第5話 俺とお前のオムライス 13 ―体育の陰に隠れて企む者―

 13


 今日もまた20分休みが終わって、三時間目がやってきた。今日の三時間と四時間目は通しで一科目。正義の学年は二組あるのだが、この授業は二組合同で行われる。それは小学生なら大好きな科目、体育だ。


「今日はドッヂボールだぞ!」


 準備体操を終えると、正義のクラスの先生が言った。ドッヂボールは子供達にとっては特別な物だ。先生の言葉を聞くと、正義含め同級生達は喜びの声をあげた。


「へへっ! 勇気、ドッヂボールだって! 一緒のチームになろうぜ!」


「あぁ、良いよ!」


 勇気も喜んでいた。勇気だってドッヂボールが好きだから。


 しかし、喜ぶ生徒達の中で一人眉間に皺を寄せている者がいる。準備体操は各々が仲の良い相手と組んで校庭中に広がって行われるものなのだが、ソイツは校庭の隅に居た。『日差しが眩しすぎてムカつく』と、校舎の影が落ちる場所を選んだからだ。

 そして、ソイツは日差しに照らされて楽しそうに笑う勇気と正義を睨んでいた。


 ソイツは誰か?


 山田だ。


「おい、篠原。チャンスが来たぞ」

 山田は自分の真横に立つ男子の肩に手を回した。『手を回した』と言っても相手は背が低い、ほぼ手を下ろしただけだ。


「それって……」

 篠原と呼ばれた男子は山田とは正反対で、小さくてガリガリでズル賢そうな顔をしている。

「昨日言ってた事をやるって事?」

 ズル賢そうな顔をニヤリと歪ませ、篠原は聞いた。


「あぁ、昨日立てた作戦が今日にはもう使えるって、俺ついてるよな?」


「かなぁ?」

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