第1話 血色の怪文書 14 ―悪魔達の企み―

 14








 広大な白き空間にある物はひとつ……








 巨大な玉座だけ………









「芸術家よ……お前が……作った、新たなバケモノは、よく、働いている……ようだな」



 その玉座もまた白く、玉座に座る真白き王に、一つの彩りも与える事はしない。




「そうですぅ~~♪ そうですぅ~~♪」


 巨大な肉体を持つ王に向かってこうべを垂れる芸術家は歌う様に喋る。


「今度の子はデカギライよりも出来が良いぃ~~~♪♪ とてもとても素晴らしい芸術ぅ~~♪♪ 素晴らし過ぎてこちらの芸術も差し上げましたぁ~~♪」


 そう言うと芸術家は、手に持つ小瓶を王に向かって掲げた。表情の無い王とは反対に、芸術家は上機嫌。自信満々に笑う芸術家の目は細くなり過ぎてもう開いてはいない。


「こちらもまた私の新作ぅ~~♪ 分身を操るデカギライから思い付きましたぁ~~♪ ダーネと言いましてぇ~~♪ バケモノの傀儡として手となり足となり働く存在ぃ~~い♪♪」



「そうか……新たなバケモノは、ソイツを、上手く使えそうか」



 王は無感情なのか、芸術家がダーネを見せても驚きはしない、笑いもしない。



 しかし、芸術家にとっては当たり前なのだろう。芸術家の上機嫌は消えない。


「勿論でございますぅ~~♪ 今回の作戦はピエロではなく私が指揮を執っておりますゆえぇ~~♪ バケモノにはアドバイスを与えておりますぅぅぅ♪♪ ご安心をぉ~~♪♪ 今度こそ必ず英雄達に最後の晩餐を味合わせてあげますよぉ~~♪♪」



「そうか……」



「はいはいぃ~~♪ そしてもう一つ王様にご報告がぁ♪ 今回のバケモノにはある実験をしておりましてぇええ~~~ぇ♪」


 芸術家はポケットから筆を一本取り出すと、それを魔法の杖の様にクルクルと回し、三角形の唇をニヤリと歪めた。

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