第6話 勇気の心を武器にして

第6話 勇気の心を武器にして 1 ―正義は勇気を信じてる―

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「へぇ~~スッゴい昔じゃん! それ!!」


「うん、そうなんだよ愛! だから変な気分だ。何だか小学生に戻っちまった気分だぜ。それにしても、ちょっと寝過ぎちまったな。起きたら頭ガンガンだったぜぇ……」

 大木の立つ草原に足を伸ばして座る正義は、体の熱を冷やそうと、水の入ったペットボトルを首筋に当てた。

 長い夢を見ている間、正義は12時間以上も眠ってしまっていた。デカギライとの戦いの疲れが出たのだろう。でも、今の体の火照りの理由は寝過ぎたせいじゃない。別の理由がある。


「私もあの時はドキドキしたなぁ~~、せっちゃんスッゴい勢いで自転車飛ばして、全然追い付けなかったし!」


 正義の隣に座る愛は想い出話を続けた。そして、正義も。


「そうだなぁ、あん時はめっちゃ焦った。でも、あん時はごめんな……愛に怒鳴っちまって」


「ううん、全然! それより、せっちゃんそろそろ時間じゃない?」

 愛はスマホの画面を見せて、正義に時刻を教えた。


「ん? あっ……本当だ」

 そうなんだ、正義はあまりゆっくりはしていられない。正義はやる事があるんだ。それがさっきの火照りの理由だ。

「そろそろ休憩も終りにしないとだな! んじゃ愛、約束のコレ、頼むぜ!」

 そう言うと正義は、愛に文字盤の大きな腕時計を渡した。


「うん、分かった! 勇気くんに会ったら渡しとけば良いんでしょ?」


 そう、その腕時計は勇気の物だ。


「あぁ、そゆこと! へへっ!!」


「でも、会えるかなぁ?」


「会えるさ! そんな気がする!」


「なにそれ、根拠ないの?」


 と愛は笑うが、正義は本気だ。


「あぁ、無い! でも俺は信じてる!」


「えぇ~~! でもさ、勇気くんもしかしたら」


『もう輝ヶ丘から出ていっちゃったんじゃ?』っと愛は言おうとした。でも、それを言う前に正義が遮った。


「『もう輝ヶ丘から出てったんじゃないか?』って言いたいんだろ? へへっ! だとしても! 勇気は忘れ物をしてまた町に帰ってくるんだ! んで、俺達は会える!!」


「えぇ~なにそれぇ~」


 もう一度愛は笑った。だけど、やっぱり正義は本気だ。

 そして、笑っているって事は愛も勇気が本気で『輝ヶ丘から出ていった』なんて思っていない。だって、愛は信じているから。正義と勇気の友情を。

 ここ最近の勇気の態度に不安を覚えた事はあったが、愛は昨晩一人で考えた。そして、一つの結論を出したんだ。『勇気くんとせっちゃんは二人で一人みたいなもんなんだから、せっちゃんを置いて勇気くんが英雄を辞めるって事は絶対にしない!』……と。


「へへっ! 『なにそれ!』か……でもさ、俺さっきの夢を見て思ったんだ。世界を救う為にはやっぱり勇気は必要な存在だってさ! 勇気がいないとダメなんだよ! やっぱり勇気こそ"《勇気の心》を持つ英雄"になるべき男なんだ! だから俺達はまた会える!! 絶対に!! 俺はそう信じる!!」

 正義はニカッと笑った。

「んじゃ、ヨロシク頼むぜ!! あっ、後さっきの言葉もちゃんと伝えてくれな!」


「うん、でも、アレってどういう意味なの?」


「へへっ! それは勇気なら分かるさ! だから伝えてくれ! んじゃあな!!」

 そして、正義は基地の中へと戻っていった。


 ―――――


「さてさて、ボッズー待たせたな!!」


「遅いボズよ! 休憩はちょっとだけって言っただろボッズー!」


「へへっ! ごめん、ごめん! ちょっと愛と話し込んじゃった! んじゃ、やりますか!!」


「OKボッズー!」


「修行! 修行!!」


「はしゃぐなボッズー!!」

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