第7話 バイバイね…… 21 ―アイシンには仲間がいる―

 21


 アイシンには武器がない。身動きを封じられては起死回生の一手も打てない。


 しかし、アイシンには仲間がいる。


「デェリヤァッ!!!」


 上空からやってきたガキセイギは雄叫びをあげてアイシンの胴体に巻かれたホムラギツネの尾を斬った。

 そして、セイギと同時に上空から現れたのは二人目の英雄ガキユウシャだ。彼は二丁拳銃を発砲し、アイシンの両腕に巻かれた尾を破壊した。


「ギィャーーーーー!!」


 二人の英雄の攻撃によって破壊されたホムラギツネの尾は、真中から先端までが地面に落ちる。


 地面に落ちたのは……いや、降りたのはホムラギツネの尾だけではない。セイギとユウシャもだ。彼らの背中にはボッズーはいなかった。


「行くぜッ!!!」


「あぁ!!!」


 ドンッ!と地面に降りた二人は間髪入れずにホムラギツネに向かって走り出した。戦闘開始。彼らの威勢の良い声を聞けば、彼らの士気が高い事は容易に分かる。


 …………では、アイシンはどうなったのか。尾に掴まれていたアイシンは掴まれていたから空中で止まっていられたのだ。尾が離れると真っ逆さまに落ちるだけ。


 でも、大丈夫だ。


「おっと……」


 アイシンが地面に落ちる寸前、ボッズーがアイシンの背中にくっついたから。


「大丈夫か! 愛!!」


 そのままボッズーはアイシンを避難させる為に校庭の隅へと連れて行く。


「ボッズー!!」


「愛……いや、ガキアイシン! 遅れてすまなかっただボッズーね!」


「ううん、良かった! やっぱり来てくれたんだ! 信じてたよ!!」


 ボッズーによって校庭の隅に降ろされながら、アイシンが喜びに溢れた声でそう言うと、ボッズーは申し訳なさそうな顔をして首を振った。


「いや、遅れたのは俺達のミスだボッズー。すっかり騙されて輝ヶ丘にバケモノが居ないと思わされてしまっただボズよ……ごめんボズ」


「いや、そんな!」


『謝らないで!』とアイシンは言いかけるが、その前にボッズーが喋り出す。

 喋りながらボッズーはアイシンの顔の前へと回り込む。


「今回のバケモノはデカギライよりも頭が切れるみたいだボズね。ミスリードキャラを用意しているなんて……」


 ボッズーは悔しそうな顔。そして、チラリと振り向きホムラギツネを見た。


「………」


 ボッズーに合わせてアイシンもホムラギツネの方を向くと、ホムラギツネ対ガキセイギ&ガキユウシャの戦いは既に始まっていた……

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