第3話 慟哭 21 ―馬鹿野郎ッッ!!―

 21


 ボッズーの翼で空を飛ぶセイギは勇気の事を想っていた。


 ― 馬鹿野郎……勇気、何で一緒に行ってくれねぇんだ!! 馬鹿野郎が……やっぱりお前は《勇気の心》を持ってるんじゃねぇかよ! 大丈夫じゃねぇか! あの時と同じだよ……山田ん時と!! 馬鹿勇気ッ!! 俺の話も聞いてくれたって良かったじゃねぇかよ! 俺はな、あの時にお前に教えてもらったんだよ! 《勇気の心》がある奴ってのは、自分がどんな状況でだって、どんなに相手が強くたって、『誰かを守るために』って動ける奴の事を言うんだってな! なぁ勇気、今度は世界を守る為なんだな!


 セイギは見たんだ。自分を説得しようと叫ぶ勇気の瞳の奥に、煌々と燃える《勇気の心》を。


 ― 今、腕時計を叩いてみたらな、きっとお前は……だけど、馬鹿野郎だ! 誰かを守る為にいっつも自分を犠牲にしやがって! 俺は諦めないぜ! お前は俺の友達なんだ!ずっとずっと俺の友達なんだ!! それなのに、その事を今すぐ伝えたいのに! それなに、それなのに………


「セイギ! 居たぞボズ!!」


 デカギライの姿が見えた。デカギライは輝ヶ丘を走る片側二車線の大道路に高笑いを上げながら立っていた。


「この野郎が!! 邪魔しやがってよぉッ!!」


 セイギは大剣をデカギライの背中に向かって振り下ろした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る