 真相は知れてもホムラギツネが邪魔ですねぇ♪ どうしましょうか? 赤と青の石のスイッチは一度でもONになってしまうとこの私でも止める事は出来ません♪ 貴方達はもう輝ヶ丘と一緒に心中するしか道はない♪ OH♪ 絶望的ぃ♪」


 アイシンが話している間、校庭の隅に置かれたベンチに大人しく座っていた芸術家が再び歌い出した。


「なる……ほどな! お前が俺達に真相を教えたかったのは、俺達を絶望させる為か!! だが、そう簡単に俺達は絶望なんかしない!!」


 ホムラギツネに両手を捻り上げられながらもユウシャは二丁拳銃を離しはしなかった。逆に彼は撃つ。天に向けられた銃から一発、二発とレーザーを。レーザーはユウシャが標的と定めた存在に向かって飛んで行く、銃口が天に向けられていても避けられさえしなければ攻撃は可能だ。


「ギェッ!!」


 ユウシャが撃ったレーザーは一旦空に向かって飛んだが、すぐに急転回し急下降、ホムラギツネの背中に命中した。


「絶望はしない♪ それは素晴らしい♪ ではでは、それでは♪ どうするおつもりですかぁ? 時間を巻き戻しでもしない限り、赤と青の石を止める事はもう不可能なのですよぉ~~~~♪♪」


「黙れ!! やるだけやるしかない!! 不可能かどうかは俺達が決めるんだ!! それが英雄だ!!」


 ユウシャは煽る様に歌う芸術家に向かって怒鳴った。

 そして、次に声をあげるのはセイギだ。


「そうだぜユウシャ! やるだけやるしかねぇ!! ボッズー! それに愛!! バケモノの事は俺とユウシャに任せろ!! 二人は今すぐ俺達が空けたあの穴から輝ヶ丘の全員の避難を始めるんだ!! 一人も残さず絶対だ!!」


 セイギは巨大テハンドに空いた穴を指差してアイシンとボッズーに向かって叫んだ。


 しかし、セイギのこの指示を芸術家は笑った。


「OH♪ ホホゥ♪ それはそれは愚策♪ 石は既に起動しているのですよぉ♪ 輝ヶ丘の住民を一人残らずなんて不可能ですぅ♪ 時間がありませぇ~ん♪」


「不可能かどうかは俺達が決めると言っているだろ!! さぁ、ボッズー早く!!」


 ユウシャはセイギの提案に賛同した。


「ボッズー、早く!!」


 セイギは動こうとはせずに空中で止まったままのボッズーに向かって再び叫ぶ。


「ボッズー、やろう。不可能かどうかは私達が決める……せっちゃんの言う通りだよ。何もしないよりか絶対に良いよ!」


 アイシンもだ。アイシンもセイギの提案に賛同した。


 しかし、


「いや、時間がない今、確実に町を救える方法じゃない限り、それは愚策になるボズよ……」


 ボッズーは賛同しなかった。


「OH♪ ホホ♪ やはり貴方は他の方と違い冷静ですねぇ♪ そう♪ 全ては愚策♪ もうどうしようもないぃ~~♪」


 芸術家はボッズーの言葉を聞いて嬉しそうに歌う。


「ボッズー! 何やってんだ早くするんだよ!!」


 セイギは叫ぶ……


「ダメボズ……」


 しかし、ボッズーは首を振る。


「何でだよ!! このまま動かずにいたらマジでヤバイんだ!! 分からないのかよ!!」


「だって、セイギ! 今お前が考えた作戦、お前らしくない爪の甘い作戦だとは思わないのかボズ!!」


「何だと!!」


 ボッズーの煽りとも取れる言い方に、ホムラギツネに向かって走っていたセイギの足は思わず止まってしまう。


「時間を巻き戻すしか方法は無いってさっき芸術家は言っただろボズ!!」


「だったらその方法があんのか!! 時間を巻き戻すなんて、そんなの不可能だろ!!」


「馬鹿セイギ! 不可能かどうかは俺達が決めるんじゃないのかボズ!!」


 ボッズーは小さな翼を羽ばたかせ、アイシンの肩に止まった。


「……時間を巻き戻す。やってやろうぜボッズー!!」

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