第3話 慟哭 20 ―何でこのタイミングなんだ!―

 20


 正義は勇気の『さよなら』……その言葉が何を意味するのか、勇気のたった一言だけで、全て理解出来た。

 何故理解出来たのか、そこに理屈はない。

 言葉で表すなら、『正義と勇気が友達だから』それだけだ。他に言葉はない。『友達だから』理由はそれだけ。


「ま……待てよ!」


 勇気は外へと繋がるエレベーターの中へと消えてしまった。


 正義は嫌だった。『勇気との別れ』……そんな事、絶対に嫌だった。勇気は正義にとって掛け替えのない友達だから……



 だけど………



 一歩、二歩と歩き出して正義は気付いた。


 自分を説得しようと叫んでいた勇気の瞳の奥に、『恐怖なんて見えなかった……』と。それどころか、正義はその瞳の奥に…………


「え……?」


 突然、腕時計から目映い光が発した。それは白い光……ボッズーからの通信だ。

「ボッズー……?」

 その光……嫌な予感がした。正義はボッズーに『勇気と二人っきりで話がしたい』そう言って基地に来た。そしてボッズーは『分かったボズよ。ゆっくり話をしてこいボズ! その代わり、もし何かあったら腕時計で呼ぶからなボズ!!』そう言ってくれた。

 そんなボッズーから届いた通信……嫌な予感しかしない。その予感は一つ、『デカギライが現れた』そう思えた。

「………」

 正義は勇気を追い掛けたかった。しかし、その気持ちを抑え、腕時計を叩くしかなかった。

「ちきしょう……何でこのタイミングなんだ!」


 ―――――



 やはり……正義の予感は当たった。



 デカギライが現れたんだ……



「正義!! 大変だボッズー!!」



 腕時計を叩いた瞬間に聞こえた言葉。


「出たのか……」


 正義は静かにそう聞いた。


「うん……よく分かったなボズ!」


「いや、予感がしてな。で、場所は?」


「それがな、今度は山奥とかじゃないボズ! 町中ボズよ!! 愛から連絡があったんだボズ!! 道路を走っていたパトカーが、爆発したって情報が今出回ってるって!!!」


「そうか……」


 正義は拳を握った。行くしかなかった。本当は勇気を追い掛けたいのに。


「分かった。ボッズー、行くぞ……」


 それでも行くしかなかった。デカギライが次の被害者を生む前に止めなければならない………正義は腕時計の文字盤を思いっきり叩いた。


「レッツゴー!! ガキセイギッ!!!」


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