第5話 化け狐を追って 11 ―何故、嘘をつくのか―

 11



 ドーンッ………また雷が鳴った。


 ―――――


「………」


 愛が去っていくと、お婆ちゃんは掃除を止めた。

 そして、箒と塵取りを店の脇に置くと、すぐに山下へと入った。


 店に入ると、戸を閉めて、鍵をかける……


「何で? カヨちゃん……」


 そんなお婆ちゃんに店の奥から話し掛ける声があった。


「何で、桃ちゃんを追い返したの?」


 その声は真田萌音のもの。


 彼女は山下に居たのだ。


 彼女は店の奥の帳場に座って、店の出入り口の前に立つお婆ちゃんを不思議そうな顔で見ていた。


「なんだい……起きてたのかい」


 お婆ちゃんは残念そうに呟く。


「外からカヨちゃんと桃ちゃんの話し声が聞こえてきたからさ。起きちゃった」


「そうかい。もう少し寝ていても良かったのに……」


 今度のお婆ちゃんは、苦々しい表情で呟く。


 しかし、お婆ちゃんは顔を俯かせているから、萌音にはその表情は見えない。


 だから、まだ萌音は話し掛ける……


「ねぇ、カヨちゃん。もう一回聞くけど、何で桃ちゃんを追い返したの?」


「二人の方が良いからだよ……」


 お婆ちゃんは俯きながらボソリとそう言った。それから、ゆっくりと萌音に近付いていく。


「二人? 桃ちゃんが居たらダメなの?」


「そうだよ……」


 そして、お婆ちゃんは帳場の椅子に座る萌音の近くに立つと、割烹着のポケットから"まるで宝石の様に輝く青い石"を取り出した。


「え……何?」


 驚いた萌音はお婆ちゃんに問い掛けるが、お婆ちゃんはそれには答えない。


「こっちに来な……」


 答えずに、萌音の腕を強引に取り、彼女を無理矢理立たせる。


「え……なに、痛いよ」


 萌音が痛みを訴えても、お婆ちゃんは萌音の腕を離さない。


「こっちに来なって言ってるんだよ……痛い思いをしたくないなら私の言う事を聞くんだね。終わらせるんだよ……全部、アンタの事も、輝ヶ丘の事も……」


「何? 変だよ、カヨちゃん……どうしたの……」


 萌音が聞いても答えない。


 お婆ちゃんは無理矢理、萌音を2階へと連れていく………

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