第4話 みんなを守るために…… 7 ―油断は禁物だぞ、クソガキ―

 7


 セイギとボッズーを取り囲んだデカギライの弾丸は二人の前後左右から飛んできた。


「ボッズー、上だ……」

 背中合わせになったボッズーにセイギはそう呟いた。


「上ボズか? ……あぁ、なるほど!!」


「そうだ、ダンッて飛べ!! それが一番手っ取り早い!! 行くぞ!! 3・2・1!! とべッ!!!」


 この合図でセイギとボッズーはとんだ。ボッズーは翼を一振りし、セイギは地面を蹴って。そして、


 ドカーーーンッ!!!!


 セイギとボッズーに向かって飛んできていた弾丸は、さっきまでセイギ達が立っていた場所でぶつかり合い爆発した。


「ヨッシャ!! 行くぞ!!!」


「OKボッズー!!」


 二人は動き出した。


 まずボッズーが仕掛けたのは《羽根の爆弾》だ。

 ボッズーは弾丸を避けると翼をバッサバッサと振った。翼からは羽根が飛び出し、四体のデカギライに向かって飛んでいく。

 でも、まだ爆弾には変えない。ボッズーには考えがあるから。


 セイギの方は空中に跳んだ段階で既に攻撃に向けて動いていた。

 セイギはジャンプの勢いで空中で回転し、その推進力で一体のデカギライとの距離を一気に縮めた。その相手は"最初に現れたデカギライ"だ。ソイツと他のデカギライとの見分けは簡単につく。コートを見ればすぐに分かる。


「ハァッ!!」


 セイギは大剣を構えた。敵はもうすぐ真下だ、セイギは落下の勢いのまま斬りかかるつもりだ。


「テメェ!!!」


 デカギライも自分に向かって跳んできたセイギに素早くに反応した。セイギに向けて弾丸を連発。


「悪いが、お前の攻撃はもう慣れっこだぜ!!」

 デカギライが連発した弾丸をセイギは落下しながら斬っていった。一発、二発、三発、四発……薙ぎ払う様に斬っていく。そして、大剣を頭の上まで振り上げて

「ドリャアッッッ!!!!」

 縦一線に振り下ろし、デカギライに斬撃をくらわせた。

「まだまだぁ!!!」

 着地したセイギは更に攻撃を続ける。デカギライが痛みに身悶える隙も与えない。大剣を振って、縦に、斜めに、横に、下からと連続して斬撃をくらわせる。


「この野郎ッ!!!」


 別のデカギライがセイギに向けて弾丸を撃ってきた。援護射撃のつもりだ。そのデカギライはセイギが立つ場所が北だとすれば、東に位置する場所に居る奴だ。ソイツは弾丸を撃ちながらセイギの方へと走ってくる。


 それを邪魔したのはボッズーだ。ボッズーはかさず翼を大きく広げると、セイギへと走るデカギライに刺していた羽根を爆弾へと変えた。


「グワッ!!!」


 ボッズーのお陰でセイギに向かって走っていたデカギライは倒れた。でも、まだ弾丸がある。セイギに向かって飛んでいく弾丸が。


 だから、セイギは"最初に現れたデカギライ"への攻撃の手を止めてクルリと回り、自分に向かって飛んでくる弾丸を一発、二発、三発、四発、五発と斬った。


 だが、セイギに向かって飛んでいく弾丸はまだある……他のデカギライも勿論発砲しているのだから。しかし、それは、


「させるかボッズーッ!!」


 ボッズーが捌く。ボッズーは羽根を飛ばすと

 弾丸の近くで、ドカンッ!!

 その爆発は弾丸を誘爆させ、セイギに届く前にその場で爆発。《羽根の爆弾》は攻撃だけじゃなく防御にも使えるんだ。


「「この野郎!! 調子に乗りやがってッ!!」」


 まだ攻撃をくらっていない残りのデカギライ二体が同時に叫んだ。


 その内一体は発砲しながらセイギに向かって走り出した。


 もう一体は高く跳ぶ。ボッズーに攻撃するつもりだ。


「そうはいかないぞボッズー!!!」


 ボッズーはデカギライに刺した羽根を再び爆弾へと変えた。


「グワァッ!!!」


「うわぁっ!!!」


 二つの悲鳴。


 高く跳んだデカギライは爆撃を受けて背中からヘリポートへと落ちた。


「な……なんで!!」


 しかし、何故かボッズーもそのデカギライと同時に墜ちた。


「フハハハハッ!! 馬鹿め、自分で自分を攻撃してよぉ!!! ハハハハハッ!!!」


 セイギに発砲しながら走っていたデカギライが笑った。


「な……なんだとボッズー」


「ハハッ!! 気付かなかったか? 悪いが、俺に刺さった羽根は、お前が爆発させる前にお前に投げてやったんだ!! その羽根がどんな物か分かればどうでもないぜ!!!」


 そうだった。ボッズーが羽根を爆弾へと変えた後に聞こえた二つの悲鳴、その二つ目はボッズー自身のものだったのだ。


「フハハハハハハッ!!!」


「ちきしょう……気付かれる前に使うべきだったボッズー!!」


 ボッズーはデカギライ達に刺した羽根を、"セイギにサポートが必要になったタイミング"で使おうとしていたのだが、その策が仇となってしまった。


「セイギ、ごめん!! 一人そっちに行くボズ!!」


 一人……ボッズーはそう言うが、違う。二人だ。


 "最初に現れたデカギライ"に大剣を振るセイギを止めようとしてボッズーの爆撃をくらったデカギライも、もう既に立ち上がりセイギへの攻撃を開始していたからだ。


「くッ………あっちからもこっちからもかッ!!!」


 セイギは大剣を振り回し、二方向から連発される弾丸を斬った。バッタバッタと。だが、"最初に現れたデカギライ"への攻撃にまで手が回らない。二体のデカギライからの攻撃は防げているが、一気呵成に始めた攻撃がもう防戦でしかない。

 それどころか、弾丸を斬る事に注視し過ぎて、"最初に現れたデカギライ"に背中を向けてしまっていた。だからセイギは気付かない。"最初に現れたデカギライ"がのっそりと立ち上がった事を。


「油断しやがって……」


 "最初に現れたデカギライ"はそうボソリと呟いた。


「ドリャアッッッ!!」


 気付かぬセイギは、また弾丸を一発斬り落とした。しかし、優勢ではない。そのセイギの真後ろに"最初に現れたデカギライ"が立ったからだ。そして、風の様に"最初に現れたデカギライ"は素早く動いた。


「フッ……」


 "最初に現れたデカギライ"は小さく笑うと、大剣を振り下ろしたセイギの膝裏を踏みつける様に蹴った。


「なッ………!!!」


 セイギが驚いた時にはもう遅い。"最初に現れたデカギライ"は体勢を崩して開いたセイギの脇に、無理矢理両腕を突っ込みセイギを羽交い締めにしたのだ。


「油断は禁物だぞ……クソガキ……」


「くッ……クソ!!」


 足掻く暇は無かった。身動き取れなくなったセイギに、デカギライ達の弾丸がまるで獲物に食らい付くピラニアの群れの様に襲い掛かかる。


「ウワーーーーーッッッ!!!」


 ガキセイギのボディスーツは装着者の身体能力を向上させ、戦う為の力を与える矛でもあり、装着者の命を守る盾でもある。並大抵の攻撃であれば装着者に大きなダメージを与えないし、ボディスーツも傷付く事はない。

 だが、群れとなった弾丸は並大抵ではない。矢継ぎ早に弾丸はセイギを襲い、次第にスーツは弾丸が命中する度にバチバチと大きな火花を散らし始めたのだ。

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