第7話 バイバイね…… 18 ―黒い火柱―
18
「行くぜ! 決めるぜ! ジャスティス!! スラッシャァァーー!!!」
ガキセイギが振り下ろした大剣からは、残像が如く黄金のオーラが発射された。
高速で飛んでいくジャスティススラッシャーは残り薄皮一枚となった巨大テハンドの人差し指と中指の間にドカーーーンッ!!! と当たり、遂に、遂に、遂に………巨大テハンドに大きな穴を空けた。
「やった……!!」
「やったボッズー!!」
「遂にか……」
巨大テハンドに空いた巨大な穴を見た英雄たち三人はホッと胸を撫で下ろす。
「でも、まだまだだぜ! まだここはゴールじゃねぇ! こっからが本番だ!!」
「そうだなボッズー!」
「本当の戦いはここからだ……」
でも、英雄たち三人は油断をした訳じゃない。すぐに戦闘モードに回帰すると輝ヶ丘へ戻る準備を始めた。
「よっこいせっ!」
セイギはジャスティススラッシャーを放ち続け大活躍をしてくれた大剣を腕時計の中にしまった。
「ユウシャ今いくぞボッズー!!」
ボッズーは後方へと飛びながら下降し、ユウシャの
「あぁ、頼む……」
ユウシャは二丁拳銃をホルスターに仕舞い、飛んでくるボッズーとセイギに向かって両手を伸ばす。
「行くぜっ!!」
「おうっ!!」
そして、セイギとユウシャの手は再び繋がれた。
「ヨシッ! それじゃあ、早速輝ヶ丘に戻るぞボッズー!!」
ボッズーは二人が手を繋いだのを確認すると、再び上昇、それから大きく旋回し、皆で開けた穴へと向かう。
「ここからはビュビューンモードで行くぜ!!」
「OKっ!!」
「頼むぞ!!」
ボッズーは二本の翼を四本へと変形させ、一気に穴へと飛び込んだ。
「良いか! セイギ、ユウシャ!! 輝ヶ丘に戻ったらまずは大木に行くぞボズ! それから、《願いの木》に《魔法の果物》を出してもらって体力の回復をしてから……」
ボッズーは穴の中を通り抜けながら、これからの予定を話す。だが、予定は予定通りにはいかないもの。
「あっ!」
「えっ!!」
「んっ!!!」
穴を通り抜けて輝ヶ丘の町並みが見えた瞬間、三人は驚きの声をあげた。
「おいおい、嘘だろ……町がめちゃくちゃだ!」
「うん! 家も、車も、色んな物が壊されてるボズ……」
「あっ! セイギ、ボッズー見ろ! 火事も起きているぞ!!」
三人は口々に目に映った光景に驚いた。
「セイギ……もしやこれが、輝ヶ丘を焼け野原にするって事なのか?」
「いや……なんか違う気がする」
ユウシャが疑問を口にすると、それにセイギは首を振る。
「確かに火事は起きてるけど全体的じゃないし……」
そうだ。赤い石の炎はまだギリギリ生まれていない。今、セイギ達が見ている火事はホムラギツネが山下から輝ヶ丘高校へ向かう時に起こしたものだ。
「でも、どうやらバケモノが暴れたってのは間違いないみたいだな……ん? おい、ユウシャ! ボッズー! あれ見ろ!!」
「あれ? あれって、どれだよ?」
「何処ボズ?」
セイギはユウシャと手を繋いでいるから、指を差して示す事が出来ない。
「えっと、左斜め前方! あそこって勇気の高校があった場所だよな?」
「俺の高校? ………んっ!」
「何だあれはボズ!!」
「学校が……いや、それよりも!!」
セイギの指示通りに左斜め前方を見たユウシャとボッズーは驚いた。その理由は輝ヶ丘高校が瓦礫と化してしまっているから………でもあるが、それだけではない。
「黒い……何だボズ?」
「柱……か?」
それは瓦礫になった輝ヶ丘高校の前に見える謎の黒くそそり立つ物体。
それの大きさは10m程はあるだろう。空高く飛ぶ彼らの目にもはっきりと映る大きさだ。
「柱? いや……どうだろう?いや、違う! あれは柱じゃない!」
セイギは二人の発言に首を振った。
「……あれは多分、炎だ」
「炎……」
「そうだぜユウシャ、俺は何度か黒い炎を見た事がある。魔女の攻撃を受けた時と、駅前公園で火の玉にやられた時……その時の黒さに、あれはそっくりだ!」
「確かに……そう言われてみればそうかもしれないなボズ」
「ボッズーもそう思うか? ヨシッ! ボッズー、あそこに行ってくれ! 黒い炎を出すなんて《王に選ばれし民》かバケモノ以外にあり得ないからな!! あそこに敵がいる筈だ!!」
「うん、あっ……でも、その前に《魔法の果物》を……って、そんな事を言ってる場合じゃないよなボッズー!!」
「うん、そうだぜ!!」
「あぁ、その通りだ……休んでいる暇はない!」
英雄二人がコクリと頷くと、
「OK! んじゃ、超高速でブッ飛ぶぞボッズー!!」
ボッズーはその言葉通り"上の翼"で空気を取り込み"下の翼"で勢い良く噴き出すと、黒い炎に向かって猛スピードでブッ飛んだ。
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