第5話 俺とお前のオムライス 5 ―しゃべる二人を睨むアイツ―
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次の日の正義のクラスでは、クラスメートがザワザワと騒がしかった。その理由は単純だ。正義が転校生の青木と仲良くなっているからだ。
山下でも言い合いをしていた事を隆たちが他のクラスメートへ漏らしたから、更に謎は深まり、クラスメート達から正義と勇気は好奇の目で見られてしまっていた。
けれども、当人達はその事に気付かないから気にしない。
そしてまた、二時間目と三時間目の間の20分休みの時間が訪れ、正義は教科書もしまわずに勇気の席へと走っていった。
「なぁ勇気! 俺さ、良い事思い付いたんだ!」
正義は礼儀知らずの男だ。友達二日目でもう呼び捨てだ。
「良い事?」
「うん!」
「なにそれ?」
勇気は利口な子だ。正義と違ってちゃんと教科書とノートを整え、机の中へとしまっている。
「へへっ! 昨日のお礼だよ!」
「昨日のお礼?」
「うん! 昨日、俺に駄菓子いっぱい奢ってくれたろ? そのお礼!」
「ははっ! お礼も何も、アレは君へのお詫びの品にしたのつもりだよ。お礼なんていらないよ」
勇気はそう言うが、正義は納得した顔をしない。
「えぇ~~そう言うなよ! 勇気にどうやってお礼しようか一時間目も二時間目も使って考えてたのに」
「ははっ! そんな事考えてないで勉強しなよ」
「勉強は……良いの! それより良い事思い付いたんだって!」
「そうなの? 何かな、それは?」
勇気は楽しそうに笑った。『別に良いよ』と言いながらも、正義が言う『良い事』に遊びの誘いを感じて内心は嬉しいのだ。
「へへっ! それは内緒だ!」
「え? 何それ?」
「へへっ! 良いの! それより、今日学校終わったら俺ん
そう言ってニカッと笑うと、正義は自分の席へと戻っていった。
「ふぅ……騒がしい奴だな。でも……ははっ! 面白い奴だ!」
勇気は走っていく正義の背中を見ながら、満面の笑みを浮かべた。
でも、その笑顔を苦々しく睨む奴がいた。
「何笑ってんだよ……楽しそうにしやがって……」
ソイツは教室の隅で腕を組みながらボソボソと呟いた。ソイツの名は山田直樹。太っちょの山田だ。
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