第6話 剥がれた化けの皮 2 ―雷なんて鳴ってないのだ!―

 2



 ドーンッ………



 輝ヶ丘の外では、巨大な雷の音が人々の耳を悩ませていた………


 いや、違う。悩ませてなどいない。何故なら、今日は全国的に行楽日和。気持ちの良い晴天なのだから。


 ならば、この音はいったい何の音だろうか?


 それは、輝ヶ丘以外の人類は皆知っている。


 何故なら、輝ヶ丘が巨大テハンドに閉じ込められたニュースと並んで、この音とは大ニュースとなっているのだから。


 各局のテレビ局がヘリコプターを飛ばし、中継をしているニュースキャスター達はその光景を見ながらこう叫ぶ。


『赤い英雄が大剣を振って、輝ヶ丘を取り囲んだ巨大な手の様な物に向かって攻撃を加えています。英雄は、輝ヶ丘に突入しようと必死に戦っています!』


 ………と。


 ―――――



「ジャスティス! スラッシャーーーーーッッッッッ!!!!!!」


 ガキセイギは雄叫びをあげながら巨大テハンドに向かってジャスティススラッシャーを放った。

 もう彼の声はカスカスだ。夜が明ける前から叫び続けているのだから当然だ。

 その体ももうボロボロ、何時間も休まずにジャスティススラッシャーを放っているのだから当然だ。

 本当なら立っている事すら出来ない状態なんだ。それでもセイギは放ち続ける。気力だけで放ち続ける。


 ボロボロなのはセイギだけじゃない。ボッズーも同じくだ。

 ボッズーは現在、セイギをその手で掴み、巨大テハンドの上空を飛んでいる。この状態もジャスティススラッシャーを放つセイギと同じで何時間もずっとだ。セイギが狙うのは一箇所のみ。ピエロが埋めてしまった人差し指と中指の間だ。その場所を狙うにはセイギは空に行かなければならなかった。だからボッズーは飛び続ける。体力の限り……いや、その限りはもう過ぎた。それでもボッズーは飛び続ける。


 体力の限りを超えても踏ん張り続けているのはガキユウシャも同じくだ。

 セイギがジャスティススラッシャーを放つ為の力を与えているのはユウシャなんだ。彼の二丁拳銃から放たれる蒼い光弾がジャスティススラッシャーの力の源。彼も休まず撃ち続けている。十秒に一度完成する光弾。しかし、光弾が作られる時の二丁拳銃の震えは永々だ。両腕に溜まった疲れは全身に広がり、彼もまた気力だけで光弾を撃ち続けていた。


 ―――――



「ハァ……ハァ……ハァ……」


 セイギの息は荒い。


「ボッズー、見えるか?あそこちょっと削れてきてないか?」


「ん? う~ん……どうだろうなボズ?」


「なんだよ、渋い返事だな」


「そんな事ないボズよ。それより、ユウシャからの光弾がまた来たぞボズ!」



 ドキューーンッッッ!!!



「ヨッシャア!! デェアッ!!!」


 セイギは後ろを振り返って後方から飛んできたユウシャの光弾を一刀両断にブッた斬った。そして、そのまま再び体を翻し、人差し指と中指の方向を向く。


 そして放つ……


「ジャスティス! スラッシャーッッッッッ!!!!!!」


 何十発、いや何百発目のジャスティススラッシャーだろうか。この何百発を放つ度に、セイギは考えていた。己の失敗を、己の後悔を、


 ― 俺は間違えた、俺はピエロに騙された………俺は馬鹿だ! 馬鹿野郎だ! あんな奴を信じちまって! だったらもう頭は使わねぇ! 使うのはこの体のみだ! この体が灰になろうがなんだろうが構わねぇ!! このまま負けを待つよりも、永遠だろうが勝つまで続ける!!! 絶対に輝ヶ丘に戻ってみせる!!! バケモノを倒す為にッッッッッ!!!!!!

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