第6話 勇気の心を武器にして 23 ―勇気の心を武器にして―

 23


「こんなところで……終わる訳ねぇだろ……」


「おいおい! まだやるの? もうやめた方が良いんじゃない??」


 震える足で立ち上がったセイギを、ピエロは笑って見ていた。


「うるせぇ……ナメるなよ………負ける……かよ……」

 セイギは諦めない。立ち上がったセイギは再び大剣を構えた。


「チッ………しつけぇなぁ。殺れ、デカギライ!!!」


 しかし、再びデカギライの弾丸がセイギを襲う。


「………ッ!!!」

 弾き飛ばされたセイギは今度は仰向けに倒れた。

「痛ってぇ……」

 セイギはボロボロだ。本当なら立ち上がるのはもう不可能だ。

「ハァ……ハァ……こりゃ……また……果物いっぱい………食べないとだな……」

 それでもセイギは諦めない。

「ハァ……ハァ……それにしても……ハァ………ハァ……今日は星が綺麗だなぁ………」

 諦めるどころか、夜空の美しさを味わえる程だ。


「そうだなぁ~~お星様はキラキラキラキラ綺麗だよなぁ! だったら、お前もお星様になっちゃおうぜ!! 俺がトドメをさしてやるからさ!! なぁ、どっちが良い? 痛いの? 苦しいの?」


 ピエロはふざけた口調でセイギに近付いてきた。


「へへへ……つか………綺麗だなんて思えるって事は……ハァ………俺はまだまだ余裕だなぁ………」

 だが、ピエロの言葉をセイギは無視した。何故なら、聞く意味の無い言葉だからだ。


「おいおい、聞いてるの? どっちが良いかって聞いてんだよぉ~~」


 ピエロがセイギの足元に立った。その瞬間、

「……だったらッ!!」

 セイギは突然立ち上がった。

「もういっちょ頑張んねぇとなッ!!!」

 それはとても素早いスピードで。ボロボロの体のどこにそんな力が残されていたのだろうか。そして、

「ハッ!!!」

 セイギはピエロの腹に向かって横一線、大剣を振り斬った。


「…………なにッッァァ!!!」


 油断だらけで余裕綽々なガラ空きの腹は斬りやすい。セイギはピエロの土手っ腹に強烈な斬撃をくらわせた。

「まだまだぁ!!」

 横一線に大剣を振り切ったセイギは、一歩前に踏み出す形になった。そこから素早く振り向いて、今度は縦一線、大剣をピエロの背中に向かって振り下ろす。


「グワァァァァァ!!!!」


 痛みに悶えるピエロの叫びはきっと驚きも含まれている筈だ。それ程、セイギの反撃は突然始まった。


「まだまだだって言ったぜ………へへっ! こっからだ! 俺の逆転は!!」


「グォォ!! こしゃくなぁ!! いい加減にしろ!!」

 腹を押さえながらピエロはセイギを振り返った。

「お前なんかが俺様に攻撃して良い訳がない!! もういい!! お前の仲間は爆発してやるからなぁ!!」

 その顔に笑顔は無い。邪悪な顔でセイギを睨んでいる。

「デカギライ!! あの風船を撃てッ!! ブッ殺せッ!!!」

 激昂するピエロはデカギライに指示を出した。


「了解……」

 ピエロの指示にデカギライの一体はそう言って頷くと、ボッズーを吊るす風船に銃口を向けた。


 しかし、デカギライが弾丸を発砲するその前に、


 シュンッ………!!


 風を切る音と共に、蒼白く光る"線"がセイギ達の頭上を飛んだ。

 そして、その"線"はボッズーの所まで飛ぶと


 スパンッ!!


 ボッズーにくくられた風船の糸を切った。


「何ッ!!!」


 その光景を見たデカギライは叫んだ。


「誰だッ!!!」


 だが、ピエロはまた別の方向を見て叫ぶ。

 ピエロが何を見て叫んだのか、それは"線"が風船の糸を切ったそのすぐ後、ピエロとセイギの頭上を飛び越えた何者かに向かってだ。

 その何者かは、風船から放たれて地上約10mの地点から地面へと落ち始めたボッズーを空中で抱き締めると、くるりと回転し、ピカリマートの屋上へと着地した。


「いい加減にするのは貴様等の方だ!! 悪人共ッ!!」


 その何者かは月光を背に振り返り、デカギライとピエロを指差した。


「誰だお前は!!!」


「なんだッ! なんだッ!! なんだッ!!!」


 突然の乱入者にデカギライとピエロは叫んだ。しかし、セイギは逆だ。

「へへ……来てくれたんだな」

 その何者かの姿を見ると仮面の奥でニカッと笑った。


「聞けッ!! 悪人共ッ!!」

 その何者かはデカギライとピエロに向かって叫ぶ。

「俺の名は! 勇気の心を武器にしてッ!! 青き勇気! ガキユウシャッッ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る