第6話 勇気の心を武器にして 27 ―昇る陽は二人のために―
27
「なぁ正義」
「何だよ勇気?」
二人は輝ヶ丘の大木の近くに立って、夜明けを向かえた町を見ていた。
「いや、今回は……本当にすまなかったな」
「へ? 何だよ急に?」
二人は肩を並べて立ってはいるが、お互いの方を見ようとはしない。ただ日常の始まったばかりの町を見ている。
「いや……お前の元へ行くのが遅くなってしまったから……」
「へへっ! 別にぃだぜ。それなら俺はありがとうだ!」
「ありがとう?」
「あぁ! 俺、一人でももう少し出来るかと思ってたけど、まだまだだった。一人じゃ全然ダメだったぜ」
「そんな……」
「いんや、マジだぜ。勇気がいてくれて良かった。だからさ……」
正義は、傷だらけの右手で"ジャンケンのグーの形"を作ると、
「ほい!」
勇気に向かって突き出した。
「これからも宜しく頼むぜ!!」
「正義……」
「へへっ! ほら!!」
正義はグーをくいっくいっと動かした。でも、勇気の方は見ない。正義は少し気恥ずかしいのだ。
「ふっ……ありがとうか。それは俺の台詞だよ」
勇気は正義の気持ちが嬉しかった。一度は友情を捨てようとした自分を、受け入れてくれる正義のその優しさが。
………だから勇気は、チョキを出した。
「へへっ! 何だよそれ、違うだろ! しかも負けてるし!」
そう言うが、正義は勇気の方を見ていない。でも、勇気が何をするのかを正義は分かっていた。
だって、二人の気持ちは同じだから。
「あ……そうか、そうか、じゃあこっちだな」
勇気が出したのは今度はパーだ。
これも正義は分かっている。だから正義は言うんだ。"あの日"勇気が言った言葉を。
「へへっ! 違うぜ! 知らないのか? 拳と拳を合わせんだよ! これをさ、友情の……」
「ははっ! もういい、よくそんな台詞まで覚えてるな!」
「へへへっ! お前こそ!」
二人の気持ちは同じだ。
「ははっ! まぁ、そうだな……」
「おいおい、ほら! 次だよ! 次! ガツンだろ! ガツン!」
正義はもう一度グーをくいっくいっと動かした。
「ははっ! そうだった……じゃあ、行くぞ」
「おう!!」
「「オリャッ!!!」」
二人の拳は合わさった。
勇気は思う。
― コイツと出逢えて良かった……
二人の気持ちは同じだ。
正義は思う。
― お前との友情は永遠だ!
二人の気持ちは同じだ。
「なぁ、勇気?腹減らね?」
「確かに」
「オムライス食いに行こうぜ!」
「えぇ?朝っぱらから?」
「でもオムライス!」
「いやぁ……」
「でもオムライス!」
「ふっ!分かったよ!!」
「オムラぁ~~イスッ!」
「ラぁ~~イス!」
「へへっ!」
「ははっ!」
第6話「勇気の心を武器にして」 完
第二章 『勇気の英雄の激誕 編』 完
――――――――――
第二章を最後までお読み頂き誠にありがとうございます。これにて『勇気の英雄の激誕 編』は完結となります。
ガキユウシャの活躍はどうでしたか?格好良かったですか?
それでは次回は第三章……こちらは遂に"彼女"が英雄の力を掴みます! その名も、『愛の英雄の誓い 編』です!
それでは、それでは、第三章もお楽しみにッッッッッ!!!!!
第二章のあとがき的なものを近況ノートに書きましたので、もし良かったら読んでやってください。内容薄いですが 笑
https://kakuyomu.jp/users/gaki-eiyuutan/news/16817330666161075465
「ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!!めっちゃ面白い!」または「ちょっと面白い!」でも良いので、「面白い!」と思って頂けたのであれば、応援、感想、☆を頂けると嬉しいです。レビューを頂けたら更に今後の励みとなります!!!!!
宜しくお願いします!!!!!
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