第4話 みんなを守るために……

第4話 みんなを守るために…… 1 ―デカギライを逃がすな!!―

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 一歩足を踏み出す度にガキセイギはデカギライの弾丸を斬っていった。大剣の刃はその度に重くなっていく。


 ― でもまだだ……あの時はもっと重かった


 セイギが思い出すのは百体の光体を倒したあの時の事。あの時は腕が千切れそうになる位の重さだった。


「BANGッ!! BANGッ!! BANGッ!! BANGッ!!」


 ― もっと撃て!! もっと力をくれ!


 敵に向かって『撃て!』と願うのは矛盾した願いだと思いながらも、それでもセイギは願った。『敵を確実に仕留められるくらい強い技』そうボッズーは言った。そんな技は今のセイギには、"あの時のジャスティススラッシャー"しか思い付かない。


 ― あの時と同じくらいの力を溜めきゃダメだ! もっと、もっとだ!!


 しかし、デカギライも馬鹿ではない。


「クソガキがぁ!! 舐めやがってぇぇぇぇえ!!!!」


 いつまでも無意味な攻撃を、防戦一方にしかならない状況を、続ける訳がなかった。


「嗚呼、もう良いッッ!! もう止めだッッ!!!!」


 正義の願いは破棄された。デカギライは怒声をあげると、セイギに向けていた銃口をアスファルトの道路に向けた。


「BANGッ!! BANGッ!! BANGッ!!」


 そして、立て続けに三発の弾丸を発砲する。


「なにッ!!」


 セイギが驚いた時にはもう遅い。もう既に一発目の弾丸が巨大な爆発音と共に道路を破壊した後だった。そして、驚きの声をあげた後には、二発目、三発目が瓦礫となったアスファルトを粉々に破壊した。そして更に、爆発が起こした爆風が粉々になったアスファルトを空中に舞い上がらせ、デカギライの姿を隠す煙のカーテンを作った。


「フハハハハッ!!」


「あッ!!」


 煙のカーテンはデカギライの姿を隠した。その中でデカギライは素早く身を翻し、セイギ達に背を向けて走り出す。


「おい! 待て! 逃げんなボッズー!!」


 煙は濃い、しかしデカギライの影は見えた。すぐに二人はデカギライが逃げ出した事に気が付いた。だがしかし、セイギはすぐに追い掛ける体勢に入れなかった。何故なら、セイギは未だ自分に向かって来ていた弾丸を斬っていったからだ。


 デカギライが破壊した場所は、デカギライのすぐ目の前の場所、ほぼ足元だった。だから一発目が道路を破壊したのは発砲してからすぐだ。だが、先にデカギライがセイギに向かって連発した弾丸の最後の一発がセイギの大剣に当たる距離に届いたのは、今だ……


「クッソ!! 逃がして堪るかよ!!」


 やっと今、セイギは最後の弾丸を斬った。


「ボッズーッ!!」


「分かってるボズ!!!」


 ボッズーは言われなくても分かってる。セイギからの指示の前にボッズーはセイギの背中に掴まった。


「飛ぶぞボズッ!!」


「頼むッ!!」


 デカギライを逃がす訳にはいかない。ならば、やるのは『ビュビューンモード』だ。ボッズーは素早く変形する。


「ちょっと抵抗強くなるからなボッズー!!」


「あぁ、何でも良い! 追い掛けろッ!!」


 煙を抜けてボッズーとセイギは爆速で飛んでいく。

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