第7話 バイバイね…… 23 ―芸術家は嘲笑う―
23
「芸術家ッ!! 貴様ッ!!」
ユウシャは二丁拳銃から芸術家に向かってレーザーを連射した。
「ホホゥ♪」
しかし、これもまた筆の一振りで消されてしまう。
「クソッ!! 何しに来やがった!!」
今度吠えたのはセイギだ。
「何しに来やがった……それは何てお言葉♪ 失礼ですねぇ♪ 私はずっと居ましたよ♪ ホムラギツネが現在の姿になる前からずっとぉ♪ まぁ、さっきまで瓦礫の下に埋もれてしまっていましたが♪ ねぇ? そうですよね?桃色の英雄さん?」
芸術家は校庭の隅に居るアイシンを見た。
「………」
でも、アイシンは怒りを込めた眼差しで睨むだけで芸術家の問いには答えない。
「ホホホォ~~♪♪ 無視ですか♪ まぁ良いですよ♪ 私の事に関しては無視をしても……でも、赤と青の石に関しては貴女が口を開いた方が宜しいのではないでしょうかぁ~~~♪♪」
「赤と青の石?」
これを聞き返したのもセイギ。
「そうですぅ♪ そうですぅ♪ 赤と青の石ですぅ~~♪♪ でも、そのお話をする前にガキセイギさん♪ サッサとホムラギツネから離れてもらえますか♪」
……と芸術家は歌いながら自分の体を筆で撫でた。すると、突然パッとその姿は英雄達の前から消えた…………かと思うと、また突然、パッとセイギの背後に芸術家は現れた。
「えっ?!」
……と、背後に芸術家の気配を感じたセイギは振り返ろうとするが、
「さらさらさらぁ~~♪♪」
素早い動きで体を筆で一撫でされて、今度はセイギがパッと消えた………
「あっ!!」
「嘘だろボズ!!」
「嘘……!!」
その光景を見たユウシャ、ボッズー、アイシンは各々の言葉で驚くが、次の瞬間彼らは更に驚いた。
「んっ! 何だ!!」
何故なら、今度はセイギが芸術家の背後にパッと現れたからだ。
「さぁ♪ やっちゃいな♪」
芸術家はそう言うと再び自分を一撫で、パッと消え、ホムラギツネの背後に現れる。
「ギィェ!!」
自由になったホムラギツネは鋭い爪を立て、殴り掛かる様にセイギに襲い掛かった。
「うわっ! な、何なんだ!! 突然目の前が黒くなったかと思ったら、何で俺は……」
セイギは咄嗟にホムラギツネの攻撃を大剣を盾にして防ぐが、突然の瞬間移動は不意打ちをくらったのと同じ。ホムラギツネの連打を止めるには至らず、ただ防ぐ事しか出来なくなった。
「ホホホォ~~♪ 驚きましたかぁ♪ 私の筆は只のお絵かき道具ではございません♪ こんな事も出来るのですぅ♪ 貴方達に分かりやすく言えば、瞬間移動、テレポーテーション♪ まぁ、本当はそんな簡単な言葉では現せられないものですが……しかし♪ 今は私の能力を語っている暇はございません♪♪」
芸術家は『やれやれ……』と首を振ると、ホムラギツネの連打をガードしながら後退していくセイギに語りかけ始めた。
「ガキセイギさん♪ 貴方は一度間違えました♪ ピエロさんに騙されて♪ 輝ヶ丘を離れてしまった♪ そして、ここに来るのが遅れた……そうですよね?」
「あぁ……そうだぜ! だから、お前に邪魔されてる時間は無ぇんだ!!」
セイギはホムラギツネが振り下ろしてきた攻撃を大剣で受け、ガラリと開いたホムラギツネの腹に蹴りをかました。
「悪いな! 俺の武器は剣だけじゃねぇ! 俺の体全体が俺の武器だ!! ま、剣が一番強ぇけどな!!」
腹を押さえて後退したホムラギツネの肩口に向かってセイギは大剣を振り下ろした。
「ギィ……!!」
「ホホホォ♪」
しかし、芸術家は笑う。
「邪魔されている時間は無い~~♪ それでは貴方達はいったい何をするおつもりぃ~~♪♪」
「決まってるだろ!! バケモノを人間に戻して輝ヶ丘を救うんだ!!」
セイギの連撃は続く。ホムラギツネの肩の次は横一線で脇腹に斬撃をくらわせた。
「う~ん♪ 輝ヶ丘を救うとは、赤と青の石の炎から輝ヶ丘を救うという事ですかぁ~~♪」
「当たり前だろ!! 何でいちいちそんな事を聞くんだ!!」
「芸術家……セイギの邪魔をするな!!」
二人の会話に割って入ったのはユウシャだ。ユウシャは芸術家がセイギに注目している間に新たな光弾を作り出していた。
ドキューーンッッッ!!!
「ホホホォ♪ 懲りずにまた撃ってきましたか♪ でも、貴方の弾丸は私には届かない♪」
芸術家は筆を一振り、再び光弾は消えてしまう。
「フッ……それでも良い。セイギの邪魔を防げるならばな!!」
「邪魔? 何の邪魔です? 私はアドバイスをしに来ただけ♪ だって、輝ヶ丘を救いたいにしては、先程から見当違いな行動を取ってらっしゃいますからねぇ~~♪ ピエロさんに騙されてしまった時の様に、また貴方達は間違えるおつもりですかぁ?」
「何だとッ!! どういう意味だッ!!」
今度叫んだのはセイギだ。
「ホホゥ♪ 聞く耳を持ってもらえますか? でも……ねぇ、桃色の英雄さん? これは貴女から話した方が宜しいのでは? じゃないと、さっきの貴女の様にきっと貴女のお仲間は私の話を信じない♪」
芸術家はアイシンの方を向き、こう問い掛けたかと思うと、また自分の体を筆で撫でた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます