第6話 勇気の心を武器にして 25 ―決戦の幕が上がった―

 25


「悪人共ッ!! 俺が来たからには、貴様等はもう終わりだッ!!」


「何だとテメェ!! 降りてこい!!」

 ピエロの激昂は止まらない。その顔に笑顔はもう戻らない。


「フッ………言われなくても降りてやるよ!」

 ユウシャはベルトの左右に付けられたホルスターから拳銃を取り出した。ガキユウシャの武器は二丁の拳銃。スーツや仮面と同じくメタリックブルーに輝く拳銃だ。

「トウッッ!!」

 ユウシャは宣言通り、腕を大きく広げながら屋上から跳び立った。

 狙うはデカギライ。ユウシャは駐車場を囲む様に円陣を作るデカギライ達に向かって拳銃を発砲した。


「クッ……クソッ!! 新手かよッ!!!」

 デカギライは焦りの表情だ。ユウシャが攻撃を開始すると、焦ったデカギライ達は円陣を捨てて動き出した。


「ハッ!!!」


 ユウシャの拳銃から放たれるのは弾丸ではない、レーザービームだ。蒼白く光るレーザーは直角に曲がりながらユウシャが狙ったデカギライに向かって飛んでいく。


「ウワッ!!」


「ギャッ!!」


「グワァッ!!!」


 縦横無尽に動き出してもユウシャに狙いを定められたデカギライは逃げられない。何故なら、レーザーはまるで意思を持っているかの様に、ユウシャが『コイツだ!』と定めたデカギライを追い掛けるのだから。そして、ユウシャの攻撃をくらったデカギライの腕は、足は、頭は、爆発する。その爆発はデカギライの弾丸の様に相手を弾き飛ばす事はない。ユウシャのレーザーは命中したその箇所を内部から破壊し、確実にダメージを与えるものだからだ。その爆発はデカギライの体の内部から発生しているものだからだ。


 そして、動き出した英雄はガキユウシャだけではない。ガキセイギもだ。


「何だよ!! 何だよ!! 今度はガキユウシャだとッ!! 何人も出てくんじゃないよ!!!」


「へへっ! お前の王様に俺は言った筈だぜ……俺には友達がいるってなッ!!! オゥリャッ!!!」

 ガキユウシャの登場に激昂し、再び油断を見せたピエロに向かってセイギは大剣を振った。


「ウギャァーーー!!!」


「へへっ!」

 その斬撃は"斬る"というよりも"打つ"に近い。セイギは大剣を大振りで振ってピエロを大きく飛ばした。

「悪いなピエロ! お前との決着はまた今度だッ!!」

 セイギの目的は始めからデカギライと決着をつける事。ピエロに固執すれば再びピンチを招くとセイギは判断した。


「ギャギャギャーー!!!!」

 飛ばされたピエロはピカリマートの壁に全身を思いっ切りぶつけ、そのままベタンッと地面に落ちた。

「な……何なんだよ! アイツ、雑魚の筈なのに………俺をぶっ飛ばしやがった! クソォ! ムカつくぅ!!」

 そう言ってセイギを睨みながらピエロは立ち上がろうとした。だが、

「え? ちょ……ちょっと待って!」

 突然ピエロの周りに黒い闇が現れた。

「待ってよ、王様! まだ俺やりたい! まだやり足りないよ!! なんで? えっ! ヤダヤダ!!! まだ帰りたくないよぉ!!!」

 その黒い闇はピエロの全身を包み込み、そして煙の様に消えていった。


 闇が消えると、もうそこには誰も居ない……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る