第5話 化け狐を追って 6 ―輝ヶ丘連続放火事件続報! 被害者本人だからこそ語れる、事件当日に起きた事実と王に選ばれし民との戦いに関しての私見―

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『輝ヶ丘連続放火事件続報! 被害者本人だからこそ語れる、事件当日に起きた事実と王に選ばれし民との戦いに関しての私見』


 20●●年2月◯◯日12時47分


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 とあるニュースサイトをご利用頂きまして、誠にありがとうございます。本サイト専属記者の真田萌音です。


 先日の怪文書に関する記事には様々な反響を頂きまして、驚くと共に感謝しております。

 今回は、昨日私自身の身に起きました出来事をお伝え致します。

 本文に移る前に事前にお断りを入れさせて頂きたいのですが、本記事に関しましてはタイトルにもある通り、私の私見が多分に含まれておりますのでご了承下さい。


 以下、本文




 当サイトでは勿論、テレビ、新聞でも取り上げられている為、ご存じの事と存じますが、昨日私の自宅が王に選ばれし民によって放火の被害に遭いました。

 幸いにも事件時刻には家の中には誰もいなく、私や私の家族が怪我を負う事はありませんでした。

 しかし、襲われた事は事実です。

 私は炎に包まれる自宅をこの目で見ました。


 事件が起こったのは昨日の15時頃。私は部活の後輩と共に輝ヶ丘内にある自宅に向かっていました。後輩とは中学からの旧知の仲で、道中はいつも通りの他愛もない会話で盛り上がり、先日までの大学受験で疲れていた心が潤う気がして「残り少ない高校生生活の思い出がまた一つ増える」その時はそんな風に思えていました。

 ですが、学校を出てから約15分後。私は自宅が燃えている光景を目の当たりにするのです。


 そこからの私の記憶は曖昧です。

 自宅が燃えていると知った私は放心状態となってしまったからです。

 膝から崩れ落ち、立ってはいられない状態になった私を助けてくれたのは、私と共に居た後輩です。

 彼女は私を連れて怪物から必死になって逃げてくれました。今、この記事を書けているのも彼女のお陰です。彼女には感謝してもし切れません。


 悔しくも、先輩として後輩を守らなければならない立場なのにも拘わらず、私は怪物に対して恐怖の涙を流すだけでした。一記者としても事件の詳細を記憶していなければならないにも拘わらず、記憶は曖昧で、情けない事極まりないです。


 ですが、そんな私でも確かに記憶している事があります。説明が前後してしまい申し訳ありませんが、それは私と後輩を襲おうと現れた怪物の存在です。一昨晩に起きました輝ヶ丘内での連続放火事件の各メディアでの報道を見た方は知っているでしょう。長身で茶色い姿の怪物を。この怪物が私達を襲ってきたのです。


 この時、私は放心状態になると共に一つ理解した事があります。それは王に選ばれし民の狙いです。王に選ばれし民は私を脅しに来たのだという事実です。

 王に選ばれし民が私を脅すその理由は、先日私が書いた怪文書の記事にあると思われます。

 四日前に発表したあの記事は、前述の通り様々な反響を頂きました。当サイトだけでなく、各メディアでも取り上げて頂き、手前味噌になりますが、怪文書の存在を広く知ってもらえる切っ掛けになりました。


 それは王に選ばれし民にとっては面白くない事だったのでしょう。だから私を脅しに来たのです。ですが、私は屈しません。昨日、私は何も出来ませんでした。そんな私を、私自身は許してはならない。私はそう思います。

 ですから、英雄が王に選ばれし民と戦う為に剣を握るなら、私はペンを取りたいと思います。

 それがジャーナリストという職業の本来の姿だからです。新米ですが、私もジャーナリストの端くれです。泣いている暇はもうありません。


 また、敵は卑怯者だったと皆さんにも知って頂きたい。

 本来、王に選ばれし民には作戦を指揮する「バケモノ」と呼ばれる者が存在します。しかし、私達を襲ってきた怪物は「バケモノ」ではありませんでした。王に選ばれし民の中では下級の存在でした。

 これは作戦を指揮するバケモノが表には現れず影に隠れているという事。そんな卑怯者に我々人類の命が弄ばれて良いのでしょうか? 私はそうは思いません。人類は戦うべきなのです。

 この記事を読んで下さる皆さんはどう思いますか? 私と一緒に戦ってくれる方はいらっしゃいませんか?

 戦うとしても、私は力で立ち向かう行為を提唱しているではありません。私も力ではなく、ペンで戦うのですから。あなたの出来る限りの事で良いのです。「王に選ばれし民が許せない」そんな気持ちを持って、怒るだけでも良いのです。

「悪に屈してはいけない」その気持ちを持ってどうか私と共に戦ってはくれませんでしょうか?

 賛同して下さる方が一人でも多ければ心強い限りです。


 これが、今の私の思い。そして、皆さんにお伝えしたい考えです。

 どうか、私と共に戦ってくれる有志が現れる事を祈っております。


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 追記


 この様な記事を書きながらも、私の頭の中は未だ整理が付いていないのでしょう。いつも以上に纏まりのない文章でお目汚しをしてしまい大変申し訳ございませんでした。

 推敲もせずに乱雑な文章のままでの発表をとても心苦しく思いますが、王に選ばれし民が再び動き出す前に一刻も早くこの記事を出したかったが為だとご理解下さい。



【文 真田萌音】

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