第4話 みんなを守るために…… 20 ―夢の中へ―
20
「明日こそ、この町を出ると母さんに伝えないとな……」
自室のベッドで横たわる勇気は、天井を見詰めながらそう呟いた。
勇気は肉体的にも、精神的にも憔悴し切っていた。帰宅してからは本当は何をする気も起きなかった。でも、出ていく準備だけは終わらせた。
キャリーバッグに詰めた物はほんの少しの衣服とほんの少しの消耗品だけ。
― 持っていく物は、必要最低限の物だけで良い……友達や母さん、輝ヶ丘を思い出させる物は全て置いていこう。逃げていく俺だ……この町に想いを馳せる権利は無い………
そう思っていたから。
「昔の俺は《勇気の心》を持っていた……か」
まどろみ始めた勇気は吐息の様に呟いた。
「石塚さん……その時の俺は……ただ何も考えていなかっただけですよ……ただ馬鹿だっただけ……今の俺はあの頃と変わってしまったんだ……正義と出会ったあの頃とは……」
勇気はゆっくりと、瞼を下ろした……
―――――
「そっか……電話繋がらなかったか。うん……うん、分かってるよ、無理はしないって。うん、ゆっくり休むよ。うん、それじゃあ、また明日」
正義は愛との通信を切った。
「う~ん……」
ここは《願いの木》のある部屋。
正義は今、願いの木に願って出したベッドの上に居る。
ベッドの上で横になりながら、正義は頭をガリガリと掻く。
「勇気……どこ居んだよ」
正義は愛にお願いをして、勇気に連絡を取ってもらおうとしたんだ。だが、愛がかけた電話は勇気には繋がらなかった。
『プープーって言って全然繋がらない』愛はそう言っていた。
「はぁ、前途多難だ………ってそんな事言っちゃいけねぇや!でも、今日一日疲れたな、くったびれたなぁ~~~!」
正義は体中に溜まった疲れをどこか遠くへと飛ばす様に大きな大きな伸びをした。
「はあぁぁ~~あああぁ~~~」
大きな欠伸も口から飛び出る。
「うぅぅ~~馬鹿ゆうきぃ………」
それからほんの数秒で、正義は深い眠りへと落ちていった。
「ゆうき……お前、ゆうきって言うのか……俺は、あかい……」
そして、夢を見る。幼い頃の自分が、友と出会った"あの日"の夢を……
第二章、第4話「みんなを守るために……」完
―――――
第二章、第4話「みんなを守るために……」をお読み頂き誠にありがとうございます。
次回、第5話「俺とお前のオムライス」は、少し時間を過去へと戻して正義と勇気の出会いの物語となります!
ご期待下さい!
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