第3話 閉じ込められた獲物たち 12 ―デカイ手―
12
「さぁさぁさぁ!! それでは輝ヶ丘に向かって全力特急で行くぞボズ!!」
セイギとユウシャが電車を飛び降りると、今度はボッズーの出番だった。ボッズーの準備は万端。その翼は既にビュビューンモードへと変わっている。
「今は『男二人は勘弁してくれ』何て言ってられないボズ! 今から二人同時に連れていくぞボズ! さぁ、セイギ、ユウシャ! 手を繋げボッズー!!」
「うぇっ! 手ェ?」
「マジかよ……」
セイギとユウシャの顔は仮面に隠されてどんな表情をしているのか見えない。だが、今のボッズーの指示に二人は顔をしかめただろう。二人の態度を見れば顔を見なくてもそれが分かる。ユウシャはボッズーの指示を拒否する様に腕を組み始めるし、セイギは仮面の頭の部分を人差し指でポリポリと掻いて困った時の癖が出ている。
「友達とはいえ、この年で手ぇ繋ぐのはなぁ……」
「そうだな……」
ユウシャはセイギの言葉に頷いた。
そんな二人をボッズーが叱る。
「バカヤロー!! そんな事を言ってる場合か!! 早く輝ヶ丘に行かなきゃだろボッズー!! それには俺と飛んでいくのが一番だボズ!! それとも、どっちか一人は走っていくのかボズ! そんな訳にはいかないだろ! 早くするんだボッズー!!」
ボッズーの言う通りだ。だから二人も……
「う、う~ん……わ、分かったよ!」
「仕方ない……」
漸く頷いた。
「おい、早くしろボズ!!」
「わ……分かってるってぇ」
「はぁ……」
ユウシャはため息を吐きながらも組んでいた腕を解いてセイギに手を伸ばした。
「ほら、セイギ……」
「あぁ……」
セイギも頭を掻く手を止めて、伸ばされたユウシャの手を取った。
さぁ、漸く二人の手は結ばれた。さぁ、英雄達よ輝ヶ丘に向かって飛んでいけ。
「飛ぶぞボッズー!!」
セイギの背中に掴まるボッズーはそう叫ぶと、ビュビューンモードの"上の翼"に空気を取り込んだ。
「急いで輝ヶ丘に戻るぞボズッ!!!」
ボッズーは威勢良く叫び、"下の翼"で取り込んだ空気を一気に噴き出し、セイギとユウシャを連れて空に向かって飛び上がった。
そして、ボッズーは高速で飛んでいく。そのスピードは速い。超高速だ。
だから、英雄達はあっという間に輝ヶ丘に近付いた。輝ヶ丘の"異変"ももう目の前だ。
「チッ……芸術家の野郎!!」
輝ヶ丘に近付いたセイギは異変を目の前にして叫んだ。
「何回この"デカイ手"を出してくれば気が済むんだ!!」
そうだ……今、セイギ達の目の前にある物は何度もセイギ達の前に立ち塞がった事のある敵……芸術家によって産み出される"巨大な手"だ。しかもその大きさは、
「デカ過ぎるぜ、こりゃあ!!」
…………デカ過ぎるのだ。今度の手の大きさは滅茶苦茶に巨大。電車に乗って離れた場所に居たセイギやその他の乗客達が『あれは手だ!』と気付けた程に。
そして逆に、輝ヶ丘に近付いたセイギは『これは手だ!』と認識していたから『手だ!』と分かったが、始めから今の場所で見付けていたら巨大過ぎて全貌が見えず、『これは手だ!』と認識出来ずに『白い巨大な何か』としか認識出来なかったろう。それ程までに今度の手は巨大過ぎる程に巨大なのだ。
そして、これ程までに巨大な手は何をしているかというと……
「輝ヶ丘がすっぽりと隠されちまってるぜ……」
そうなんだ……巨大な手は輝ヶ丘に覆い被さっているのだ。
「どうすっかコレ……こんなデカイのと戦うには巨大ロボットでもないと無理だぜ」
そう言ったセイギにボッズーは首を振る。
「いや、俺はコイツとは無理に戦わなくても良いと思うボズ!」
「うぇ?! 何でよ?」
「いや、これは俺の勘なんだけど! これは輝ヶ丘を隠してるっていうか、俺には輝ヶ丘を籠の中に閉じ込めたって感じに見えるボズよ!! ……って事は町の中で何かをしようとしてるって事じゃないかボズ? 問題はそっちボズ!!」
「確かに……俺にもそう見えるな」
これはユウシャだ。ユウシャもボッズーの意見に同意する。
「そっか……じゃあ、どうする? だったら何とか町の中に戻らねぇと」
「とりあえず、指と指の隙間から入れないか試してみるボズよ……」
「あぁ、頼む!」
「うん!」
セイギの了解を得たボッズーは、巨大な手の指と指の隙間に向かう為に旋回した。
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