第6話 勇気の心を武器にして 13 ―勇気を惑わす声―
13
一度でも悪魔に目を付けられた人間は、どんなに光を求めても逃れる事は出来ないのか……
「やめろ………やめてくれ……頼む……もういい……」
突然苦しみ出した勇気は、手の甲で愛の手を叩き、腕時計を弾き飛ばしてしまった。
「どうしたの! 勇気くん!!」
勇気の苦しみ方は尋常じゃない。囁きかける声から逃れようとしているのか、爪を立てた手で耳を押さえ、髪を振り乱し、苦悶の表情を浮かべて暴れている………その姿は、地獄の業火に焼かれる罪人の様だ。
「どうしたの! 勇気くん落ち着いて!!」
愛は勇気を落ち着かせようと、その体に背中から腕を回し、抱き締める形で動きを止めようとした。だが、無理だ。暴れる勇気に愛は弾き飛ばされてしまった。
「ウォォォォォォォオ!!!!」
「勇気くん!!」
愛は唖然とした。勇気の声はもう言葉になっていなかった。獣の咆哮の様な声で、勇気は泣き叫んでいる。
「どうしたの……どうしたのよ……」
―――――
『惑わされるな、その女は、お前を騙し、嘲笑っているだけだ』
「違う! 桃井はそんな女ではない!」
『では女の顔を見てみろ、お前を気味の悪い生き物として、見ている』
「違う!!!」
『お前は我の仲間と、なるべき、者、』
「違う……俺は……俺は……」
『否定するな、するのならば、分からせよう、お前の存在がお前を、友と呼ぶ者の、死を招くと』
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