第1話 血色の怪文書 4 ―私、鍛えてるんで!―
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三人が山下を訪れたその日の夜、愛は一人、公園にいた。
パンダ公園じゃない、通称《駅前公園》と呼ばれている、その名の通り駅前にある少し大きめの公園だ。そこには背の高い鉄棒があるのだが、愛の目的はその鉄棒だった。
勇気が英雄の力を手に入れてからの愛は『自分も頑張らなきゃ!』という気持ちで、かねてより行っていた体力作りと筋トレにより力を入れていた。今日のメニューは懸垂だ。山下へ行く前からそう決めていた。
しかし、愛は懸垂があまり得意じゃない。どんなに頑張っても二回しか出来ない。悔しくもこの前は、三回目に届くもう少しの所でやっぱりダメだった。
「よぉし、今日こそ三回やってやるぞ!」
愛の気合いは満々だ。鼻息が猪みたいになっている。両手には滑り止めの付いたグローブを嵌めて準備万端。
「トリャッ!!」
そして、愛は鉄棒に向かって跳び上がった。
「ぐぬぬ……き、キツッ!!」
さぁさぁ、まずは一回目だ。
「ぐ……ぐぐぐぐぐ……」
さぁ成功、次は二回目。
「ぐぅぬぬぬぬぅ………」
二回目も成功。次は三回目に挑戦だ。
この時愛は『いつもと比べてほんのちょっとだけど限界までまだ余裕がある』と感じた。
― 三回目……行ける!!!
愛が声に出さず呟いたその時、ピューーっと風が吹いた。その風は熱くなった愛の体を心地よく冷やす。しかし、その風は思わぬ物を運んできた。
ピューー………ペタン!
それは愛の顔面に貼り付いた。
「え? うわっ! なにこれ? じゃ、邪魔!!」
突然目の前が真っ暗になった愛は大混乱。
あぁダメだ……折角あと数cmで三回目に届きそうだったのに、ドタンッ! と尻餅ついて落ちてしまった。
「痛たた……もう! なによこれ!!」
イラッとした愛は顔面に貼り付いた何かを、勢い良く剥がした。
「ん?」
それは一枚のペラ紙。そして、そこに書かれた文章を読んだ愛の顔は大きく歪む。
「はぁぁぁぁぁあ????」
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