第4話 みんなを守るために…… 13 ―後悔―

 13


「………」


 唖然としたセイギは動きを止めてしまった。

 そして、ジャスティススラッシャーはもう無い。"顔面を殴られたデカギライ"が『もう少しで殺られるところだった……』と呟いた時にはもう既に、奴の頭上を通り過ぎ、ヘリポートの外で"飛行機雲が消えていく様に"空の中へと消えていってしまったから……


 消えたのはジャスティススラッシャーだけではない。"顔面を殴られたデカギライ"もだ。奴は『もう少しで殺られるところだった……』そう呟いてからすぐに、ヘリポートの縁から腕を外し、ビルを飛び降りてセイギの目の前から姿を消した……


「嘘……だろ……」


 セイギは呟いた。

『嘘だろ……』と言いながらも、彼は目の前で起こった出来事を受け入れていた。何が起こったのかを……いや、自分達が何をしてしまったのかを………


「ちきしょう……」


 セイギは拳を握ると、ヘリポートの端まで走って、町を見下ろした。でも、そこにはもうデカギライは見付けられない。


「セイギ……」


 ボッズーの声がした。


「………」


 セイギは無言で振り向いた。黄金のタマゴのあった場所を。

 いや、黄金のタマゴはもう無い。代わりにボッズーがその場所で翼を羽ばたかせ浮いている。

 そんなボッズーにセイギは聞く。とてもとても小さな声で……


「ボッズー……今のやり方で間違えてなかったんだよな?俺、何かミスはしてないよな?」


「うん……」


 ボッズーは頷くが、その顔は悔しさに溢れていた。ボッズーも気付いているんだ。何が起こったのかを……いや、自分達が何をしてしまったのかを………


「そうか……そういう事か……」


 その表情を見て、セイギは倒れる様に膝をついた。受け入れたくない……でも、受け入れるしかない。


「……そうなのか、騙されていたのか、俺達は!!」


 セイギは自分の膝を殴った。

 悔しさしかない……ただ……ただ……悔しさしか……


「分身が現れた時、『いつの間に?』って思ったんだ。でも、『考えてる暇はない』っても思った。でも……もっと考えるべきだったんだ。アイツが現れた時から、分身が一気に増えた!!! …………アイツだったんだな……アイツが……クソ……アイツが……アイツが"本体"だったんだ………クソ……クソ……馬鹿野郎……馬鹿野郎だよ俺は……」

 噛み締めた唇からは血が流れ、セイギはただ何度も何度も、


「馬鹿野郎……馬鹿野郎……」


 自分自身を殴り続けた。

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