第6話 勇気の心を武器にして 14 ―爆撃……そして、激突―
14
「離せ! 離せッ!!!」
「離さねぇよ! 離してたまるか!!」
ガキセイギは暴れるデカギライを更に強い力で絞め上げた。
ガキセイギとボッズーは輝ヶ丘の上空を高速で飛んでいた。目的地は前回の対決の舞台となったビルの屋上だ。
― あの場所なら俺の作戦は実行出来る!後は勇気が来てくれれば……
セイギはそう考えていた。
しかし、そんな彼をどこか遠くから見詰める目があった。
―――――
ここは、何処を見渡しても真白き世界。そして、この場所で"空中に浮かぶ半透明の巨大なスクリーン"を見る者が二人。
「なぁ~~~にをやってんだアイツはッ!! 簡単に捕まりやがってッ!! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ッ!!」
その内の一人はデカギライにヤジを飛ばしながら、怒っているのか、それとも笑っているのか、そのどちら共なのか、全く読めない表情でスクリーンに向かって叫んでいる。
「馬鹿とは言わないでぇ~~~♪ 彼は私の芸術ぅ~~♪ 彼もまた最高傑作ぅ~~~♪」
もう一人は歌う様にそう言った。
「ケケ!! 何が芸術ぅ~~だッ! お前の作った作品はどれもポンコツぅぅ~~だよッ!!」
デカギライにヤジを飛ばしていた男は大粒の唾を飛ばしながら歌う男の三角頭巾を剥ぎ取ると、その頭を向かって拳を振り下ろした。
「あぁ~~~♪ イタタタタァ~~~♪♪ ピエロよ貴方のパンチは痛ぃ~~~♪♪」
そうだ。歌う男を殴ったのはピエロ。そして、
「ケケケケケ!! ヘタクソな歌を歌うんじゃねぇよ芸術家ッ!!!」
そう、もう一人は芸術家……《王に選ばれし民》の二人だ。
「うぅぅ~~♪ そう思うのは貴方の耳がおかしいからぁ~~~♪」
「うぇ? あっ……確かに、耳糞が詰まってる気がする! ホジホジホジ……」
そう言うとピエロは自分の耳をほじり始めた。
「うぅぅ~~~♪ とてもとても汚いぃ~~~♪」
「汚くない汚くない!! ぅおっ……きたきたこりゃデカイ! ぅおっ、ぅおっ! ぽんっ!!」
ピエロの耳は人間の耳と変わらない大きさ。それなのにピエロの耳から出てきたソレは、野球ボールくらいの大きさをしている。
「ふぅ~~良い大きさだな! で、これを二つに分けてぇ~~ケケケケケケケケケッ!!!」
ピエロは下品に笑いながら、二つに分けたソレを掌の中でクルクルと捏ね始めた。
「うぅぅ~~~♪ とてもとても汚いぃ~~~♪」
「丸めて丸めてぇ~~~!! そして投げぇるっ!!」
そして、ピエロは丸く形を整えたソレを、目の前のスクリーンに向かって投げつけた。
―――――
「ん? なんだボッズー?」
セイギ達の斜め下の空が一瞬目映く光った。
「ボッズー、どうした?」
「いや、今一瞬……」
『何かが光った』とボッズーが言おうとした瞬間、光を放ったその場所から、セイギ達に向かって二つの灰色の玉が飛んできた。
「な、なに!!」
ボッズーは飛んでくる玉を避けようと旋回した。………が、玉のスピードは速い。高速だ。
「ボッズー、どうしたんだ?」
セイギはまだ玉の存在に気付いていない。いや、気付く間も与えられない。
「や、やばいボズ!!」
何故ならもう遅いからだ。高速で飛んできた二つの玉は、ボッズーが旋回し遂げる前にボッズーとガキセイギの胴体に直撃した。
そして、
ドガンッッッ!!!
爆発した………
「うわッ!!」
爆発を受けたガキセイギは大きな衝撃をくらい、デカギライを捕まえた手を放してしまった。
「アァッ!!」
それはボッズーも同じく、爆発の衝撃でセイギの体を放してしまう。
そして、散り散りになった三人は真っ逆さまに落ちていく。
「うわーーーーッ!!」
『このままでは地面に堕ちてしまう……どうすればいい!!』
こんな考えを巡らせる暇も三人には与えられない。誰一人として自分の状況を理解せずに、三人はアスファルトの地面に激突した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます